軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

7.対決(6)

それからも、ルミナスは時間の合間を縫っては魔法庁を訪ねてきた。

新しい魔法を見せれば喜び、目を輝かせる。それはダリウスにとって、至福の時間だ。

やがてルミナスは王太子妃となり、王妃となった。

この恋が報われなくても構わなかった。彼女が幸せであり、その近くに自分の存在があればそれでよかった。

決して手の届かない、高嶺の花。触れられそうで触れられない、宝玉。それがダリウスにとってのルミナスだったのだ。

転機はルミナスが妊娠したときにやってきた。

すでにそのときには魔法庁で確固たる地位を築いていたダリウスは、魔法でルミナスの体調管理をする役目を担っていた。いつものように彼女の私室に行くと、表情が暗い。

「妃殿下。どうかされましたか?」

「……側妃が妊娠しているそうなの」

ルミナスはぽつりと呟く。

『どうしましょう! ああ、もしあの女の子が先に生まれてしまったら……この子は第二王子になってしまうわ』

『落ち着いてください、妃殿下。その件は私も存じておりますが、側妃様の妊娠は妃殿下よりもあとです。二カ月程度、妃殿下のお子様が先に生まれます』

『でも、たった二カ月よ? もしその子がわたくしの子より優秀だったらどうすればいいの? 陛下はその子を王太子にすると言うかもしれないわ。それに、この子が女の子である可能性もあるわ』

興奮気味に捲し立てるルミナスに、ダリウスはすぐに言葉を返すことができなかった。

ルミナスが心配している通り、アルファールの王位継承順位は単純な出生順ではない。最も優秀な王子を国王が指名し、王太子となるのだ。

概して第一子が年長者である分優位となり、王太子になる可能性が高い。しかし、今回のように年が近いと逆転することが大いにあり得る。

『大丈夫です。妃殿下。私がなんとかします』

『ダリウスがなんとか?』

さめざめと泣いていたルミナスは、顔をあげてダリウスを見つめる。

『はい。妃殿下の心配の種は、私が全て取り除いて差し上げます』

(側妃の産む王子には死んでもらうしかない)

ダリウスは決心する。

愛する女性のためならば、多少のリスクを負うことも厭わなかった。

結局、ルミナスはアルファールの第一王子となる元気な男の子を産み、王族が生まれたときに施す加護はダリウスが施した。

そしてその二か月後、今度は側妃が男の子を産んだ。

既に魔法庁の要職についていたダリウスは、幸いにして側妃の元にも魔法による治療という名目でいくことが可能だった。

ルミナスを苦しめる元凶となる赤ん坊はどのような子かと見に行った先にいたのは、赤ん坊ながらに整った見目の、可愛らしい王子だった。

『王子殿下のご誕生、お慶び申し上げます』

ダリウスは側妃に頭を下げる。

『ありがとう。アシュレイと名付けたの。よい名でしょう?』

出産を終えたばかりの側妃は、ダリウスのほうを見て微笑む。

赤ん坊はまだ焦点の合わない眼差しで周囲を見回している。青空のような、美しい水色の瞳だ。そして、透き通るような美しいシルバーブロンドは彼が間違いなく国王の血を引いている証拠だった。

(今夜、始末するか)

今殺しては、ダリウスが疑われる。自分がいないときに、亡くなってもらわなければ困る。

ダリウスは周囲の目を窺いつつ、アシュレイに魔法をかける。夜になれば彼の周囲の空気は薄くなり、間もなく死に至るだろう──。

「……ウス。ダリウス!」

自分の名を呼ぶ声に、ダリウスはハッとする。

気付けば、ルミナスが訝しげにダリウスを見つめていた。

「あなた今日、ぼんやりしすぎだわ。どうしたの?」

「大変失礼いたしました。どのように反逆者を捕らえるか、つい考え込んでしまい……」

ダリウスは頭を下げる。

「まあ、いいわ。とにかく、その者が王族である可能性が高いなら、息子の脅威になるから始末しなければ」

「私にお任せください。王妃殿下」

ダリウスは深々と頭を下げる。

ルミナスは、第二王子が生きていることを知らない。

あの日、殺そうとしたもののカーティスによる加護が既にかかっていた影響で殺すことができなかったのだ。だから、一時的に仮死状態にして自らが死亡確認を行い、葬儀の際は別の赤ん坊の死体とこっそり入れ替えた。

そして、第二王子は自分の屋敷に連れ帰り、魔力量が多いことからフォシニにした。

もしバレれば、ダリウスは間違いなく身の破滅だ。そして、それを依頼したルミナスにも何らかの影響が出てしまう可能性がある。

(確実に殺さなければ)

最初に十二人の部下を派遣したが全滅した。その後もっと強い魔法使いを三人派遣したが、彼らもまた手も足も出ず逃げ帰ってきた。

(次も失敗したら……かくなる上は、私が行くか)

万が一上手くいかない場合は、一緒にいる女──リディア・グリーンを人質に取ることもやむを得ないだろう。