軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

5.正体不明の追っ手(3)

とっさにリディアを庇うように避けたレイに怪我はなさそうに見えたが、洋服の一部がざっくりと切れてしまっている。

「次々出てくるね」

レイは感情の籠らない声で言うと、その男に向かって手を振る。すると、男は吹き飛ばされて沿道のきに叩き付けられ、その場に崩れ落ちた。

(何この人たち。私達……ううん、レイを狙っているの?)

明確な殺意を感じてリディアは震える。

(誰かに助けを──)

そう思うのに、足が震えてもつれてしまう。

残る黒装束の男たちは分が悪いと悟ったのか、リディアのほうをじろっと見た。

「え?」

目が合い、背筋がゾクッとする。

黒装束の男の剣が自分に向かって飛んできたそのとき、カキンと音が響いて男の剣が弾き飛ばされた。レイが魔法で助けてくれたのだ。

「リディア、立って!」

レイが叫ぶ。

(立たなきゃ)

必死に立ち上がったのと同時に、空気が歪む。

レイの魔法によって体が強い風に包まれて、リディアは森の中に吹き飛ばされた。

「女が!」

「逃がすな!」

遥か遠くで、男たちが叫んでいる声がする。

「に、逃げなきゃ。私がいるとレイの足手まといになる」

レイがリディアを飛ばしたのは、リディアが攻撃されないようにだろう。リディアは必死に立ち上がると、森の奥へ向かって夢中で走る。

息が切れ、枯葉や枝で何度も転びそうになった。

「なんで? どうして? どうしてレイが命を狙われるの?」

そもそもあの黒装束の連中は何者なのか。

訳が分からないまま、必死で走った。

だが、限界はすぐに来た。

木の根に躓き、地面に倒れ込む。

「……っ!」

膝を擦りむき、血が出る。それでも立ち上がろうとすると、足首に鋭い痛みを感じた。

(ひねった?)

立ち上がろうとするが、力が入らない。

そのとき、背後かかさっと枯葉を踏む足音がした。

リディアはハッとして、振り返る。黒装束の男がひとり、近づいてくる。

(私、死ぬの?)

無言のまま剣を構える黒装束の男が剣を振り上げた瞬間、死を覚悟する。

そのとき――

「――リディアに近づくな」

低い声が聞こえ、同時に男の体が弾け飛ぶ。

男は生えていた大木に体を叩きつけられ、地面に落ちるとそのまま倒れて動かなくなった。死んでいるのか、気絶しているのか、どちらかはわからない。

「リディア、大丈夫? 多分、目についた奴は全員処分したはずだけど──」

呆然とするリディアをレイが覗き込む。レイの顔を見た瞬間、緊張の糸が切れた。

「……レイ!」

リディアは思わずレイに抱きつく。

「レイ、無事でよかった」

レイは強い。魔法の腕前も天才的だし、魔力も豊富だ。

それでも、あんなに大人数を相手にしては助からないかもしれないと覚悟した。

「リディア? 泣いているの」

戸惑ったようなレイの声。

「レイが死んじゃうかと思った」

「死なないよ。まだリディアと一緒に居たいもん」

「うん……」

レイはそれでも泣き続けるリディアの背中に手を回すと、あやすように触れた。

その夜、リディアとレイは森の中で一夜を明かすことにした。元の場所に戻って、また新たな追手が現れることを警戒したのだ。

見つからないようにするために焚き火を熾すこともできない。夜の森は気温が下がり、肌寒さを感じた。

「リディア、寒い?」

ぶるっと震えるリディアに気付いたようで、レイが心配そうにリディアを見つめる。

「平気よ」

「嘘。震えてる」

レイは着ていた上着を脱ぐと、それをリディアにかける。

「レイ! これじゃあ、レイが風邪ひいちゃう」

「俺は大丈夫」

「大丈夫じゃないわ!」

「うーん」

レイは少し考えるような様子を見せる。

「じゃあ、リディアがもっとくっついてくれたら温かいな」

木の幹に寄りかかって座るレイは、自分の足の間にリディアを座らせて後ろから抱きしめる。

「ほら。温かい」

レイの吐息が耳にかかった。

(確かに温かいけど──)

距離が近い。近すぎやしないだろうか。

レイに後ろから抱きしめられたことなど何回もあるのに、なぜか今日は胸がドキドキしてしまう。

広い胸も、この腕の力強さも、リディアにはないものだ。

(静まれ、私の心臓!)

リディアにとって、レイは弟のような存在。その弟にこんなふうにドキドキするなんて、間違っている。