軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ダンジョンハザード*1

とりあえず、石壁の向こうには『ダレモイマセンヨ!』と返事をしておいてから、慌てて作戦会議。

「ど、どうするどうするどうする!?あれ絶対に元大聖堂の誰かだよねえ!」

「生き残っていたとはな……うーむ」

「まさか生きてるとは思わなかったぜ!どうすんのアレどうすんの!」

……まあ、普通に素直に考えて、あの石壁の向こうには元大聖堂の何者かが居るものと思われる。だって、そいつくらいしかこのダンジョンに入った奴、居ないからな。

「えーと、エルフ……じゃない、んだよね?」

「ああ。エルフではない。エルフならばこういう時に言う符丁があるが、それが確認できなかった。向こうに居るのは間違いなく、エルフではない何者かだ」

尚、相手は確実にエルフではない模様。ということは人間。たまたま迷い込んじゃった人間である可能性が1割、元大聖堂の奴が生き残ってた可能性が9割、ってところか……。

「……このまま何も見なかったことにして去る、というのはどうだろうか」

すると、リーダーエルフがなんかとんでもないことを言い出した!

「いいんですか?」

「何をしでかすか分からん相手だぞ」

あ、エルフ的には大聖堂の連中ってそういう認識なんだ。まあ、そうだよなあ……。

……が、途端にスライムが俺達の足元にわらわら寄ってきて、『あれどうすんの』『あれかたづけないの』と言わんばかりにもっちりもっちり、引き留めに掛かってくる。ああもう、かわいいやつらめ……。

「えーと……多分、あいつがあのままダンジョンに居ると、スライム達が困るみたいなので……できれば出してやりたいですね」

「そ、そうか……」

リーダーエルフとしては、スライムの言うことを聞いてやる義理は無いぞ、みたいなかんじだと思うんだけど、残念ながらエルフ側にはスライム大好きお姉さんが居る。お姉さんは早速『スライムが困っているなら原因を排除してあげるべき』と意気込んでいる。すげえなこの人。

「……まあ、開けてみるべきであろうな。情報を得られるなら、それに越したことは無い」

そしてこの会議は、ラペレシアナ様の一声で終わる。

……まあ、そうだよなあ。普通に、相手が生きてたらコレができるもんね。

大聖堂の連中がどうやって、このダンジョンについて知ったのか。それを、俺達も知っておかなきゃならねえだろうから。

そうして、スライムが積み上げた石を頑張って退かしていく。

……スライム達には、石垣を組む才能があるようである。石と石の面がピッタリくるように上手に組み上げらた石壁は、なんかもう、見事な出来であった。こいつらこういうことできたのか……。

いや、まあ、なんでわざわざ石垣組んでんのか、ってのは分かる。

『生きている侵入者がダンジョン内に居たから』だ。だから、侵入者の周辺はダンジョンパワーを使えないままだった、と。そういうことなんだろう。

……で、そこでの対処がこの石垣なんだから、スライムって案外賢いのかもしれん……。

何はともあれ、石を崩していくと案の定、スライムに寄って集ってもちもちやられている人が居た。

衣類はボロボロだし、無傷とは言い難い状態だが、まあ、生きてる。そして、ほっといても命に別状はなさそうですね、ってかんじではある。

……が、まあ、俺達としては、『あらまあ』ってかんじだな。予想はできてたが。

「いやあ、助かった……全く、突然、このよく分からないスライムが大量に出てきて、一時はどうなることかと……」

崩した壁の向こうから、スライムにもちもちやられていたその人が体を起こして、なんとか這い出てくる。

だがな……地獄から脱出したと思ったら、その先も地獄なわけよ。

「ほう……久しいな。パニス村で破門の宣言を聞いた時以来か?」

ほら見ろ。こちらにはラペレシアナ様がおいでなんだぜ!

はい。ということで、元大聖堂の司祭だということが確定。何せ、俺達もこいつの顔、見たことあるからね。

アレだよ、アレ。パニス村で大騒ぎしてラペレシアナ様を破門したらカウンター国外追放された奴の1人だよ。

身元がはっきりしてるもんだから、容赦は要らねえな。俺達は早速、元司祭をズルズル引きずっていくことにする。

「尋問は我々が行おう。エルフでは、人間の体の勝手がわからんだろう」

「体の勝手……?」

「脆さ。腱の繋がり。痛みをより感じる部位。……それらの知識が我らにはある」

……エルフ側が、『ひぇっ』みたいな顔してるよ。いや、正直なところ、俺も『ひぇっ』という顔をしている。間違いなく。

「『尋問』中にこいつが死ぬようなことがあってはなるまい?……まあ、任せろ。こちらはこの手のことに慣れていてな」

ラペレシアナ様はサラッとそう言って、エルフを退かしてくださった。ありがてえ。これで、ダンジョンの主の情報とか、エルフに隠したい情報も聞き出せる!

……ところで、『尋問』ってのは、その、尋問ですかね?拷問、ってことじゃ……あっいやなんでもないです!どうぞどうぞ、こちらのことはお気になさらず!殿下のお心の赴くがままに!

生き残っていた司祭は、騎士達数名とエルフ2人……えーと、寡黙な弓エルフとやかましい杖エルフが、ダンジョンの外に護送してくれた。で、俺達は引き続き、ダンジョンの中を探索する。

「これは……まあ、死体だな」

「ほぎゃおわああおおお……」

「……すまない。アスマ様には刺激が強すぎたな……」

……探索した結果、結構グロいことになっている死体とかうっかり発見しちゃって俺の精神状態が盆踊りになったりもしたんだが、リーザスさんに抱っこされて事なきを得た。いや、事なきを得てない。リーザスさんに抱っこされて落ち着いちゃってる以上、事なきを得てないッ!

が、俺の精神のライフポイントがもうゼロに等しいので、そのまま抱っこされっぱなして探索続行。

……すると、大聖堂の紋章が入ったネックレスがまた見つかったり、錫杖みたいなやつが見つかったりした。

多分、元大聖堂の連中はここに隠れてたんだろうなあ……。

「見つかった死体は4つ、生存者が1名、か。……エルフ達にも改めて、エルフの里に来たという大聖堂の連中の動向を聞いてみたいところではあるが……それらと照らし合わせて考えると、国外追放になった者の半数程度はこのダンジョンに居たように思われるな」

うん。そうね。まあ、死体の状態は頭から消すこととして……えーと、彼らの生前の様子を思い出すと、人数的には『半分はダンジョンに潜り込んだ』ってかんじなんだよなあ。

「じゃあ残り半分はどこかで何かをやってるってことですね?」

「ああ。エルフの里に収監されている、というのが理想だが……さて、どうなることやら」

……ここでダンジョンの秘密を知っちゃったと思われる以上、大聖堂の連中の生き残りも、それを知っている可能性が高い。

そいつらが生きているなら……どっかで何かやらかしている可能性が高いので、こう……嫌だなあ!なんか、こう、死体がここで見つからないだけってことは無いかなあ!?爆発で木っ端微塵に吹っ飛んじまったとかさあ!駄目かなあ!あああん!

落ち着いてダンジョンから出た。

ダンジョンから出てみたら、スライムがなんか喜んでるように見えた。アレかな。ダンジョンがすっきりしたからかな。まあ、スライムが幸せならそれはそれでいいってことにしとくか……。

「スライムが温泉に……かわいい」

「あー、入場制限をある程度設けた方がいいよこれ。じゃないと温泉じゃなくて温スライムになっちゃうから……」

「それでもいい……」

「いいんかい」

……スライムが主をやってるダンジョンって、かなりスライムに優しいダンジョンになっちまうのな。いや、まあ、いいんだけど……。

まあ……これから、このダンジョンがどういう風にスライムの楽園になっていくのか、ちょっと楽しみである。頑張れよ、マスタースライム君。

俺達はそのまましばらく、スライムダンジョンに滞在することになった。ラペレシアナ様が大聖堂の生き残りを尋問してくださってるからね。それの待ち時間だね。

待ち時間の間にも新たなスライムが生まれて、頭に植物が植わった状態でダンジョンから出てくるので『もしかして最初からこういう形で生み出されてる……?』という疑問が生じて、スライム大好きお姉さんが魔物学者らしく、早速この現象を観察し始めた。

その横では、やかましい弓エルフがスライム達に囲まれて、そのままわっせわっせと温泉まで運ばれて、どぼん、と温泉に入れられていた。よかったね。

そして俺は、ミシシアさんから『これはねー、水薄荷!火傷に効くポーションの材料!こっちはねー、雪たんぽぽ!食べると肌の艶が良くなるんだよ!』と、植物講座を受けている。……スライムが各種植物を頭に生やして、もっちりもっちり、とやってくるものだから、座ったままでも色々な植物を観察できる。便利。

……で、そんな和やかな時間が過ぎていく一方、ラペレシアナ様達が頑張っている方面からは時々すげえ声が聞こえてきたり、『べきべきべきべき!』みてえなすげえ音が聞こえてきたり、なんか、とにかく、すごかった。

……すごかった!

「待たせたな。奴め、中々口を割らんでな。全く、面倒ばかり掛けさせてくれるものよ」

それからしばらくして、ラペレシアナ様がお戻りになった。お帰りなさいませ!

「あー……どうでした?」

「まあ、ある程度は情報がまとまって手に入ったところだ」

ラペレシアナ様は少しお疲れの様子だったが、それでも、にやりと笑って答えてくださった。かっこいいぜ!でもちょっとこわいぜ!

「内容をまとめたものをリーザスに持たせた。そちらで確認してくれ。こちらはまだ『途中休憩中』なのでな。休憩が終わり次第、尋問に戻る。エルフ達への報告はその後だな」

「成程、了解です」

つまり、エルフには聞かせたくない話が出てきちまったから、そこらへんを隠したり誤魔化したりして、改めてエルフに伝える、ってことだな。了解了解。

「そういうわけだ。リーザス、後は頼んだぞ」

「ええ、確かに」

リーザスさんは紙きれみたいなのを小さく掲げて笑った。成程ね。あそこに色々書いてある、と。情報共有が楽しみだぜ。

……で、ラペレシアナ様はそこら辺に居たスライムをもにもにと揉んで休憩なさると、そのまま颯爽と戻っていかれた。お疲れ様です!

そうしてラペレシアナ様を見送った後。

「さて……いよいよ面倒なことになったぞ、アスマ様」

早速、リーザスさんから不吉な言葉が出てきた!やだー!

「ええー、やだぁー……聞きたいような聞きたくないような……」

「そうは言っても、聞かないわけにはいかないだろう?うん……言うぞ」

まあ、仰る通りですよ。聞かないわけにはいかないので駄々こねずにさっさと聞く。

……すると。

「まあ、色々出てきたが……要約するとだな」

「うん」

「どうやら、『ダンジョンはここだけじゃない』らしい」

「ヤダァーッ!」

「そうだなあ、嫌だな……ああ」

最悪!最悪の話が出てきた!マジで最悪!うおわああああああ!