作品タイトル不明
127話 昼食
ダンジョンを出た後、周囲に人が居ないのを確認してから雑面を外した。
旅館に戻る道を歩きながら、掲示板でダンジョンマスターについて軽く質問してみる。しかし役に立つ情報はやっぱ貰えなかった。
過去のやつを遡って読んだ方が何か見つかりそうだけど、結構時間かかるし、どうしようかな。ヒントとなるのは車だろうか。そういうの調べるは俺の仕事じゃないんだけど。てか出来ないし。
まぁ奈那さん経由で小田切さんに車調べるといいよって伝えておくのはありか。
そもそも観光地からダンジョンに連れてくるのは車が必須なんだし、それくらいわかってて既に調べてそうではあるけども、奈那さんから紹介された人物だし、敵じゃ無いアピールしとこう。
旅館に着くと先程いた個室に戻った。探索に必要な荷物をここに置いて、奈那さんが呼んでいたタクシーに乗る。
奈那さんが店名を言うと詳しい住所を聞かれることなく走り出した。ここら辺では有名な店なのだろう。
「富良野駅近くにカレーが美味しい店があってな。特にオムカレーが有名なんだ。奢るから付き合ってくれ」
「別にいいよ。カレー嫌いじゃないし」
「奈那さん人に奢るの好きですよね」
なんか、気づいたら全部支払ってる。
ここのタクシーも半分出すっていったらアプリで配車手配して決済もアプリ経由だからいらないって言われた。
「そうでもない。会計でもたつくのが嫌いなだけだ」
つまり奢られっぱなしが嫌なら奈那さんより早く会計を済ませないといけないのか。難易度高そう。
だったら今度世間に流通してないスキルの書を渡した方がお返しになるかな?
奢られた金額が凄いことになったら検討しとこ。
車内では北海道の観光地について当たり障りのない話をして、ログハウス風の建物の前でタクシーを降りた。外なのにカレーの匂いがもう香ってくる。11時半過ぎと若干お昼には早い時間帯だったが、既に人が並んでいた。
俺らもそこに並び、15分ほどで店内に入れた。
外にいた時点で既にカレーの匂いがしていたけど、中に入るともっとすごい。
とりあえず3人とも名物のオムカレーを頼んだ。トッピングはそれぞれ違うけどな。
注文の品はそれほど待つことなく提供され、早速食べ始める。
とろとろのオムレツにチーズが入っており、その影響かルーはそこまで辛く感じなかった。オムレツのクリーミーさとカレーのスパイスが良い感じにマッチしていて美味しいと思う。
「あのさ、こんなのんびりしてて良いわけ?」
「良いんじゃね。小嵜が本当に危機的状況になったんなら既に死んでるだろ」
「同感だ。少なくとも1週間は生き延びられる程度の安全地帯にいるか、あえて生かされているかのどちらかだろう。今日1日で状況が変わるとは思えない」
「ふーん。良いなら別に俺も良いけど」
今だに小嵜の捜索に対してあんまり気が向かないんだよなぁ……これが瑛士とかだったらもうちょい頑張って探すんだけどさ。
あ、牛タンも美味しい。
カレーを完食してまた旅館に戻った。
例の個室に通される前に、奈那さんが旅館のスタッフから紙を渡されてた。
「それは?」
「富良野ダンジョンの地図だよ。さっき一度立ち寄った時に、印刷をお願いしていたんだ。これがあった方が話しやすいだろう?」
「確かにそうですね。ありがとうございます」
個室に戻ると机の上に地図を広げる。
あくまで人類が攻略した部分のみの内容ということを念頭に置かないといけない。
「まず、それぞれの階層の最短ルートを書き出そう」
そう言って、奈那さんは赤ペンで地図に線を引き始めた。
こうして見るととてもわかりやすい。
「次に、現在わかっている転移トラップの位置を記していく」
今度は青ペンで地図上に×が足されていく。1階層は少なかったが、階層が増えるに連れて罠の数もどんどん増えていく。当然っちゃ当然だけど、よく罠のレパートリー尽きないよなぁって思う。
「最後に、攻略サイトで最適解とされているルート。いわゆる攻略ルートと呼ばれているものを書く。このルートを通っていたと証言があったので、おそらく小嵜麻夢はこれを見て探索に挑んだのだろう」
緑色のペンでさらに線が追加された。
序盤は最初に書いた赤い線と被っているところが多かったが、後半の階層は遠回りするルートがほとんどになった。
「14階層で見つかればそれでよかったが、そうもいかなくなった。もう少し深く考察しよう。攻略ルートから外れなければ、19階層まではすんなりと進める。20階層以降は最適解が見つかっていない状況だ。さて、そんな中小嵜はどこで消えたのか。現時点で考えられる理由は3つ。19階層までの間に、何かしらの理由で攻略ルートから外れ、トラップに引っかかってしまった。または、20階層までは順調に進み、その後未開のルートに行ってトラップに引っかかった。最後に、富良野のダンジョンマスターが直々に現れ、攻略途中で捕えられた、のどれかだ」
「なるほど。トラップに引っかかっているだけなら、見つけさえすれば何とかなりそうですけど、わざわざ捕まえられていたらめんどそうですね」
「なんでダンマスがダンマスをわざわざ捕まえんだよ。ポイントにならないじゃんか」
「そうだな。今の所理由がない。だから小嵜麻夢さんはどこかのトラップに引っかかったという前提で進める」
奈那さんの話をまとめると、14階層でしか目撃者が居ないのは、13階層から19階層までは地図を完成させるために攻略ルートを外れて探索している人たちしか居なかったから。20階層以降は探索者がバラけて攻略しているためここまでもし小嵜が辿り着いていたらもう少し目撃証言があってもおかしくない。つまり14階層から19階層の間でトラップに引っかかったんじゃないかということだった。
相当頭が良くないかぎり、奈那さんのように攻略情報を全て頭に入れるのは難しい。
もし、うっかりルートを外れ、同階層、他階層のどこかに飛ばされるトラップにハマったら、自分が今どこに居るか把握するのすら困難だ。どこに飛ぶかを覚えてない限りはな。
小嵜がトラップの情報を全て頭に入れていたとは思えない。
さっきダンジョン内でも軽く話したが、他の階層へ行くトラップに引っかかり、うろちょろしている間にその階層の他のトラップに更に引っかかった可能性だってある。
「結局、範囲が絞れているようであんまり変わってませんね。20階層以降は探さなくなっても良くなったくらいでしょうか」
「まぁな。ただ、捜索の仕方は変えられる。14階層はやむなくトラップのほとんどの場所に行ったが、小嵜麻夢さんが攻略ルート通りに進んでいたとしたら、引っかかったトラップもルートから近い位置にあるはずだ。ルートから遠いトラップは捨てられる」
「あー、確かに」
「そうですね。次は攻略ルート周辺のトラップをメインに探しましょう」
次の方針はそれで良いとして、せっかく俺がダンジョンマスターだと知っている人のみしか居ない空間だから、AIに話しかけたい。
瑛士が朝、事前に会ってる人なら探せそうなスキルはいくつかあったって言ってたし、内容次第では取ってもいい。
「探索に戻る前に、AIと話す時間をください」
「もちろん構わない」
「では遠慮なく。ダンジョン内で行方不明となっているダンジョンマスターを捜索するのにちょうど良いスキル、またはアイテムはある?」
『回答。スキルは 縁痕感知(えんこんかんち) 、ターゲット、占星術。アイテムは導きの棒がございます』
縁痕感知は過去に会ったことのある人物がうっすらわかるようになるスキルらしい。知り合いが近くにいるなっていうのもわかるようになるし、この人初対面だっけ?っていうのが無くなる。
なかなか便利なスキルっぽそうだけど、感知できる範囲が狭そう。
ターゲットは過去に遭遇したことのある存在を1体ターゲットに設定できるスキルだ。設定したターゲットの事はなんとなくどこに居るのかわかるようになるらしい。ターゲット設定中、ステータスは向上するが、ターゲットの撃破に成功すれば元に戻る。なお、ターゲットの設定は1日に1体まで。一定時間内に倒せなかったら、ステータスは24時間大幅ダウンするらしい。必要ポイントが高いので却下で。
占星術はシンプルにさまざまな占いが出来るようになるスキルだ。極めれば人探しも可能だけど、最初は何かを当てるのは難しい。占いを勉強している暇はないので、これも却下。
そして最後は導きの棒というアイテム。見た目は完全にただの木の棒だ。棒を立てた後、手を離すと目的地に向かって倒れてくれるらしい。ただし当たっている確率は70%ほど。小嵜を探すのに使えそうでポイントも15万と良心的ではある。
問題なのが、これがアイテムという点だ。手に入れる為に一回東京に戻って町田ダンジョンに行く必要がある。流石にそこまでする価値は無さそう。
うーん……AIに聞く時間を作ってもらった割には結局何もなしで終わりそうだな。一応縁痕感知だけ取っとくか?35万だから全然取って良い範囲なんだけど、なんだか無駄になりそうな予感がする。
もうちょっとなんか無いかな。