軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

89話 仕様変更

母からの追及をなんとか躱した後は、風呂に入りに行った。たぶんうまく誤魔化せたと思うけどどうだろうなぁ……

俺の両親は蓮見のところと違って善良な親である。多少過保護なところはあるが、たぶんそれは俺が一人息子だからで、一般的な範囲に収まる。

じゃあなんでこんなにも知られたくないかというと、両親が善良だからこそだ。

なんというか、いくら人類の味方をしてようが、ダンジョンで人が死んでいる以上は ダンジョン運営(俺のやっていること) が良い事だとは言えない。バレたら死んだ人達に一緒に謝りにいこうとか言い出しそうな雰囲気だったし、ダンジョンが出来てからしばらくは2人ともダンジョンは消滅させてほしい派だった。

蓮見のところみたいにいっそ毒親だったら家出とかも考えられたけど、特にそう言った理由もないから迷惑をかけるようなこと、特にダンジョンマスターのゴタゴタとかに巻き込みたくなかった。

そんな理由から隠す選択をしたけど、瑛士への反応を見る限り、俺がダンジョンマスターだと知ってもあっさり受け入れる可能性はある。実際に言うとどうなるかわからないけどな。

結局、ここまで隠してきたんだから、最後まで隠し通したいという意地でバレたくないのかもしれない。

風呂から上がったら、洗面所で髪を乾かして、リビングに戻ってきた。

今度はじゃあ私がと母が風呂に行く。

俺は父が座ってるところから若干離れたところのソファに座った。

ただテレビの音が流れるだけで、会話は無い。昔から父はこうなので俺は慣れたけど、普通なら気まずくなるところだ。

「蒼斗」

なんて思ってたら話しかけられた。珍しい。

「どうかした?」

「お前が町田ダンジョンのマスターなんだろ?」

「っ……何言ってんの?違うけど」

なんとか言い返したが、急に聞かれるとは思ってなかったのでだいぶ挙動不振になった気がする。

友達いっぱいいて情報源たくさんある母じゃなくて如何にもぼっちそうでネットに興味ない父さんがどうして……

「母さんは変に鈍いところがあるからなぁ……動画を見ても全然ピンと来てなかったから安心しろ」

動画って俺の動画だよな?いつ、なんで見たんだよ。こうやって言ってきてる時点で全然安心できないんだけど。

「男にはやんちゃしたい時があるのはわかる。ただ、あんまり危ないことをして怪我をしないようにな。蒼斗に何かあったら母さんが悲しむ。もちろん、俺もな」

今日に限ってえらく饒舌じゃん?

まじでなんで?父さんはどこでどう俺が町田のダンマスだって認定したんだ。切実に教えてもらいたいけど聞いたら認めたことになるし。……いや、もうすでに手遅れだろうからいっそ聞いた方がいいのか?

雰囲気からして母さんには言ってないっぽいけど、じゃあなんで父さんはなんで俺にわざわざ確認したんだ。いったい何が目的で?怪我をするなと言いたかっただけ?意味がわからない。俺がダンジョンマスターでどう思ったとか気になるけどそういうことは下手に聞かない方がいいのだろうか。

とりあえずこれ以上俺が町田のダンマスだって広まらないよう口止めはしないと。芋蔓式で母さんにまでバレたくない。あの人にバレたら近所の人全員に広まって小中高全員の知り合いにまで情報が届く可能性がある。

ここまで来たらいっそ瑛士みたいに開き直るのもありな気がしてきたな。絶対しないけど。いやだってダンジョンマスターの人権が今はあるとはいえ将来的にどうなるのかはまだまだ不安定だし。人としてこっそり生きる道は残しておきたい。

なんだか思考が逸れてきた気がする。一旦冷静になろう。

否定する術を思いつかないから、父さんにバレてるのはもう受け入れるべきだ。だとしたら1番にやることは口止め。

「……母さんには言わないで欲しいんだけど」

「わかってる。男にはひとつやふたつ隠したいものがあるもんだからな」

……その男にはってなんなんだよ。言わないでいてくれるなら助かるけど。

「ありがとう」

「まぁ、蒼斗がいいと思ったらちゃんと母さんにも話せよ」

「いつになるかわからないけど」

「それでもいい」

話したいことは話し終えたのか、それきり父は何も言わなくなった。たぶん俺から話しかけたら答えてくれるだろうけど、いつ母が風呂から戻ってくるかわからないから今はやめておく。

今度タイミングがあったらどうやって知ったのか詳しく聞こう。

その日はこれ以上何事もなく終わり、新年を迎えた。

朝9時。いつもの時間にそれが聞こえてきた。

『ダンジョンマスターの皆様にお知らせです。ダンジョン運営システムの一部仕様変更を行いました。詳しくはサポートAIにお聞きください」

久々の天の声だ。相変わらず男にも女にも聞こえてどこか懐かしい感じがする。

お知らせの内容は思ってたより短かった。まさかAIに聞いてで終わるとは。

キッチンで物音がするから今ならAIに話しかけても問題ないな。

「今回の仕様変更で何が変わったのか詳しく教えて」

『回答。

ダンジョン内に直接モンスターを配置できる機能の停止。

ダンジョン内に直接アイテムを配置できる機能の停止。

ダンジョンマスター用のスキル欄を追加。

ダンジョンに帰還できるボタンの追加。

ダンジョンコア層にマスタールームを追加。

マスタールーム用のアイテムを追加。

人類を撃退した際のポイント交付率変更。

以上、7項目の変更が行われました』

予想以上に多い。

画面からスライドするやり方を無くした事で、モンスターが外に配置出来ないようにしたんだな。ついでとばかりアイテムも自由に出せなくなったけど、俺の要望は通った感じだ。

試しに画面を開いてみると、見覚えのないアイコンが確かにいくつか増えていた。

本当にモンスターとアイテムが出せなくなったのを確認してから、アイコンの確認に移る。

左上はコンパスマークが1番端っこだったが家っぽいマークが1番端っこになっている。右上は人マークとメダルマークの間に、剣と杖がクロスしたやつと椅子のマークが増えていた。

下段は特に変化はない。

家のマークがダンジョンに行けるボタンか?

試してみたいけど実家にいる今は押せないな。

そもそも帰還っていってるけどダンジョンのどこに行くのかわかんないし。普通に考えたらマスタールームってやつだろうけど、最初の部屋の可能性も全然ある。

にしても、俺はモンスターを外で配置出来ないように交渉をしたけど、他の誰かがマスタールームとか帰還ボタンを追加するように交渉したのだろうか。ダンジョンマスター用のスキル欄も地味に助かる。前までのドロップ欄のスキルの書から自分用として購入ってやり方ものすごくやりづらかったし。

このままAIに詳しい機能を聞いていきたい気持ちはあるが、そろそろ朝ごはんを食べに行かなきゃいけない時間だ。

昨日のことがあるから気まずい、というか母にまでバレてないか若干怖かったけど、このまま自分の部屋に居たって母が俺を起こしに来るかもしれない。

内心少しびくびくしながら1階に降りると、両親からいつものおはようと新年のあけましておめでとうの挨拶があった。

父は本当に母に何も言っていないようだった。