作品タイトル不明
第6話 田中、喧嘩両成敗する
「ありがとリリちゃん、これで私、明日から頑張れるよ……」
"泣いてて草"
"よほど嬉しかったんやろなあ"
"お姉さんも社畜なのかな?"
"オタク、成仏しろ"
"リリたそに接客されたらワイも成仏するわ"
"たしかに"
"ああああああああなんで俺は抽選外れたんだああああああ"
"明日行くの楽しみ"
"うぎぎっぎぎいggっg"
"バグってて草"
"おちつけw"
リリの接客に感動したのか客のお姉さんは両手を組みながら涙を流す。
よほど疲れていたんだろうな……俺も社畜の時はふとした拍子に涙が流れそうになったものだ。懐かしい。
するとそれを見たリリは、彼女に近づくとその頭をよしよしとなで始める。
「いーこいーこ」
「……っ!?!?!??!!!?」
リリに頭をなでられた彼女は言葉を失い絶句する。
まさかそんなことをしてもらえるとは思っていなかったんだろう。俺もまさかリリがそんなことをするなんて想像もしていなかったので驚いた。
俺がよくリリを褒める時なでているから、それを真似しているんだろうか? 物覚えがいいとは思っていたが、そんなとこまで真似するなんてな。
"ええええっ!?"
"ファンサえぐすぎ"
"羨まし過ぎて血の涙流してる"
"リリたそにいい子いい子されたい人生だった"
"ファン気絶してて草"
"しかも鼻血出してるw"
"そりゃそうなるよ"
"食わねえならそのイカ焼きくれ"
"いいなあ"
"何百万払えば同じサービス受けれるの??????"
「ねちゃった」
気を失ったファンを見たリリはそう言って首を傾げたあと、お辞儀をしてこちらに駆けてくる。
寝ているわけじゃなくて気絶したんだが、まあ同じようなものか。
「たなか。はこんだー」
「ありがとう。助かったよ」
「えへへ」
頭をなでると、リリは嬉しそうに笑う。
こういうことを学んで他の人にもやったんだろうな。ただこのサービスを多用すると客が全員気絶してしまう。ほどほどにするよう言っておかないとな。
"リリたそかわいすぐる"
"尊すぎゾーン"
"この間に挟まりたい"
"それは百合の間に挟まるより許されない"
"絶許"
"表出ろ"
"血気盛んやなあ"
"まあでもキレる気持ちは分かるw"
「じゃあ次いってくるー」
「ああ、気をつけてな」
なで終わると、リリはとてて、と歩いて次の注文を取りに行く。
変なことをする客もいないし、心配いらないだろう。さっき海の家エリアも見たけど心配いらなそうだった。
コラボカフェは今のところほぼ順調だ。一部を除いて……
「どけ! 俺様が注文を取る!」
「馬鹿を言うな、ここは僕の担当だ!」
喫茶店の一箇所が騒がしくなり、俺はそちらに目を向ける。
そこにいたのは客の注文を取り合うダゴ助と三上の姿だった。
二人とも基本的に真面目に仕事をしてくれてはいるが、時折こうして争ってしまっている。
今のところ大きな問題にはなっていないが、お客さんがいるところで暴れられると非常に危険だ。さっきも注意したというのに、こりない奴らだ。
"またやってるw"
"さっきも叱られたのに"
"次はどっちが勝つだろう?"
"ダゴ助に1000円"
"三上が勝つっしょ"
"三上くんに50円"
"賭けやるなw"
「はあ……お前らいい加減にしろ。迷惑だろうが」
手が空いていた俺は二人を止めるため彼らに近づく。
俺が近づくと二人は掴み合うのをやめるが、それでも空気はギスギスしている。
「でも兄貴っ! こいつがいけないんですよ!? さっきも俺の仕事を奪いやがったんだ!」
「それは君がぼけっとしているからです。僕は フォロー(・・・・) してあげたんです。むしろ感謝してほしいですね」
「んだとゴラァ! なにかと邪魔しやがって許せねえこの堅物メガネが!」
「誰が堅物メガネですか!」
ぎゃあぎゃあと言い合う二人。
はあ、見てられない。二人のことを知っているお客さんたちは楽しそうにその様子を見ているけど、関係者の俺は恥ずかしくて仕方ない。二人ともいい大人なんだからしっかりしてほしい。
「兄貴! やっぱりこいつは外しましょう! 絶対兄貴に迷惑かけますぜ!」
「田中さん、この魚人は信用なりません。あなたの側にいるには相応しくありません……!」
二人はそう俺に詰め寄ってくる。
こいつら……一度頭を覚まさせないといけないな。
「いい加減にしろ!」
俺はそう言って二人の頭にゲンコツを食らわせる。
それを食らった二人は「「ぐわぺ!?」」と謎の言葉を口にしながら頭を地面にめり込ませる。
「お客さんの迷惑だろうが! 見苦しいから喧嘩すんな!」
「「ひゃい……」」
"草"
"綺麗に埋まったなw"
"一周回ってこいつら仲いいだろw"
"まあ田中が怒るのもしゃあない"
"見てるこっちは楽しいけどなw"
「お騒がせしました。こいつらには私の方からキツく言っておきます。みなさまは引き続きお楽しみください」
俺はそう言って頭を下げると、ぐったり倒れているダゴ助と三上を引きずってスタッフルームに入る。
まったく、困ったもんだ。こいつらはみっちりと叱ってやらないとな。