軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1話 田中、助っ人と会う

「いやー今日の配信は最高だったな田中! 凄い宣伝効果だったぞあれは」

皇帝イカ配信をやった日の夜。

事務所に戻ると足立は上機嫌にそう言った。

「ちょっとだけ配信するつもりだったんだが、結局夕方まで長引いてしまった。下見の方を手伝えなくて悪かったな」

「あーそんなの気にしなくていい。どうせ下見なんてそれほどやることはないからな。コラボカフェ用の建物を建てる場所を決めて、その大きさや資材を業者と相談。後は搬入経路や安全基準を満たしているかの確認をしたくらいだからな」

「いや……それ大変じゃないか?」

とても一人でまとめられる作業量とは思えない。

俺たちが配信している間にそれだけの仕事をこなしているとは驚きだ。

「とにかく、いい宣伝もできたし場所も確保できた。後はメニューを決めてその材料を仕入れる算段を付けられれば懸念はほとんど無くなる」

「そうか。じゃあメニューを考えるのを頑張らなきゃな」

一応コラボカフェでどういったメニューを出しているのかの資料は足立から貰っている。それを読んだのでなんとなくの雰囲気は掴めてきたが、それを俺に当てはめて考えるとなると中々難しい。

コラボカフェはその作品やキャラにちなんだ物を提供するみたいだが、俺みたいなメニューってなんだ? 考えてみたけどなんにも思い浮かばない。

コメントで「社畜専用エナジードリンク」という案があり、それは結構好評だった。それと似た感じで考えればいいんだろうけど、それでもやはり浮かばない。

斬って解決できない問題は苦手だ。

「俺も正直メニューを考えるのは得意じゃない。なので 助っ人(・・・) にもそれを手伝ってもらうことにした」

「助っ人? ああ、そういえば手伝ってくれる人がいるっていってたな。その人のことか?」

そう尋ねると足立は「そうだ」と頷く。

いったい誰なんだその助っ人というのは。てっきり当日手伝ってくれるだけの人かと思ってたけど、準備段階から手伝ってくれるみたいだ。

足立がそれだけ頼りにしているってことは、それだけ仕事ができる人ということだ。どこでそんな人を見つけてきたんだろうか。

「誰なんだその助っ人っていうのは」

「まあ落ち着け。実はその人に来てもらってるんだ。そろそろ事務所につくと思うぞ」

なんと足立はその人を呼んでいたらしい。

俺が知っている人なのか? なんだか少しドキドキしてきた、いったい誰なんだろうか。緊張しながら待っていると、その人物が事務所にやって来る。

「お邪魔します! 今日はお呼びいただきありがとうございます!」

入ってきた人物は大きな声でそう言うと、俺を見つけてシュバっと近づいてくる。

「田中さん、ご無沙汰してます!」

「あ、ああ。えっとお前は確か……三上、だったよな?」

「はい! 鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ) ギルドの 三上(みかみ) 修二(しゅうじ) です。よろしくお願いいたします!」

暑苦しい感じでそう言ったのは、以前北海道で一緒のダンジョンに潜った探索者の青年、三上だった。

鋼鉄の牡鹿(アイアンスタッグ) ギルドという新進気鋭のギルドに所属する彼だが、北海道のダンジョンではトラブルを起こしてしまい、多くの人に迷惑をかけた。

俺もその騒動に巻き込まれ、流れで三上や他の人を助けたという経緯がある。

「北海道で別れて以来か。あれから活躍しているみたいじゃないか」

「はい。これも全て田中さん、いえ……師匠のおかげです。僕はあなたに救われ、そして生まれ変わったのですから……!」

「誰が師匠だ」

俺は呆れながら突っ込む。

二人でダンジョンを進んだ時、確かに俺は探索者としての心構えをこいつに教えた。説教みたいのをするのは好きじゃないが、あまりに勝手で暴走しがちなこいつを放っておくことはできなかったからだ。

今まで叱ってくれる大人がいなかった三上はその言葉が響いてしまったらしく、やけに懐かれてしまった。

慕ってくれるだけなら構わないけど、師匠になった覚えはないのでやめてほしい。

「くっ、まだ弟子とは認めてもらえませんか……!」

「この先も認めることはないと思うぞ」

そう言うと三上はテーブルに突っ伏して撃沈する。

いちいちオーバーな奴だ。最初はクール系を気取っていたのに、なんでこんなに変な奴になってしまったんだ。

「足立、もしかしてこいつが助っ人なのか?」

「ああ。三上くんはコラボカフェの経験がある。田中と仕事したいか聞いたら爆速で飛びついて来たし、手伝ってもらうことにしたんだ」

なるほど、そういうことだったのか。

三上は変人だし暴走することもあるが、基本的に優秀な人物であることに違いはない。コラボカフェの経験もあるなら確かに心強い助っ人だ。