軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第26話 ミケの本領発揮

まるで部屋全体が、地盤沈下が起きたような状況になっていた。

あのまま下にいたら、私たちは地面もろとも落下していたことだろう。

「あ、ありがとうございました。リサさんがいなければ、今ごろは………」

エイラさんの声が震えている。

まだ十七歳の女の子だからね。相当怖かったに違いない。

ミケが「ニャー」と鳴いて、体をエイラさんへ何度も擦り付ける。

それだけで、エイラさんに少し笑顔が戻った。

ミケの癒しの力は、さすがだね。

「……エイラさん、残念ながら安心するのはまだ早いみたいです。あれを見てください」

陥没した地面が、徐々に盛り上がっている。

巨大な手が見え、続いて頭が見えてきた。

上半身だけで、さっきのゴーレムくらいの大きさがある。

「ま、まさか、ゴーレムキング……」

「このために、ゴーレムたちは天井を高くしていたのですね」

どうやってゴーレムキングが誕生したのかは、わからない。

でも、この部屋には生み出せるだけの何かがあり、それを知っていたゴーレムたちが集まって作業を進めていた。

「私たちにとって幸いだったのは、ゴーレムたちが天井を高くしていたこと。あと、衝撃が大きすぎて地盤が崩落したこと。おかげで、天井付近にいれば、とりあえずは安全です」

ゴーレムキングは下半身が埋まった状態なので、今は動くことができない。

でも、必死に脱出しようとしている。

「ミケちゃん、お願い!」

⦅まかせて!⦆

部屋全体に風が巻き起こる。

ミケが強力な風魔法を行使しているのがわかる。

聖火であれば燃やせるかもしれないが、密閉された空間で火気を使用するのは怖い。

ミケがそう判断したのだろう。

風魔法で狙うのは、むき出しになっている魔石だ。

それに気づいたゴーレムキングが手で庇うと、手に大きな穴が開いた。

ミケもこの姿になってから、力がさらに強くなった気がする。

ゴーレムキングの魔石は、四発目でヒビが入り、五発目で砕け散ったのだった。

村に帰りついたときには、もう夕方になっていた。

さすがに疲れたし、お腹も空いた。

けれど……

空が茜色に染まりとても綺麗だな~と、私は現実から目を背けていた。

「そ、村長! ゴーレムキングが出ただと?」

「ゴーレムも、二体どころか六体もいたのか!!」

「こんな大きな魔石を、儂は生まれて初めて見たぞ!!」

村の広場では、村人たちが蜂の巣をつついたように大騒ぎをしていた。

テーブルの上には、傷の無い魔石が六個。バラバラになった魔石が数個置いてある。

子供たちは、広場に並べられた六体のゴーレムを触ったり、突っついたりしている。

しかし、魔石は七体分あるのに、ゴーレムの体は六体しかない。

そう、私はまだキングを出していなかった。

キングを出す前に村人たちが騒ぎだしたため、出すタイミングを完全に見失ってしまった。

でも、このまま隠しているわけにはいかない。

きちんと見せ報告をしなければ。

心の準備ができた私は、口を開く。

「……エイラさん、お願いできますか?」

「……はい」

エイラさんが「みんな、危ないからちょっと下がって!」と声をかける。

安全を確保したところで、躊躇せず一気に出す。

はい、ドン!!!

巨大なゴーレムが姿を現した。

「「「「「「「・・・・・」」」」」」」

誰も、何も反応しない。

うん、予想通りだ。

「えっと……エイラ、これは何かのう?」

「やだなあ、おじいちゃん! なにって、ゴーレムキングだよ」

同じく現実逃避ぎみのエイラさんが、明るく答える。

「なんで下半身だけ、光っておるんだ?」

村長さんの言う通り、ゴーレムキングの下半身はガラスのようにキラキラと光っていた。

なぜなのか、私も理由が知りたい。

キングとの戦いが終わったあと、レースごと地面に下りた。

砕け散った魔石を拾っていたら、何かがきらりと光る。

気になって少し掘ってみたら、キングの下半身の色が違っていたのだった。

「……村長、これは『 石英(せきえい) 』かもしれんぞ」

「なんじゃと!?」

石英とは、簡単に言ってしまえばガラスの材料になる鉱物のことらしい。

石英の中でも無色透明なものは、『水晶』『クリスタル』と呼ばれているそうだ。

なるほど、だから光っていたんだね。

つまり、あのゴーレムキングは(半分)クリスタルゴーレムだったのだ。

「だったら、ゴーレムキングが出てきたところを採掘してみてください。まだ、石英が埋まっているかもしれませんよ?」

「そうだな、確認は必要だ。早速、明日の朝一番で向かうぞ!」

「「「「「おう!」」」」」

村人たちの顔が、生き生きとしている。

久しぶりの仕事に、みんな嬉しそうだ。

その後の話し合いで、ゴーレムキングの本体以外のものはすべて私の取り分となった。

「……リサさん、本当に良かったのですか? だって、討伐した魔物は討伐者に権利があるはずですよ? だから、キングの本体だって本当は───」

「それだったら、ゴーレムの半分はエイラさんに権利がありますよ? それを私がもらったので、それでいいじゃないですか」

「ただのゴーレムとあのキングでは、価値が違いすぎます!」

「そもそも、キングの石英は鉱山に埋まっていたものですよ。だから、権利は鉱山を所有しているこの村にあります」

「でも、石英はまだ鉱山に埋ま────」

「さらに石英が出るかは、掘ってみなければわかりません」

私は人差し指を口の前に立てる。

「エイラさん、討伐で見たことを吹聴しない。これは、この依頼を受けるときの約束でしたよね?」

実は、探知魔法でまだゴーレムが埋まっていないか念のため確認をしたところ、石英の大きな結晶を見つけてしまったのだ。

鉱山から出た鉱物は持ち帰ったら盗掘という犯罪になるから、土に埋めたままにしてある。

明日は、きっとまた大騒ぎになるだろう。

「あのゴーレムを売れば、採掘作業ができなかった分の穴埋めができるはずです」

「この村のために……リサさん、ありがとうございます」

エイラさんは目に涙を浮かべた。