軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第24話 ガラス工房で

検問を終えたあと、私たちはそのままトムさんのガラス工房へ同行させてもらっている。

一家はガラスの原材料を求めて、遠くの町まで仕入れに行っていたそうだ。

「いま王都では品薄状態で、なかなか手に入りにくいのです。何でも、原材料の産地で問題が起きているとか」

「早く解消されると、いいですね」

職人さんたちにとっては、死活問題だろう。

王都は東西南北を十字に二本の大通りがあり、そこから枝分かれした道がいくつも走っている。

十字の中心には中央広場があり、オベリスクのような石造りの高い塔が立っている。これは町のどこからでも見えるのだとか。

道が不慣れな者は、その塔を目印にすると良いそうだ。

迷子になったら、私もそうしようと思う。

大通り沿いには大店が立ち並び、目抜き通りといった感じだろうか。

国中から様々な商品が集まってくるから、地方では手に入らない手芸用の素材が売っているかもしれない。

考えただけでワクワクしてしまう。

職人街は王都の北西に位置している。

町へ入った途端、急ににぎやかになった。

あちこちの工房から威勢のいい掛け声と金属音が聞こえ、いくつも煙が立ち上っている。

荷台の後ろから町をきょろきょろと見回しているうちに、ガラス工房に到着したのだった。

店の看板には『アトリエ・ヴェール』と書かれており、色ガラスで作られた白色のマーガレットの花が嵌め込まれていた。

「父さん、いま帰ったよ」

トムさんが声をかけると、奥の高炉の前にいた中年男性が出てきた。

彼が、父親のテルさんだ。

「おかえり。 珪砂(ケイシャ) は手に入ったのか?」

「うん、どうにかね。これで問題なく作れるよ」

「そりゃあ、良かった。ところで、そちらのお嬢さんは?」

「こちらはリサさんといって、王都門前で知り合った魔法使いさんだよ。ガラスの廃材が欲しいそうで、工房まで案内してきたんだ」

「初めまして、リサといいます。こっちは従魔のミケです」

「こんなむさ苦しいところへ、ようこそおいでなさった。廃材ならたくさんあるから、好きなだけ持っていってください」

工房の裏手には、麻袋に入れられたガラスの欠片がたくさんあった。

手に取ってみると、一つとして同じ形はない。

これを何に使うのかというと、モチーフやボトルカバーの飾りつけに使用するのだ。

花のモチーフの真ん中に縫いつければ、より花らしさが出る。

動物モチーフの目や柄になる。

ボトルカバーをモザイク柄にデザインできる。

他にも、いろいろと無限に可能性が広がる。

「こちらを、すべて買い取りたいのですが?」

「廃棄物だから、お金はいりませんよ」

「でも……」

逆の立場になって、ようやくわかった。

「お金はいらない」と言われると、言われたほうは恐縮してしまうのだと。

「では、代わりにサラちゃんとケンタくんへ贈り物をさせてください」

工房の隅で、椅子とテーブルを借りる。

私が取り出したのは、マーガレットに似た形をしている白い花のモチーフと、白猫の後ろ姿のモチーフだ。

二つとも、大きさは3~4㎝くらいの小さなもの。

白い花のモチーフの真ん中に丸い黄色のガラスを縫いつけると、店の看板にもあるマーガレットに。

白猫にいびつな形の黒と茶色のガラスを縫いつけると、三毛猫になった。

「わあ! かわいい!!」

「ミケとおなじ……」

「なるほど、廃材をこういう風に使われるのですね」

サラちゃんはお気に入りの帽子に、ケンタくんはお気に入りの鞄に、後日母親のマリアさんが縫い付けることが決まる。

喜んでもらえて良かった。

つい長居をしてしまったが、そろそろお暇をしなければ。

私たちが王都へ来たのは、女神様に元の姿に戻してもらうためだ。

本来の目的をすっかり忘れるところだった。

「おねえさん、今度中央ひろばで父さんとじいじのさくひんが、かざられるのよ!」

「来週、ガラス工芸の品評会がありまして、もし上位三位までに選ばれれば王城に置かれるのです」

「それは、すごいですね! 絶対に見に来ます!!」

「有名な工房も出品しますから、選ばれることはないと思いますが……」

「そんなことは、ありませんよ。ぜひ、頑張ってくださいね!」

品評会の日にちを教えてもらった私は、ミケをベビースリングに入れたまま冒険者ギルドへ向かった。

冒険者ギルドは中央広場のすぐ近くにあると、トムさんに教えてもらった。

ちなみに、王都で行くことはないと思うが、商業ギルドも同じ並びにあるらしい。

王都の冒険者ギルドも同じような石造りの建物だが、階数が違う。

トンポイやヘンダームの冒険者ギルドは三階建てだったのに、ここは五階建てだった。

こちらの世界ではあまり見かけない高い建物を見上げてから、中へと入る。

さすが王都だけに、冒険者の数が桁違いに多い。

トンポイでは閑散としていた時間帯も、びっくりするくらい人がいる。

私のような魔法使いっぽい人たちも、ちらほら見かけた。

⦅リサ、あれを見て。従魔だよ⦆

「あれは……コモドドラゴン?」

⦅オオトカゲだよ。この世界にドラゴンはいるけど、もっと大きいからね⦆

「ドラゴンがいるの!?」

異世界には、やっぱりドラゴンが実在しているらしい。

本物を見てみたい気もするが、凶暴なイメージがあるから遠くから眺める感じで。

⦅オオトカゲは嗅覚と視覚が優れていて、水の中を泳ぐこともできるんだ。攻撃は、噛みつきと尾による薙ぎ払い⦆

「へえ~、結構強そうだね」

⦅高ランク冒険者じゃないと、オオトカゲを従魔にすることはできないよ⦆

「そ、そうなんだ!」

勉強になったところで、受付へ向かう。

冒険者ギルドには、お金を下ろすことと、宿を紹介してもらうために来た。

きっと王都の宿屋は高いだろうから、多少現金を手元に置いておかないと心配になってしまう。

用紙に名前と下ろす金額を記入し、ギルドカードと一緒に提出する。

手続きに少々時間がかかるとのことで、待っている間に依頼票を見てみることにした。

朝でもないのに、依頼票が次々と貼り出されていく。

人口が多いから、依頼の数も多い。

そして、条件の良いものから続々と受注されていった。

⦅やっぱり、ここにもあるね……不人気依頼⦆

ミケは気になったらしい。

私もだけど。

Bランクの掲示板に貼られた風化した依頼票には『鉱山に住み着いたゴーレムの生息数調査。可能であれば討伐も』と書いてある。

依頼主は、ガラス工房組合とあった。

不人気の理由は、鉱山の場所が遠いこと。討伐対象がゴーレムだから。

ゴーレムは魔石の他に素材も売れるのだが、大きくて重いためアイテムボックスを持たない冒険者は敬遠するのだという。

⦅これ、ボクたちにぴったりの依頼だね? ガラス工房と知り合いにもなったし⦆

たしかに、そう思う。

飛行魔法で鉱山まで移動し、生息数を把握する。

私たちだけで対処できそうなら、私が捕獲魔法でゴーレムを捉えミケが風魔法で討伐すれば依頼は完了だ。

あとは、ゴーレムを丸ごとアイテムボックスで持ち帰ればいいだけ。

「受けようか?」

⦅うん!⦆

そうと決まれば、即行動あるのみ!

さっそく受注手続きをする。

鉱山へは、王都から馬車で三日ほどかかるとのこと。

「受けてくださって、大変助かります。ガラス工房の組合から『原材料が不足しているから、早く!』と何度も催促されていましたので……」

ゴーレムのせいで採掘作業が滞り、原材料不足になっていたのだ。

これは、急いで対処しなければ。

下ろしたお金も受け取り、冒険者ギルドを出る。

⦅暗くなるのを待って、王都から直接飛行魔法で向かうつもり?⦆

「よくわかったね? ゆっくり進めばレースの上で寝ている間に鉱山へ着くと思うから、ちょうど良いと思って。帰りも、そうするつもりだよ」

⦅……検問に並ぶのが嫌なだけでしょう?⦆

「ハハハ、ミケちゃんにはバレたか」

日が暮れるまでの待ち時間に、大聖堂へ向かう。

場所は、幌馬車で前を通りかかったときに確認をしておいた。

冒険者ギルドの目と鼻の先にある、綺麗な白亜の建物だった。