軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

212◇報酬タイム

目が覚めると、現実だった。

やはり頭がぼうっとするが、二回目だからか一回目よりマシな気がする。

「! レメさ――」

「エクス……ッ!」

ゆっくり身を起こす僕を抱きしめようと腕を広げたミラさんだったが、彼女よりも迅速に動いた人にビクッとし、固まってしまう。

「ん……あ、あぁ、アーサー……か?」

「良かった……! だがお前っ、いや、今はよそう……! とにかく、良かった!」

目尻に涙を浮かべながら、アーサーさんは現実に帰還した親友の肩を叩く。

「はぁ……まったく。お前ってやつはまったく頼りないリーダーだよ、まったく困ったものだ」

マーリンさんはまったく……と繰り返しながら杖でエクスさんを何度もぽすぽす叩く。

彼女も彼女で、とても心配していたのだろう。

ミラさんは勢いを失った両腕を、ゆるりと下ろした。

僕は微笑みながら、彼女の目を見る。

「ただいま」

すると、彼女も少々不満げな顔から一転、花のような笑みを咲かせるのだった。

「はいっ、おかえりなさいませ」

しばらく、僕らは見つめ合う。

「そうだ……! レメ!」

アーサーさんの声。

「ありがとう、レメ。心から感謝する……! この恩は決して忘れない」

「私からも、君の最良の選択に多大な感謝を送らせてくれ。礼は何が良い? 私に用意出来るものならなんでも用意しよう。なんでもだぞ、ふふふ……」

アーサーさんは涙ぐみながら、マーリンさんは自分の胸を押し上げるように腕を組みながら言う。

隣のミラさんから冷気が発せられた気がした。

「気にしないでください。お礼なら、もう貰いましたから」

エクスさんを見ると、丁度目が合う。お互い、満足げに笑う。

『うんうん、いい話だねー。こっちも楽しかったよ~。じゃ、そろそろ報酬の話に戻ろっか?』

どこからともなく再出現した光の塊から、声が聞こえる。精霊だ。

『クリア順に行ってみよ~! まずは腹ペコ褐色おっぱいちゃん』

フルカスさんがいつもの無表情で僕を見ながら、光の玉を指差した。

「破壊の許可、求む」

『あはは、無理無理。何度も言わせないでよ。えー、君はあれだね。武人としての高みと無尽の食欲に見事抗ってみせたね! 報酬は念じるだけでもいいし、口にしてもいいよ』

フルカスさんは槍を構えかけたが、精霊の言葉に再度僕を見た。

僕が頷くと、彼女もこくりと顎を引く。

『……ほーほー。いくら精霊でもそれは無理だけど、可能な限り理想に近い一品を贈ろう。これさえあれば、君は更なる力を発揮出来る……と、いいね!』

ぶわっと白い煙が上がったかと思えば、すぐに晴れる。

フルカスさんの足元に……銀色の大きな蓋――レストランとかで料理に被さってるやつ――が出現した。

フルカスさんが床に座り、蓋に触れて数秒止まる。

そして蓋を開けると、そこにはほわほわと湯気を上げる――ハンバーグがあった。

それだけではなく、パンとスープ、おまけに食器もついている。

『あ、見られても気にしないんだ。じゃあ言っちゃうけど、これは「なんでもドームカバー」って言ってね、蓋を下ろして食べたいものを念じると、それが蓋の下に収まるものなら再現出来るんだ! ――とは言っても空気中の魔力を掻き集めて作るから出来上がりまでの時間はまちまちなのと、味や食感は再現してるけど魔力だから栄養とかないんだよね。面白いでしょ!?』

フルカスさんは話を聞いていない。ハンバーグに夢中だ。

『味は自分の記憶次第だから、大好きなご飯を好きなだけ食べられるよ。出来れば魔力の濃いところで使ってね……ねぇ、この話してる間に十回くらいおかわりしてない……?』

一瞬で料理を平らげると、フルカスさんは一瞬で蓋を下ろして上げる。この繰り返しだ。

話を聞く限り満腹感を得られるだけで得はないように思えるが……それは 人間(ノーマル) の場合。

フルカスさんの種族は鬼。食べたものを膂力や再生能力に変換してると考えられる。

もし、魔力の塊を腹に入れたとして、それも変換出来るなら……?

いや、出来るのだろう。

魔力を食べ物の形に練り上げるという本来なら無駄極まりないひと手間も、鬼という種族にとっては有用なのだ。

……しかしこれ、明らかに魔法具なんだけど、精霊の持ち物なのか、今作ったのか。

後者だとすると……人類の常識が引っくり返ってしまう。

だって、魔法具を創ることの出来る種族が滅びたから、もう新しい魔法具は創られない筈なのだ。

すると精霊が『そんな心配は無用だよ』と笑う。

……心を読んだのか。

『お次は、僅差で二位のキラキラ【聖騎士】くん! 「夢は叶えるものだ、精霊に見せられるものではない」なんてキリッとした顔で言い切ったから驚いたよ。しかも本心だし。で、何欲しい?』

「不要だ。邪悪な精霊よ」

『精霊に善も悪もないし、契約は絶対でーす。勝手に心読んじゃうからいいよ。……げっ、無欲過ぎ。君何歳……? そんなぴかぴかの心した良い子ちゃんだから、友達の翳に気づけないんだぞ……?』

アーサーさんが聖剣の柄に手を掛けた。

『ちょっと、君たちみんな短気だなぁ。……あ、剣か。いいね、じゃあ君へのご褒美は~これ! 「魔法の鞘」だよ。聖剣をこの鞘に収めている間、所有者は傷を負わないっていう超便利な能力! いやぁ、すっごいのきちゃったねぇ』

「……戦闘中は剣を抜いて戦うだろう」

『うふふ』

また煙が出て、それが晴れたらアーサーさんの前には鞘が出現していた。こういう魔法具の場合、サイズは自動調整されることが多い。きっとこの鞘もそうなのだろう。

能力はすごいが、条件もあって使い所は難しそうだ。

『次行ってみよう! えー、あー……君かぁ。キツ目のオタクちゃん』

精霊がちょっと嫌そうな感じで言う。

「刻みますよ?」

『おー怖っ。一番怖かったのは夢の中の【黒魔導士】くんに本物の魅力を説いてダメ出しを始めたことだけどね』

「ちょっと貴方……! プライバシーを尊重してください……!」

ミラさんの顔がちょっと赤い。

『君は欲望塗れだなぁ……大体はそこの【黒魔導士】くんに貰えば済みそうだし』

「黙っていただけます? 違いますからねレメさん、私は別にレメさんの使用済みが欲しいとかそういう邪な思いは一切抱えていませんから……!」

精霊をキッと睨んでから、真っ赤な顔で弁明するミラさん。

「う、うん……」

使用済み……? 詳しくは聞かないでおこう。

『んー。わざわざこっちがあげるようなものを欲してないなぁ。……あぁ、一つあった。ふぅん……君は本当に【黒魔導士】くんのことが――』

「いい加減、怒りますよ……?」

『はいはい、ぷらいばしーね。じゃあほいっと』

すると、僕の体が光に包まれた。

すぐにそれは収まるが、特に何か変わった様子はない。

『叶えたよ』

「……ば、ばればれではないですか、これでは何も隠せていないのと同じです……!」

『えー、でも人間はなんか光ったりもくもくしたりする演出が好きなんだろ? なかったらないで味気ないとか思うくせにー』

「……ぐっ。なんて不愉快な精霊なのでしょう……!」

ミラさんはバレバレと言ったが、僕はちょっと考えても分からなかった。

彼女が僕を見て、なんとか笑おうとするも、羞恥が勝ったみたいな顔をする。

――あ。

僕はそこで、彼女の願いに気づく。

胸が熱くなり、自然と彼女を見る顔が綻んでしまう。

『じゃあ次~。あ、夢見るむちむち【魔法使い】ちゃんか』

「報酬をくれると言うなら貰うとも」

『いいね! 欲しかったのはこういう反応だよ! 君の場合は~、そうだね、これにしよう』

一瞬、マーリンさんの持つ杖が光り輝いた。

『加護を与えたよ。君が使う限り、その杖は瞬時に魔力を圧縮し、伝導する。杖を使うデメリットを消して、メリットを強化した感じだね! 嬉しいだろ~』

「私の一番の目的については?」

マーリンさんは、幼い頃に見た精霊との再会を望んでいる。

『無理。君の記憶覗いたけど、あれが誰かなんて分からないよ』

「……そうか」

『だから杖強化してあげたでしょ?』

「正当な報酬なのだろう?」

『そうだけどー。まぁいっか。そろそろ飽きてきたけどー、次。君は――』

「シトリーの欲しいものを、頭の中に思い浮かべればいいんだよね?」

精霊の声を遮り、シトリーさんが言う。

いつも通りニコニコしているが、どこか笑顔が固い気がした。

『……だね。願いたまえー。ふむふむ、よかろー。叶えてしんぜよー』

もくもくと煙が出てきて、すぐさま消える。

現れたのは、絵本だった。表紙はない。

シトリーさんが捲るが、中も真っ白のようだ。

『それは「小人の住む絵本」だよ。君が欲しいものを願うと、ページに材料が書かれるんだ。で、最後のページをめくったとこだけ真っ黒になってるでしょ? そこに材料を置くと呑み込むから、あとは一晩待つと、次の日の朝には本の上に欲しかったものが出来上がってるってわけ!』

「……へぇ」

『君の頭の中の「可愛い」を全部具現化しちゃえ! 「こういうのが欲しい」ってイメージをピンポイントで叶えちゃう優れものだね! ちなみに君が心から欲してないと、材料は浮かび上がってこないし何も呑み込まないから気をつけてね』

材料が必要なのは、後にも残すためだろう。

フルカスさんのドームカバーのように魔力でものを作成することも可能だが、それだと短い時間で消えて霧散してしまう。

「そっか」

シトリーさんは可愛いもの好き。

彼女の変身能力を思えば、戦闘に必要な能力はその都度自分で用意出来るというもの。

日常で使える魔法具を欲するというのは、頷ける話だった。

『反応薄いなぁ。でー、次はへんてこオモシロ【黒魔導士】くん……の願いは叶えたからー、見た目も魔法も心も黒に染まっちゃってる【勇者】くんかー』

「随分と言ってくれるね……」

『一度は脱落したとはいえ、なんとか持ち直したからね。報酬はあげるとも。何が良い?』

「ならば、私の願いの権利でレメの願いを叶えてほしい」

えっ、と声を上げるも、二人の会話は進む。

『えー? いいのかい? 君の夢を叶えるには、便利なアイテムが必要なんじゃない?』

「必要なものは、既に揃っているよ。仲間と、聖剣一つあればそれでいい」

エクスさんは清々しさを感じる笑みを、精霊に向けて言う。

『……あらあら、浄化されちゃって。本心みたいだし、うん、いいよ。でもなぁ、オモシロくんには嫌われてるからな~』

精霊は僕の回りをくるくる浮遊しながら、拗ねたように言う。

『君が許すなら、加護とかあげちゃうんだけどな~』

「君を許すか決めるのは、僕じゃなくて迷惑を掛けられた村の人々だよ。僕は、君を好かないだけだ。それでも願いをと言うなら」

エクスさんが僕に権利を譲渡した以上、使わないのは彼に失礼というもの。

……彼がこうすると思ったから、夢の世界で彼の全力をねだったという部分もあったのだが、彼には見抜かれていたようだ。

その上で、願いの権利も礼代わりに渡すというのなら、ありがたく受け取ろう。

だからといって、この精霊に勇者への道を助けてもらおうとは思わない。

『……言うなら?』

僕は一瞬、ミラさんを見た。

彼女はふるふると首を横に振る。僕が何を言うか分かったらしい。

きっと彼女が願ったのと同じことを、口にする。

「僕の大事な人達が、健やかに暮らせますように」

『~~~~っっ。うふふ。あははっ。君ほんと愉快な子だなぁ』

「精霊の叶えられる範囲を超えているかい?」

『まさか……! ただ、調整が必要かな。対象には弱めの加護を与えるよ。大事な人だと君の場合範囲が広すぎるから、そうだな……愛する人にしようか。精霊様にはなんでもお見通しだから……うん、この人数なら大丈夫』

精霊はくすりと笑うと、続けた。

『君の愛する人は、病気になりにくく、不運に見舞われにくく、絶望に襲われにくくなる。ただこれは不条理に抵抗する加護で、幸福の確約じゃあない。たとえば人から風邪をもらいにくくなるけど、自分で肉体を酷使した結果弱って風邪を引くことはあるよ』

加護と言っても色々ある。

現代では主に精霊が【勇者】に与える聖剣や精霊術を指すが、本来は天上の存在が与えてくれる様々な力を意味したという。

だからこそ、アーサーさんのように未契約のまま加護を得る存在も矛盾しないのだ。

いわゆる幸運な人というのも、何かしらの存在から加護を得ているのかもしれない。

「それで問題ないよ」

『……本気みたいだね。叶えたよ。あ、クレームが入ったから光る演出は無しになりました。あーあ残念だね』

そわそわしていたミラさんの周囲を飛びながら、精霊がそんなことを言う。

「くっ……」

『あはは。文句言わなかったら自分がぴかっと光ったかもしれないのにね~』

「ぐぬぬ……」

ミラさんは悔しそうな顔で精霊を睨む。

『それじゃあ、おしまい……! ちなみにまだまだ他の参加者は受け付けるけど、二回挑戦とかは出来ないからね』

そう言って、光の塊が消えた。

「最後まで真の姿を我々には見せなかったな……。まぁいい、帰るか」

マーリンさんがつまらなそうに言う。

みんなを見回すが、精霊に与えられたものを抱え、帰る準備を整えていた。

『うん、君以外には見えてないよ』

……やっぱり、そうか。

光の塊は消えたが、同時に黒い……ひよこが現れた。

小さな翼をぱたぱた動かして跳ぶ様は愛らしいが、中身があの精霊だと思うと複雑だ。

『好きでしょひよこ。君とは第一印象……いや試練の前まではいい感じだったらしいから……第二印象かな。第二印象が悪かったみたいだから、まずは見た目から君の好みに合わせようかなーと』

僕からの印象なんてものをこの精霊が気にする理由が分からない。

あと何故ひよこを好きだと思ったのか……。

『本当に理由が分からない……?』

…………。

さっきも言ったけど、僕は――。

『人に迷惑掛ける精霊とは、勇者になれない? あーそう。けどね、くだらないよ。四大精霊だって最初から人の味方だったわけじゃあない。君の親友の精霊だって、人に迷惑掛けたことはあるんだよ? 知らなかったからセーフなの? それとも知った瞬間、親友は勇者失格?』

――だとしても、火精霊は長い時間を掛けて人類の味方であると証明した。君は?

『君の人生分くらいは掛けてあげるよ。こっちを人に迷惑掛けた精霊で終わらせるか、【黒魔導士】の勇者の味方をした精霊にするかは、君次第ってわけ』

――どうして、僕なんだ。

『ダンジョン攻略を覗き見るのが昔から好きなんだけど、君みたいのがどうなるのか興味があるんだ。精霊なんて、みんなそんなものだよ。好奇心で生きる存在さ。【勇者】との契約だって、その人間がどう生きるか見たいかどうかで決めるんだから』

精霊の契約基準については、僕より精霊の方が詳しそうだ。そう言うなら、そうなのかもしれない。

――【勇者】じゃなきゃ精霊との契約には耐えられないというのが、人類の常識なんだけど……。

『それは大体合ってるね。君とは契約したくても出来ないよ。努力ではどうにもならない問題だ』

【勇者】は規格外。

【魔王】持ちでもなければ、単騎で勝つなどよほどのことがなければ不可能な相手。

本来、精霊術の行使に人の身は耐えられない。

それに耐えられる特別な人類が、【勇者】なのだ。

『肉体強度は並以下だし、角の定着に複数の術式が使われてるしで、もし無理に契約なんかしたら肉体が耐えられないだけでなく術式に干渉して……うふふ、体がパーンッ、だね』

なんでちょっと楽しそうなんだろう。

とにかく、僕は精霊と契約出来ない。

なのにまるで契約するふうなのは一体……。

――もしかして、アーサーさんみたいに……いや、ちょっと待ってくれるかな。

『え~~? パパから貰った剣って、質はあれでしょ? 精霊の加護が宿ればたちまち聖剣だよ?』

聖剣は精霊の加護を宿した武器だ。元は錆びていたって構わない。加護で聖剣に相応しい武器へと変化する。

――質は関係ないよ。この剣がいいんだ。

『性能は大事でしょ? 仮にも勇者を目指しているんだから、武器の良し悪しがどうでもいいなんて、言えないよね?』

……。

今回、この剣を使用する場面はなかった。僕は後衛だし仲間も優秀なのでおかしくはないのだが、実際使ったとしてもこのダンジョンの魔物には通じなかっただろう。

もし巨人に斬りかかったら、どんな剣聖が使ったとしても一度で折れてしまった筈だ。

僕にとってとても大切で、象徴的なものでも、武器としての価値を言われると反論出来ない。

『【魔王】の角を継ぎ、黒魔術を習得した人間くん。その才能の無さでよくぞここまで頑張ったね。頑張ったのに、辛いことばかりだね。パーティーは追い出されて、うふふ、今度は危険人物か疑われてる。嫌になっちゃうでしょう? でも、君はその解決は願わなかった』

……精霊に願えば、この状況もなんとかなった……のか。分からない。

だがこの言い方からすると、出来たのだろう。

僕への疑いが晴れ、誰の目を気にすることもなくレメゲトンとして働くことが出来る未来への道筋を、精霊なら整えてくれるのかもしれない。

そんなこと、考えもしなかった。

『そんなところも気に入ったよ。けどなによりも――君の攻略と防衛は、面白い』

「――――」

悔しいことに、相手がこの精霊でもそう言われるのは――嬉しかった。

『というか、加護は勝手に与えられるし、契約出来ないんだから君はこっちを縛れないんだけどね? 飽きるまでうろちょろするから、よろしく……!』

――結局、そうなるよな……。

精霊とは自由な存在だ。最終的にはやりたいようにやる。

僕はみんなと一緒に転移用記録石に向かいながら、溜息をこぼした。

――人に迷惑を掛けないように。

『君が楽しませてくれる限りは、そうなると思うよ』

ぽぅ、と剣に何かが宿るのを感じる。

僕の気持ちを汲んでか、父にもらった剣の形を保っている。聖剣はそれっぽい造形に変化することが多いのだ。

だけど、僕はこれがいい。

『使いたくなった時に使うといいよ。ちなみにこのダンジョンはもう何日かしたら消えるんじゃないかな。追加のモンスターも出ないから』

ダンジョン維持に魔力を使うのをやめるということか。

試練への参加を受け付けるとも言っていたが、ダンジョンが消えるまでの数日間のみって感じかな。

「はぁ……うぅん」

「レメさん、どうされたんですか?」

隣を歩くミラさんが、不思議そうな顔でこちらを見る。

「あぁ、うん、後で話すよ」

「そう、ですか。分かりました。あとで聞かせてくださいね? ――先程から誰と話しているのか」

「えっ」

『こっちは見えてないよ。ただ君のことをよく見ているだけだね』

「ふふ」

ミラさんの微笑みに、なんとか笑顔を返す。

黒ひよこが、僕の頭の上に乗った。

精霊契約者でも、精霊との関係に苦労すると聞くのに……僕の場合は縛りも何も無い。

かくして僕は、【黒魔導士】で、【魔王】の片角を継承し、黒魔術を教え込まれ、魔王軍参謀として働き、聖剣を得た――精霊憑きになってしまった……。