軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

118◇炎と湖

「今世間の注目を集めているレイド攻略復活ですが、ずばりフェニクスパーティーの皆さんには打診などあったのでしょうか?」

宿の一室を使ってのインタビューだった。今日は、冒険者情報を扱う雑誌に載るものだったか。

「興味はあるか、という話ならば一度」

私が答えると、眼鏡を掛けた記者は目を輝かせた。

「ほうほう! しかし現状を見るに、辞退されたということでしょうか?」

「我々は一度、魔王城攻略に失敗しています」

「人類の最高到達地点が第七層であることを考えると、快挙と言えるでしょう。記録を大幅に更新したわけですから」

かつて冒険者は、魔王城の第七層まで到達した記録がある。

しかし、階層情報はフロアボスが変わると更新される。

魔王城の各フロアの紹介は、攻略された分だけホームページに公開される。

私達の攻略前までは、第三層までしか明らかになっていなかった。

四層以下のフロアボスは変わっているということ。他の冒険者が到達したというだけで、第三層までも同じ。

つまり、過去と現在では次層への門番たる魔物が異なるのだ。配下でも同様のことが言えるだろう。残っている者もいるだろうが、去っていった者や新しく入った者が多い。

記録を更新したから、自分達がそれ以前の冒険者達よりも優れている、とは思えない。

「力不足を実感した攻略でした。それでも私はこのパーティーで魔王城を攻略したい」

「なるほど。ではレイド攻略に参加されるパーティーについてはどうお考えですか?」

「『湖の勇者』レイス殿とその仲間に関しては面識がないのでなんとも言えませんが、みな素晴らしく優秀な方々だと思っています」

「複数パーティーでダンジョンに潜ることに関しては?」

「魔王城がそれだけ攻略難度の高いダンジョンということでしょう。実際あそこは各層ごとに特色が異なるので、様々な【 役職(ジョブ) 】を揃えておくのは有効かと。我々がパーティー単位での攻略を選んだからといって、それが正しいと考えているわけではありません」

「世間的には、冒険者側が勝利を収めるだろうという意見が多いようですが……」

かつてレメの師が魔王だった時代、まだ若かった【嵐の勇者】エアリアルさんを含めた複数パーティーを第一層で全滅させたことがある。

冒険者ファンの間では有名な話だが、この場合の『世間』とはライト層や普段はダンジョン攻略に興味の薄い者達まで含んでいるのだろう。

メンバーがメンバーだ。そう思うのも無理はない。

「彼らの勝利を願っています」

「今回、第二位パーティーも不参加ですが、これは同様の理由なのでしょうか?」

「そのご質問は、本人達に」

「すみません、そうですね。では次に、みなさんは現在この街に――」

そうしてインタビューは続き、問題なく終了した。

「あー、だりー。パーティーでのインタビューってフェニクスばっか質問されんだからよ、オレら要らなくね?」

「写真とか撮った後は、まー放置に近いよね。そのあたり上手い人もいるけど」

「何もせずにお金が貰えるなら、良い仕事だと思いますけど」

【戦士】アルバ、【聖騎士】ラーク、【氷の勇者】ベーラが口々に感想を述べる。

「んじゃあ行くか」

「そうだね。フェニクスとリリーは、本当に来ないの?」

ラークの問いに、私とリリーは頷く。

私達は現在、魔王城のある街に来ていた。

というのも、レイド戦メンバー達から連絡が来たのだ。

彼らも魔王城攻略に本気。

経験者の話を聞きたいとのこと。

もちろん歴戦の猛者達。一方的に頼ってくることはない。

彼ら程の者となれば、アルバ達の動きがレメ脱退後から変わったことなどお見通し。

言ってしまえば、より強くなる為に指導、あるいは訓練、もしくは手合わせ。

エアリアルさんは後進の育成に積極的だが、彼も現役。こういう機会が貴重なことに変わりはない。しかも今回は三位と五位もいるのだ。

「えぇ、人と逢う約束があるので」

「あ? 男でも出来たか?」

「仮にそうであっても、貴方には関係ないことですね」

「ちっ、まぁどうでもいいけどよ」

「リリーはスーリさんに逢うのが嫌ってのもあるんじゃない?」

「【無貌の射手】、でしたか。リリー先輩と何かあったのですか?」

「何もありませんよベーラ」

ベーラに微笑みかけつつ、ラークを牽制するように睨めつけるリリー。

「で、フェニクスは?」

「私も同じだ。それに……鍛錬ならば積んでいる」

「最近一人でこそこそ練習してるやつ? 気になるね」

「君達には明かすさ。完成したその時に」

私達は宿で分かれ、それぞれ変装――と言っても私とリリーはフードを目深に被るだけ――しながら目的地へ向かう。

「わたくしとフェニクスが同じ人物に逢うとは、誰も思っていないようでしたね」

「私が誰と逢うかの方は、みな想像がついていたからではないかな」

此処は魔王城のある街。

魔王軍参謀レメゲトンは、【黒魔導士】レメだ。

彼は我々を退けた戦いの後で、別の街に向かう我々の見送りに来てくれた。

そこで指輪を使って配下を呼び、仮面を被ってみせた。

次もまた全滅させるという言葉と共に、我々に正体を晒した。

私とベーラは気付いていたが、他の三人はそこでレメゲトンの正体を知ったわけだ。

なので、私がこの街で誰かと逢うと言えば「あぁレメね」と考えたのだろう。

リリーがそれについていく理由が無いので、別々の用件と思ったようだが。

「それで、レメは何処に?」

「あぁ、とある酒場だ。大丈夫、場所は知っている」

第十層挑戦前夜に、レメと行った場所だ。

人通りの少ない道を選びながら、目的地へと向かう。

「あうっ」

と、小さな声がした。気がした。

「フェニクス?」

「……少し此処で待っていてくれ」

「いいえ、今の声ですね? 共に行きましょう」

リリーはフードの奥で、柔らかく微笑んでいる。

「あぁ、では行こう」

先程のは、子供の声だ。昔、よく聞いたことがある。主に私から発せられたもの。

いじめられっ子が、胸ぐらを掴まれたり押されたり小突かれたりした時に、口から溢れる声。

もちろん、私の考え過ぎならばそれでいいのだ。それがいいのだ。

だがもし考え通りなら、無視出来ない。

通路を何度か曲がり、発見。

だが想像していたのと、状況が違った。

「嫌いなんだよね、力の信奉者のフリをした雑魚ってさ」

おそらく被害者であろう線の細い少年が、ぼんやりとした顔でそれを見上げている。

彼の服は胸元にシワが出来ており、先程まで掴まれていたことが窺える。

宙に浮かんでいるのが、おそらく加害者だろう。

混乱し慌てつつも、その手には奪ったと思われる財布が握られていた。

そして、第三者。加害者を宙に浮かせて笑っているのが。

最近 映像板(テレビ) で見たことがある。

【湖の勇者】レイスだった。