軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.秋のハンター祭りのお知らせとがんばるヒヨコたち②

とある日、智と美奈子ちゃんが男子を連れてきた。ハンターコースの男子で強くなりたいんだとか。

「千葉といいます」

彼はペコっと頭を下げた。長身ですらっとしてるけど腕を見る限り筋肉質っぽい。俺よりも背が高いし、いいなぁ。うらやましい。

「師匠には話を通してあります」

美奈子ちゃんがずずっと割り込んでくる。俺は聞いてないけど?

「問題なければいいけど」

「一応、誓約書は書かせました」

カバンから誓約書を取り出して見せてきた。でかでかと秘密保持契約書と書かれている。これ、美奈子ちゃんが用意できないやつでしょ。

「京香さんも知ってる感じ?」

「瀬奈先輩も知ってます!」

「知らぬは俺だけなり……ふたりが承知してるなら大丈夫……かな?」

千葉君を見る。何か起こったらお仕置きしよう。二度とする気が起きないように。

彼がプルプルしだしたけど、トイレかな。

「俺から言うことはないけど、今後は事前に話が欲しいなぁ」

一応ギルド長だしね。

守と佐倉と別れた千葉は、四街道に連れられて墓地を歩いている。

「あの動画と同じだ」

「そりゃそうよ。だってここだもん」

「いやー、映像と同じ場所にいるって、なんか感動だなってさ」

「わからなくもないけど」

「今の人がユニークスキル持ちの人だろ? 獄楽寺ギルド長の」

「守さん、通称おにーさんね。人畜無害そうに見えても魔王だからね。怒らせたら誰も止められないから変なことは、特に智を馬鹿にするような発言はしないで」

四街道が千葉を睨む。佐倉は親友でもあり、墓地ダンジョンにおいては師匠よりも強いのだ。

「しねえって。佐倉って勝浦遠征の時も、誰も置き去りにしないように一番後ろにいて、転んで岩場に落ちた寄居を抱っこして走ったろ? 俺にはとてもじゃねえけどできねーことだ。すげーのはわかってる」

「ならいいけど」

「それに、さっき『おにーさん』に睨まれた時、本気でちびりそうだった。今もちょっと腕が震えてる」

千葉が鳥肌が立っている腕をさする。守は無意識に威圧していたようだ。

しゃべっていればビニールハウスに到着する。

「おお、ここも動画の通りだ」

「ここだって言ってるじゃん」

四街道は「何を言ってるんだお前は」というジト目を向ける。さっさとビニールハウスに入ってゲートを過ぎて階段を降りた。「ちょ、まってくれよ!」と千葉も後に続く。

「うわ、ここも動画通りだ」

千葉の独り言を四街道は無視した。階段を降り切ったところに、武者姿のショタ零士が腕を組んで待っていた。

「千葉。この子が師匠よ」

「師匠!? この小学生が!?」

「そうよ」

四街道が零士の横に立つ。

「師匠だ。俺の名は伏せるがな」

小学生くらいの零士に言われ、千葉の顔がゆがむ。

「気持ちはわからんでもないが、まぁ思い知らせてやる。剣をとれ」

あらかじめ持っていたなまくらな剣を千葉に 放(ほう) った。ガランと千葉の足元に転がる。

「好きに斬りかかってこい」

素手のショタ零士が不敵に笑う。

「わたしは邪魔しそうな骨を狩ってます」

「頼む」

四街道はダンジョンの墓地をうろついているゴブリン骨を狩り始めた。

放置された形の千葉は剣を拾う。

納得はいないがこいつが師匠らしい。鎧を着たへんてこなガキだけど、立つ姿は堂々として身長以上の存在感がある。少なくとも、俺よりは強えぇ。

雑念を吹っ切った千葉は正眼に構えた。

「正中線が甘い。やはり体ができてないな」

そう言いつつショタ零士が歩いて千葉に近づく。無防備に近づいてくるショタ零士に動揺する千葉だが「かかってこないならこっちから行くぞ」と煽られ正眼から突きを繰り出す。

「思い切りはいいがな」

ショタ零士はわずかに体をそらして突きをかわし、その刃の腹をこぶしで殴る。

急に剣がそれた千葉はその場でたたらを踏んで体勢を崩し、その隙にショタ零士に足を払われ派手に転んだ。

「いてぇぇ!」

「次だ」

ショタ零士は間合いを取りなおす。

「おい、いつまで転がってるつもりだ?」

「な、何をされたんだ?」

「わかるまで転がしてやるぞ。かかってこい」

「く、くそっ!」

千葉は立ち上がるとその勢いのまま斬りかかった。上段から落とした剣は、やはり途中でショタ零士に殴られる。またも体勢を崩した千葉は同じように足払いで転がされた。

「早く立て! 強くなりたいんじゃないのか?」

砂にまみれた千葉は言われるがまま立ち上がる。

なんだこいつは。剣を振ってよけられるまではわかるけど、その直後に剣が弾かれる。そして転がされる。

零士のパンチが早すぎて千葉には見えないのだ。

「クソ! ワケが分からねえ!」

その後も斬りかかっては転がされ、時にはデコピンで吹き飛ばされた。体は打撲だらけで制服も砂だらけだ。デコピンを受けた額からは血も流れている。

それでも千葉は立ち上がった。が、膝が笑い、地面に崩れ落ちた。

「チクショウ、足が言うことを聞かねえ!」

「根性はありそうだな」

何とか立ち上がろうともがいている千葉の様子に、ショタ零士が感心している。

「これしきで動かなくなるようじゃ話にならん。お前は剣に 振(・) ら(・) さ(・) れ(・) て(・) る(・) から体勢を崩されて転ぶんだ。剣を振る前に体を作れ」

「ぐ……いててて」

千葉が大の字に寝てしまった。もう限界だった。

「美奈子、守を呼んできてくれ」

「はい師匠!」

ゴブリン骨を狩りつくして暇していた四街道はタタっと階段を駆けて行った。

美奈子ちゃんが呼びに来たのでダンジョンへ向かう。コテンパンにされたって言ってたけど、どこまでやっちゃってるのかな。

ダンジョンの階段を降りると、砂だらけで大の字に転がってる千葉君と、墓石に腰かけてるショタ零士くんがいた。美奈子ちゃんは母屋で待機だ。

「いい感じでやられてるねぇ」

顔にもあざがあるし、額から血も出てるし。ポーションを取り出して彼のわきにかがむ。

「立てる?」

「ムリっす」

「じゃあ先にこれ飲んで」

ポーションを渡せば、まじまじと見てから飲んだ。額から流れてた血が止まった。後でシャワーを浴びさせよう。彼を座らせて、ちょっと雑談だ。

「千葉君はなんで強くなりたいの?」

理由を聞いてみる。わざわざ来たんだからないとは思うけど、悪いことに使うんだったら断るつもり。

「あー、誰にも言わないでください」

と前振りした千葉くんがぼそぼそと話し始めた。

「好きな子がいて、その子を守れるくらいには強くなりたいんすよ。ただ問題があって、そいつが俺よりも強いんで、今のままだとダメなんすわ」

「なるほど。だから強くなりたいのか」

「強くなるっつーか、そいつを守れればいーだけなんですけど、イコール強くなるってことなんですよ」

いいねぇ。男の子してて。

千葉君が「よっと」と起き上がる。

「名前を聞いてなかったな」

ショタ零士くんが聴く。名前も聞いてないんかい。

「千葉武志っす。先ほどは疑ってしまい、大変失礼しました」

千葉君は深々と頭を下げた。零士くんの強さもわかったろう。

「千葉、まずお前がやることは、体幹を鍛えてどんな時でも姿勢を保てるようにすることだ」

「それって、四街道が勝浦の時にやってたやつです?」

「そうだ。まずは重りなしで超ゆっくりラジオ体操をやってみろ。体がぶれなくなったら1キロの重りを手にもってやるんだ」

「……うす」

「それとランニングと筋トレで体を作れ。レベルが上がれば筋力も上がるが、それは基礎的な筋力に比例する。つまり、レベルが上がっても基礎的な筋力や体力がなければランクが下の魔物にも負けて死ぬ」

「死にたくないです」

「ランニングも毎日しろ。最初は1キロでもいいから走り切れる距離にして、慣れたら距離を延ばせばいい。筋トレも腕立てとか腹筋で十分だが回数を増やせ。見せる筋肉は不要だ。使える筋肉があればいい」

「うす」

「素振りをするなら、ゆっくりでいいから剣をまっすぐ落とせるように振れ。勢いでごまかしても魔物には通用しない」

「うす!」

「スキルありきの戦術は強い魔物と戦うときに崩壊する。まずは以上をこなせ」

「あざっす!」

「あと、俺のことを口外したら命はないと思え」

「しません!」

わからせは終わったらしい。

「千葉君。砂だらけだし、シャワーを浴びていきな。ついでにご飯も食べていけばいい。帰りは駅まで送っていくし」

「え、悪いっすよ。くそ高いポーションまでいただいて」

「服も砂だらけだし、洗って乾かそう」

ぽむっと彼の背中をたたく。こんなシーンにあこがれてたんだよね。女の子にしたらセクハラになっちゃうしさ。

夕食時に父さんが「お、今日は男の子もいるのか。うむうむ」なんて、ちょっと嬉しそうだった。