軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

22.秋のハンター祭りのお知らせとがんばるヒヨコたち①

10月も半ばに差し掛かるころ、学校では『ハンター祭り』のお知らせが配布された。某パンになぞらえて『秋のハン祭り』という二つ名がある。

「来月の15日に毎年恒例のハンター祭りが開催される。今年が最後だ。あと一か月しかないぞ」

担任のおっさんがプリントと招待券を配って回る。ハンター祭とは、普通科の体育祭に近い。だが種目は全く違う。まともではない。

「今日は参加する種目を決めるぞー。希望の競技の下に名前を書いてけー。最低でもひとり1種目だ、相談しあってもいいぞー」

担任は黒板に競技種目を書いていく。100メートル障害物競争(15名)、綱引き(全員参加)、棒倒し(全員参加)、射撃(4名)、闘技大会(8名)。

佐倉は何に出ようかと悩んでいた。

闘技大会は無しだし、射撃もなー。

「トモはなにデル?」

「智はもちろん闘技大会だよね」

柏と四街道が席に来た。

「あたしが闘技大会とか無理でしょよ。無難に障害物かな」

「そーかなー」

「美奈みたいな戦闘スキル持ってないもん」

「えー、出ようよー」

この会話は生徒の半数以上が聞き耳を立てている。なぜなら、勝浦ダンジョンで四街道の強さが知れ渡っているからだ。その四街道が出るならば勝てる見込みがないが、佐倉も出場してつぶしあえばワンチャンと望んでもいる。

「わたしは出るよ」

ポニーの品川が黒板の競技の下に名前を書いている。「よっしゃ出るか!」とポニーの足立も名前を書きに行った。

「よし、俺も行くか」

男子の千葉が立ち上がると「おお!」と教室がどよめく。

「なに? 千葉も出るつもり?」

「いーじゃねーか。腕試しだよ」

先に名前を書いた品川が絡んだ。「じゃあ俺も」と大柄マッチョの市原も黒板に向かう。

「智、枠が埋まっちゃう前に書かないと!」

「あたしが出るの決定事項なの?」

黒板前に生徒が集まり始める。

例年は参加者が集まらなくて困っている闘技だが、今年はすんなり埋まりそうだと、担任はほっとしている。

「わたくしも出るわ」

黒髪美人の寄居がカツカツと黒板に向かう。「寄居が?」と意外だったことを示す声も聞こえた。

黒板前には 品川、足立、千葉、市原、四街道、佐倉、寄居が集まっている。

「あとひとりだぞー」

「柏は出ねーの?」

「アーシは射撃ダゼ」

「おらー男子いねーかー」

「んー」

「無理だろ」

男子の反応は鈍い。今年は女子が強く、剣術や体術の授業でやられっぱなしだったのだ。

なので闘技に出ても負けるだけだと考えている。出る以上勝ちたいのは誰しも同じだ。

「しかたないなぁ」

手を挙げたのは学級委員の成田だ。

「勇者だ!」

「さすが学級委員だぜ」

黒板に向かう成田に称賛の声がかかる。

「よし決まったな」

品川、足立、千葉、市原、四街道、佐倉、寄居、成田。対戦相手は当日決めるので対策もできない。

その他の競技も決まり、担任は満足そうな笑みを浮かべ教室を出て行った。

「四街道、ちょっといいか」

千葉が四街道に声をかける。四街道は「なに?」とそっけない。割と男子には塩な四街道だ。

「勝浦ダンジョンの時、魔物をばっさばっさ倒しててすげー強かったじゃん。あれは何でだ?」

「師匠に教えてもらってる」

「師匠か。朝にやってたあの奇妙な体操もそうなのか?」

「そうよ」

「そうか……俺もその師匠に教えてもらうことってできないかな」

「なんで?」

「いやその、女子がつえーじゃん。このままだとハン祭りも男子がボッコボコにされちゃうじゃん」

「うーん」と考える四街道。

千葉(こいつ) を口実に自分も師匠に強請ろうかな、という不埒な考えが浮かぶ。

「聞くだけ聞いてみる」

「すまん、頼む」

最大級のお辞儀をする千葉。その様子を見ていた品川は口をとがらせて微妙な顔をしていた。

授業も終わり、部活のないハンターコースの生徒は帰宅部だ。ポニーの4人と千葉含む5人の男子が学校を出て駅へ向かう。

勝浦の海辺でビーチバレーをしてからよく話すようになり、こうして下校時に一緒になることもあった

集団の中にいる品川がツインテールを揺らしながらすすっと千葉の横に並ぶ。

「千葉、あんたって四街道が好きなの? あの子はライバルが多いよ」

「いきなりなんだよ品川」

「さっき何か話してたじゃん」

「あー、お願いごとはしたけど、そんなんじゃねーよ」

「そんなのって何よ」

「そんなのは、そんなのだよ」

濁す千葉に品川が絡み続ける。海での告白まがい以降、こっそり遊びに行くことはあるが付き合うまではいっていないふたりだった。

周囲もふたりがいい感じなのはわかっているので茶々は入れずヌルっと見守っている感じだ。

珍しく四街道が単身で寺にきて零士に相談をしていた。夕食を食べたあと、本堂前の階段に並んで座っている。なお、小学生くらいのショタ零士である。

「女子が強すぎだから教えてくれ、か。お前たち3人に あの4人(ポニー) じゃそうなるな」

「船橋ダンジョンだと魔物が少なくて鍛錬にならないんですよー」

「それはあるだろうな。お前らはここでいくらでもわいてくる魔物と戦えるが、学生の身分じゃハンターの付き添いが必要だしな」

ショタ零士が「ふーむと」腕を組む。彼としても最初から基礎的な鍛錬をしたハンターが増えるのは望ましいことだと考えているが、そうすると今の自分をさらすことにもなる。今の自分は死んだはずの『ナニカ』であり、あってはならない存在だ。

「今の師匠の姿なら、ちょっと変わった男の子で通りませんか?」

「ちょっと変わったで甲冑姿になるガキがいるか?」

「今の世の中は何でもありなのでいるかもしれないですよ?」

「……否定できんな」

零士は手で額を抑えた。

厨二の『勇者』やレオタードや水着で戦う『アイアンビューティ』といったユニークスキル持ちもいる。明らかにおかしいだろ、という面々が大手を振って活動をしているのだ。

今のショタ零士を見て長篠零士にたどり着く者がいるだろうか。

市川のおジキならともかく、いねえか。

零士はそう結論付けた。

「まぁ、基礎の基礎なら教えても問題はないか」

「基礎の基礎って?」

「いまの四街……美奈子がやってる感じだな。剣を振るう前の体作りだ。地味だが、これが後になって効いてくるんだ」

「確かに。前よりも剣を振るのが楽なのと、剣に振り回されにくくはなりました。でも体幹を鍛え始めてからバストサイズがアップしちゃって大変なんですよ。ブラも買い替えたのにまたきつくなっちゃってるし」

四街道が巨乳といえるほどに育ってしまったたわわを持ち上げた。

「男の人からの視線もすごいですし。やっぱり気になるもんですか?」

四街道が首を傾げつつ流し目を零士に送る。

「まーな。「デカッ!」って思って見ちまうな」

「師匠もですか?」

「そりゃなぁ。 生(・) き(・) て(・) た(・) 頃(・) は人並みに性欲もあったからな」

今の零士は人間ではなく『ナニカ』であり、またこの甲冑が皮膚の代わりになっており、零士自身もどうなっているかわからない。また『欲』が欠けてきているのも実感していた。

生きている頃、と聞いた四街道が一瞬だけ悲しそうに眉を下げたがすぐに笑顔に戻る。

「大きくしちゃった責任は取ってくださいね!」