軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.池袋ダンジョン④

聞こえてきたのはファイヤーボールの爆発音っぽい。

「誰かが戦ってる?」

ふと思い当たったのが黄金騎士団ってクラン。彼らがいれば大丈夫なはずってふたりは言ってた。鎮圧に失敗したってニュースであったけど、まだ彼らが戦ってるかもしれない。

ぐう、受付に寄って情報を得ればよかった。

「もしかして俺のファイヤーボールに反応した?」

だとすると、救助と思ってるかもしれない。

早くあっちに行きたいけど、ここにはまだまだ蜘蛛がいる。

「やっぱりひとりだときついな」

いつもなら智がいてフォローしてくれるけどいまはいない。指示をくれる知恵袋の京香さんもいない。戦闘経験がある瀬奈さんもいない。彼女たちの存在のありがたさが身に染みる。

だめだな俺は。

「悩んでても解決しない! 優先はいま戦ってるハンターの救助!」

怒られるのは後で考えよう。

頭上にカースを飛ばし、かつ進みながらファイヤーボールも撃つ。緩慢になった蜘蛛がファイヤーボールの爆風でぼとぼと落ちてくる。

「大漁!」

投げ網をグルングルン回転させて転がってる蜘蛛を根こそぎ収納して進む。何匹か見逃したけど、池袋のハンターさんお願い!

「うりゃぁぁぁ!」

ファイヤーボールではなく合金製金剛杖で思いっきり木を叩くと毒蜘蛛が落ちてくることに気が付いた。ついでに言えば木も収納できた。さすが仏様だ!

【収納:ダンジョンの木(イチョウ擬態)×1】

木を収納すれば蜘蛛も落ちてくるし、視界も開けるで一石三鳥くらいだぜ。きついのは毒蜘蛛が気色悪い色で見るのもいやってところだけだ。

「ぎゃぁぁ!」

木々向こうから悲鳴が聞こえた。急げ!

投げ網を振り回して当たる毒蜘蛛を収納しながら駆ければ、大木の幹にしがみつく紫色の巨大な蜘蛛と、その巨大蜘蛛と戦っているハンターの集団を見つけた。あれがアラグネか。2トントラックくらいはある大きさの蜘蛛で、女性の上半身はない。

だけど地面に伏せてるハンターが大半で、立って剣を構えてるのは4人しかいない。男3人女1人。みな金属製の鎧を着ている。

「こっちにくるな、危険だ!」

一番背の高い男が叫んだ。そういわれてもこの惨状を放置できないでしょ!

収納から木を取り出して担ぐ。

「てりゃぁぁ!」

気合一発、アラグネにぶん投げる。レベル20で【袈裟】ってスキルを覚えたんだ。力が不動明王のように強くなって力が5倍になる。今の俺が人間の倍以上だから、ざっと10人力ってとこだ。

「ギィィィ!」

アラグネの長い脚で叩き落されたけど、その隙に彼らの前に立てた。

「救助に来ました! 【駆け込み寺】!」

倒れてる人がいる場所に【駆け込み寺】で安全地帯を作る。いきなり出現した寺みたいな建造物に驚いて固まっちゃってる。

「倒れてる人をその中に!」

「こ、これは?」

「俺のスキルです、安全地帯なんで早く!」

収納してあった木を取り出しアラグネに向かって全力で投げる。さっきよりもでかい木だ。アラグネはまた脚で叩き落そうとしたけど重さと速度の運動エネルギーが勝って、足の1本を折った。

わずかだけど時間が稼げそうだ。

「手伝います!」

倒れている人を両脇に抱えて駆け込み寺に入る。女性が指示通り動いてくれてて、何人かは中に寝かされていた。

顔色が悪く、毒を食らっているっぽい。腕も血だらけで、ケガもひどそうだ。

「ポーションです」

テーブルを出してポーションを載せていく。人数を数えてないのでざっくり15本。ついでに飲料水も。

「あの、使っていいの?」

女性が声をかけてきた。顔は土まみれでポニーテールの髪もぼさぼさになってるけど、美人さんだ。

「ポーションは好きに使ってください。あ、名乗り忘れました。千葉の獄楽寺ギルドから来ました坂場守とい言います」

「獄楽寺って、まさかあの!?」

「どんな『まさか』か知らないですけど、終わったら説明します」

「毒消しってない? 仲間が毒蜘蛛の毒を受けちゃてて、手持ちの毒消しはみんな使っちゃってないの!」

「毒消し……ポイズントードのならありますけど」

「それだと毒が違うから、毒蜘蛛のドロップ品じゃないと合わない」

「毒蜘蛛の……」

ってことは収納の毒蜘蛛を経験値にすればドロップ品も出るかな。考えるよりも行動だべ。

【収納:毒蜘蛛×240】

【収納:毒消し×240】

【収納:スパイダーシルク×120】

うお、240個も。ともかく、毒消しをテーブルに出す。目薬みたいな容器に入ってる液体がそうらしい。見たことないもん。

「これ!」

女性はポーションと毒消しを抱えて倒れてる人に駆けていく。男3人は外でアラグネと戦ってる。時折ファイヤーボールの爆発音もする。加勢に行かねば。

駆け込み寺から出るとアラグネが別な木に張り付いていた。折れた脚は切り離したかで地面に転がってる。

「【光あれ】!」

男のひとりが剣をから太いビームを出した。ビームはアラグネの胸を貫通したが倒れる様子はない。あれだと威力が足りないんだろう。

「くっ、アラグネならあれでいけるはずなのに!」

「キィィィィ!」

奇声をあげたアラグネの口が大きく開いた。とっさにビニール傘を開いて男の前に飛ぶ。口から吐き出された黒い塊がビニール傘にあたる。収納したがビニールがドロッと溶けてしまった。

【収納:クイーンアラグネの溶解毒×1】

「マジかよ!」

ビニール傘が溶けたのは初めてだ。骨だけになった傘は収納して、新しいビニール傘を取り出す。

「何してんだ! あれに当たると体が溶けるぞ!」

別な男から怒鳴られた。知らないんだからしゃーないでしょ!

くそぅ、無知はつらいぜ。

「チッ、子蜘蛛が集まってきた」

アラグネの周囲には毒蜘蛛が集まってきていた。時間をかけると不利になるな。一気にボスを片付けるか。

「すいません、突撃するんでアラグネの気を引いてもらえません?」

ビームを放った男にお願いする。単身で突っ込んでも毒を吐かれて近寄れないっぽい。

「突然見知らぬ人間に言われて素直に聞くとでも?」

くそう、もっともだぜ。

「わたくし、獄楽寺ギルド、ギルド長の坂場守といいます。黄金騎士団からの救助要請で来てます。ほら、知らない人間ではなくなりましたよ!」

「何を馬鹿なことを……獄楽寺、だと!?」

「俺が知らないところで何か言われてるかもしれませんがそんなの知ったことではないので! おっとそっちはダメだ!」

毒蜘蛛が3階への階段へ行こうとしてるのでファイヤーボールをぶん投げる。ボボボと爆発し蜘蛛が火だるまになる。

「キィィィ!」

アラグネが吠えた。目がたくさんあってどこを見てるか不明だけど、まぁ俺だろうね。

「時間がないってのに!」

なまくらな剣を取り出してぶん投げたらあっさりよけられた。巨大なくせして素早いじゃないの。

こりゃーただ突っ込んでも逃げられちゃうな。逃がしたらまた同じことが起きそうだし、ここで仕留めるべき。

「キィィィ!」

アラグネが吠えたと同時に火を噴いた。とっさにファイヤーボールを当てたら至近距離で爆発した。