軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.池袋ダンジョン①

暦は10月に入ったけどまだまだ残暑お暑うございますだ。9時近くなり葉介さんが出勤してパタパタ準備をしている。その横でメールチェックをしていた瀬奈さんが「なにこれー」と叫んだ。

「守くーん、池袋ギルドからメールが来てて、ポーション500個売れだって」

「なんですかそのわけわからないメールは。池袋ギルドなんて知らないですよ」

メールの内容を見る。長ったらしく書いてあるけど、要約すると、上野商会から買うと割高だから直接売れって感じ。

「いろんなところと直接やったら面倒だしやりきれないからビッチさんの所を経由させてるんだけどー」

瀬奈さんが不満タラタラだ。

うちは零細ギルドだからきめ細かい対応なんて不可だもんね。

「怒ると胎教によくないからね。はいギュー」

「はー、守くんのギューは落ち着くわー」

瀬奈さんの気配はほわほわになる。よしよしうまくいったぞ。

葉介さんがぎょっとした顔してるけど、貴方が葉子ちゃんに同じことしてるのを知ってるぞ。葉子ちゃんは任せたからね。

そんなメールを無視していると、昼くらいに池袋ギルドから電話がかかってきた。

いろいろ言ってきたらしいけどうちとしては

「当ギルドは上野商会に卸しておりますのでそちらからご購入ください」

と返答するのみ。ビッチさんのところにしか卸していないので気軽に他には売れないって瀬奈さんも京香さんも主張してるしね。

「なんか横暴だなぁ」

「ギルド長はハンターではなく政治家の親類や伝手でなるものが多くてー、ギルドとしても持て余しているところが多いのよねー」

「デブはだいたいそう」

京香さんが容赦ない件。船橋で嫌な目にあったのかも。

その翌日、早朝の掃除を終えて朝食の用意をしているとき、テレビを見ている瀬奈さんと京香さんが騒ぎ出した。

「池袋ダンジョンの地下5階でスタンピード発生したけど鎮圧に失敗してー、池袋一帯に避難命令が出されたってー」

「あそこは『黄金騎士団』がいると思ったのですが」

「うーん、『黄金騎士団』がいるんだったらスタンピードが起きても対処できるはずよねー」

なんだろ、その浪漫というか厨二というか、そんな名前。

「瀬奈さん、『黄金騎士団』って何です?」

もの知らずでサーセン。

「黄金騎士団はねー、池袋を拠点とするクランでユニークスキル持ちの那覇が作ったクランねー」

「クランというのは複数のパーティの集合体で、会社に近いです」

「企業から支援を受けてたりするわねー。黄金騎士団はアパレル企業から出資を受けてたはずー」

「池袋は森林ダンジョンで虫の魔物が多く、ドロップ品がシルクなどの糸が多いのが特色です」

ふたりが代わる代わる教えてくれる。ドロップ品目当てでハンターに出資するってのもありなのか。うちはギルド長たる俺がハンターやってる零細ダンジョンだから、あまり関係はないかな。

「うちも面倒を見る子が増えたらクランを設立したほうがいいと思うわよー」

「ハンターの強引な引き抜きも横行しているので、あの子たちもきっちり囲っておくべきかと」

ほーん、引き抜きとか、本当に会社みたいだ。

「あの子たちっていうと美奈子ちゃん葉子ちゃんですか?」

「それとポニーの4人ねー」

「卒業して社会の悪意に気が付けるくらいまでは面倒を見るべき」

なるほど、そうした後は巣立ちって感じか。

ちなみに、葉介さんがギルドに入って柏性がふたりになって「柏」って呼ぶとふたりが反応するから名前で呼ぶことにした。そうしたら「わたしだけ仲間外れですか?」って四街道ちゃんに凄まれたのでみんな名前呼びにすることになった。

美奈子ちゃんは『師匠の世話焼き』と称して寺に入り浸るようになっちゃってるし、家はいいのかとか心配ではある。小耳にはさんだ情報では結構いいところのお嬢様らしい。なんでハンターに?と思うけど事情があるんだろうし、あえて聞いていない。

「なんだかうちはハンターの託児所みたいだな」

まぁ幼稚園もやってるしね。

「以前も言いましたが、寄らば大樹の陰です」

「守くんは強い、お金持ち、やさしいと揃ってるからねー。独り立ちできるまでは、お願いー」

「瀬奈さんのお願いは断れないなー」

よし、がんばろう。

「あら、黄金騎士団からメールだわー。えっと、予定帰還日を過ぎても帰ってこないのでスタンピードに巻き込まれた可能性あり、救助願う、だってー」

「池袋ギルドからもスタンピード鎮圧の応援要請が来てますね」

別々なメールが来てるみたいだ。

「黄金騎士団はスタンピードが起きる前にシルクの納品のためにダンジョンに入ってたみたいねー」

「池袋ダンジョンは別名シルクダンジョンと言われてて虫の魔物が多く出るダンジョン。ドロップ品もシルクが多い。シルクは需要が高いのでハンターも多いけどドロップは渋め」

「ダンジョンランクは2で船橋と同じ程度だけど、ハンターが多いから到達階層は17階ねー。深い階ほどいいシルクが落ちるのよー」

「なのでアパレル企業がクランの出資してる」

へぇ、企業もダンジョンに絡んでるんだ。魔石とかポーションだけかと思ったけど、関係する業界はいろいろなんだな。

「で、池袋の応援要請がなんで 獄楽寺(うち) なの?」

さすがに遠いでしょ。

「どうやら東京近県のギルドに打診しているようで、そのうちのひとつでしかないかと」

「大多喜ママからもメールが来てるわー。勝浦はサハギンが異常に増えてるからそっちの対応で手いっぱいで、船橋はムカつくから断ったって」

「わぁ、大多喜さんらしいなぁ」

あの人ズバッと言っちゃうから。船橋に行くたびにズバッと言われてるからよくわかるよ。

「本来はダンジョン管理はそのギルドの責務。池袋が何とかすべき」

「というのは建前よねー」

日本人が大好きな本音と建前ね。そうはいっても避難命令が出るくらい危ないなら放置はできないよなー。

「守くんはもう行く気なんでしょ?」

「うーん、うちも放置すればいいんだろうけど、犠牲が出そうなのに放置するってのがどうも俺には受け入れられない。母さんみたいな人はこれ以上出したくない」

俺みたいな家庭を増やしちゃダメだ。でもこっちも放置はできない。智は学校だし。

「そう言うと思って、調べました。守君こっちへ」

京香さんがちゃぶ台に置かれたノートPCを指さした。