軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

12.北浦スタンピード①

8月も下旬に入り、長かった夏休みも終わりが見えた日の午後。

寺には夏休みの宿題をしに智ちゃんのズットモふたりが来ている。

「オワラネー!」

「柏が計画的に終わらせなかったから。言ったのに」

「パイセンがキビシイ!」

柏ちゃんがちゃぶ台に臥せった。この子は宿題はぎりぎりまでやらない派なんだな。気持ちはわかるけどね。

「四街道はきっちり終わらせてる」

「もちろんあたしもー」

「智はふたりが遊びに来るからと昨日急いで終わらせてた」

「京香さんそれは言わないで!」

「さすがズットモ!」

智ちゃんと柏ちゃんが騒いでる。

なんにせよ期限までに終わればいいんだよ。たいした問題じゃない。

きちんと終わらせた四街道ちゃんは零士くんに剣筋を見てもらっている。ちなみにショタ零士くんだ。大人零士さんは怖いからとのこと。

「よーし、普段の剣の振り方を見せてくれ」

「はいっ!」

四街道ちゃんは二刀を大きく振り回して演武のように舞った。

「ふ-む、こうしたらどうなる?」

「アッ!」

するっと間合いに入っていった零士さんに剣を振る腕を押された。受け流すのではなく剣を加速させられて体勢を崩し、ドスンと尻もちをついた。

「体のブレを無くせ。まずは体幹を鍛えろ。1本の剣をしっかり振れるようになったら二刀流を考えた方が良い」

「……はい」

悔しそうな顔の四街道ちゃんだが零士くんの言うことに納得したのか、素直に素振りを始める。

「素直さのあるやつは伸びる。あの娘は見どころがあるぞ」

零士くんはどや顔だ。いかにも「この娘はわしが育てた」と言わんばかりだ。

そんな時、瀬奈さんのスマホが鳴った。

「あら、大多喜ママからだわ。はいはーい。え、そうなの?」

瀬奈さんの顔が厳しいものになっていく。

「みんなに聞いてもらうからスピーカーにするねー」

「あー、アタシだけど、北浦ダンジョンでスタンピードが発生、応援要請が来た。アンタんとこが一番すぐに動けそうだ。行っとくれ」

大多喜さんはすぐに通話を切った。

スタンピードは基本的にそこのハンターが抑えるが、どうにもならなさそうな場合、近隣のギルドに応援を要請するらしい。

ただし、連絡して捕まるハンターは休日で外出だったりしているので行かせられないことが多い。なおダンジョン内でスマホのアンテナは立たないから、中にいるハンターも捕まらない。

「霞ヶ浦の隣にある北浦のダンジョンなら、確かにここは近いわねー。要請が来たってことは、あまりよろしくない状況ねー」

悩む瀬奈さんの横で京香さんがパソコンで調べている。

「北浦のネットワークから 抜(・) い(・) た(・) 情報だと、キングトードが複数出てるらしい」

「ってことは、魔物の総数もすごいわねー」

「もしかしたら4桁かもしれない」

「そんなに?」

うちでも1000体は出たことないぞ!

でも「ありえなくはないな」と零士くん。

「基本的には、キングとか偉そうな名前がついた魔物は指揮能力を持ってる。キングトード1体が出た場合、魔物の数は300体を超えるな」

零士くんが説明する。いや多すぎでしょ。

「キングトードは3体確認できた」

「じゃあカエルは最低でも900体だな。どうすんだ?」

零士くんが俺を見てくる。どうすると言われても、行かないって選択肢はない。ハンターはいざ知らず付近の住民に被害が出るのはダメだ。

じゃあどうするか。

零士くんは表に出せない。大きくても身バレの危険があるし、ショタ形態ではそもそも入れない。高校生はもちろんだめだ。それは俺が許さない。

皆にはこっちを守ってもらおう。

「俺が行きますよ。その代わりここを頼むね」

「ならば私が付き添い」

京香さんが大きなショルダーバッグを持ってきた。いつの間に。「こんなこともあろうかと」とふふっと笑ってる。

だが向こうの状況はよろしくないらしい。

3階の湿地帯でカエルの魔物が大発生した。

深い階で発生しても魔物同士の小競り合いで数が減るが浅い階だとそのまま上に来るんだとか。だから浅い階で発生するのか。

「帰りの時間がわからないから明日朝の掃除はお願い」

「あたしに任せて!」

「俺も同行しよう。嬢ちゃんの盾になればいいんだろ?」

「お願いします」

なんとも頼もしい。頼れる人がいるってのは幸せだ。合掌。

車を飛ばしていけば1時間ほどでついた。北浦の南側の端の近くにギルドの建物があった。3階建てのアパートっぽく見えるのは、職員の部屋があるかららしい。

ギルドの駐車場に車を止め入り口から入る。スタンピードが起きている割には静かだ。入ってすぐの受付がある空間が広く、ど真ん中にゲートがふたつある。うちのダンジョンよりは広いんだな。

「ちょっと行ってきます」

京香さんが受付に小走りで向かう。とことこ走しる後ろ姿が可愛いらしい。

「船橋の応援は無用です。北浦のハンターだけで抑えられます!」

京香さんが挨拶をしたようだが、受付嬢が強い口調で返してきた。

「こちらは船橋の大多喜副ギルド長からの指示で来ている。文句は船橋へ」

京香さんがプンスカで帰ってきた。

「要請があってきたのに塩対応」

「スタンピードが起きてるのにのん気過ぎない?」

「ダンジョンができて10年たって気が緩んでるのか、ギルドごとの売り上げ競争が起きるなど、本来の目的を忘れている職員が多い」

「売り上げがいいと何かいいことが?」

「職員にボーナスが出る」

「おー、良いことだと思うけど」

「売り上げが上がればいいので、ガラの悪いハンターでも魔石を持ち帰ってくれば良しとなってきていて、船橋でもここ最近は酷くて……ほかに行きたいと思っていたところに守君を見つけたのは本当に幸運だった」

「なるほど、そのおかげで俺は京香さんと瀬奈さんに会えてラッキーなわけですね」

船橋を離れたかったとは思ってもみなかったな。俺ってば渡りに船だったのか。

モラルが崩れると治安が悪化して人が逃げる気がするんだけど、でもそれで美人さんふたりもゲットした俺が一番ラッキーじゃん!

ポジテイブに行こうぜ。

「ダンジョンを歩きながら説明する」

ということでさっさとダンジョンに入ってしまおう。ここにいても気分が悪くなるだけだしね。