軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

55.成田君のピンチ④

俺を含んだ10人パーティで8階9階を進む。サーベルタイガーが出てきたので戦ってもらったらあっさり倒してた。

「だから言ったじゃん」

俺が言っても思案顔だ。

「たまたまだな」

「人数も多いし」

言い訳に余念がない。

「お待ちかねの10階だね!」

「お待ちかねてないです」

「うう、不安だー」

「本当に行くんですか?」

むー、俺の鼓舞じゃだめかー。

「いいから行くのじゃー」

先に入っちゃう。

10階は、やっぱり森で、今いる場所だけ拓けてる。くるぶしくらいの草があるだけで、低木もない。

日当たり抜群の良物件ですって言われても違和感がないくらい、休憩にはいい場所だ。

ダンジョンボスがいなければ。

『『グルルゥゥ』』

ちょうど階段の反対側には、ふたつ頭のワンちゃんたるオルトロスと複数の白狼が唸り声をあげてる。白狼は5体かな。

ランク1ダンジョンだとこんなもんか。日比谷の時はもっとたくさんいたし、ケルベロスもいたからねぇ。それに比べればおやつみたいなもんじゃん。

「うわ、オルトロスだ」

「白狼もいるじゃん」

みんなも降りてきたね。じゃあやっちゃおう。

「オルトロスは抑えてるから白狼をやっちゃって」

【師走】で加速してジャンプ!

白狼を飛び越してオルトロスの真ん前に着地。

「【説法】」

オルトロスがコテンと地面に転がった。

「ん-、相変わらず効果は抜群だ。さてみんなはどうかな」

振り返ってみれば、燃やされてる白狼が見えた。5頭いた白狼がみんな黒焦げで真っ白な毛皮が台無しになってる。ファイヤーボールの一斉射撃かな。

Aチームとポニーの9人には【ファイヤーボール】【カース】【キュア】を覚えてもらってる。それに加えて佐渡に行ったAチームは【飛翔】【吹雪】ブレスも覚えてた。

「4人がファイヤーすればこんなもんか」

火は消えてるけど『白狼のライフはもうゼロよ』って感じだ。備後ダンジョンで戦ってるから弱点もわかってるしね。

「いっくぞー!」

「うるあぁぁ!」

成田君ら5人が斬りかかる。ザクザクザクと斬り捨てて白狼は魔石に変わった。残るは爆睡中のワンちゃんだけ。よだれ垂らして寝てる。

撫でてみるけど意外にも毛が柔らかい。モフモフが指を包み込んでとてもいい。いくらでも撫でていられるぞ。

【収納→所有】でこのワンちゃんを相棒にできるんだけど、もふもふできるメリットがでかい。デカすぎる。

「……魔物を撫でてる……」

「ペット扱いとか」

「ダンジョンボスなんだよなーあれ」

いろいろ言われてるのでやめておこう。べ、別にペットにしようとか思ってないんだからね!

猫ならワンチャンあったけども。

サクッと収納して経験値にしてしまう。

【オルトロスの魔石×1】

【ポーション×1】

【取手ダンジョンマスターのスキル書×1】

ダンジョンマスターはあるけどドロップはオルトロスと変わりないのね。

地面に幾何学模様が浮かび上がって光り始めた。

「おお、これが!」

「映像のとおりじゃん!」

「ふぉー!」

視界が真っ白になってそれが晴れると、目に映ったのはダンジョン入り口付近の景色だ。7階で【駆け込み寺】に放り込んでいたルークと【コブラ】の5人も転がってる。

周囲には数人の野次馬がいる。律儀に待ってたんだね。

「おう、うちのに何してんだ?」

ガラの悪い声がして振り向くと、チャラそうな若い男が10人ほどいる。武器も持ってるからハンターだろう。

「あなたたちは?」

「あぁ? 俺らが聞いてんだよ」

うーん会話にならない。うちのにってことはこいつらはお仲間のクラン【ヴァイパー】なのかな。他にはカメラを持ってる人もいて、ハンターTVだろうかね。

「襲われたんでおとなしくしてもらってるだけですよ」

「なにしたんだテメエ!」

拳を振り上げて殴りかかってきたので【魅了】をかけてみる。ついでにその辺にいるお仲間とハンターTVの人にも。

ビクッてして顔から表情が抜けた。閻魔さまの前で行列してる亡者みたいだ。

「なんもしてませんよ。それよりもこいつらを引き取ってください」

「お、おう、わかったぜ」

すっかりおとなしくなって従順な【ヴァイパー】の皆さん。芋虫状態の【コブラ】5人を担ぎ始めた。力はあるんだね。

「お帰りはあちらです」

「お、おう。お前ら帰るぞ」

「「「「うぇーす」」」」

5人を返すと同時にこいつらも帰す。さよーならー。もう会いたくないよー。

「やぁこんにちは。ちょっとお尋ねしますが、ルークという男を知りませんか?」

ひょろっとした白人男性が目の前に出てきた。赤い髪を後頭部でひとつにまとめてて優男っぽい気配がする。

「どなたですか?」

「oh失敬。私は米 陸(・) 軍(・) のチャーリーです」

腰を曲げて名刺を出された。反射的に取ってしまった。

でかくMPって書いてある。

「MPってなんです?」

「米陸軍の警察みたいな部署です。ルーク一等兵は先日横須賀を脱走しまして。探していたんですよ」

脱走兵?

脱走兵ねぇ。

本当かなぁ。

「こいつですかね。【コブラ】をうちらにけしかけて逃げたんで縛りあげたんですけど」

「oh! こいつです! 基地からの外出には許可が必要です。彼は無許可で基地の外に出ました。連れ帰って裁判にかけなければいけません。それは米軍の決まりです」

「裁判」

「えぇ、米国の法を犯しましたので」

にっこりするMPさん。名前は、忘れた。

ふーむ、それはそうなんだろうけど、こいつを返すのもアレだけど引き取るのもアレだなぁ。アレでアレでじゃわかんないね。

成田君たちは無事に確保できたし、まぁ引き渡そうか。

「ハイどうぞ」

「センキューデース」

「なぜ急に片言?」

「日本人はアメリカ人にこれを求めると聞いていますので」

なるほど。

ルークの身柄は米軍に引き取られた。軍法会議と言われれば止められないよね。

「あいつ、【作務衣】だぜ」

「一緒にいるやつらって」

「あのでかい棍棒持ってるのは【Aチーム】のやつだろ?」

「佐渡の配信で見たな」

「【コブラ】と一緒にダンジョンに入ったやつが残ってるぞ」

「アホ。あれは市船のハンターコースを卒業したやつだ」

「ってことは獄楽寺関係か」

背後でごにょごにょ聞こえる。みんなも所在なさげにしてるし、さっさと帰ろう。

「さーて無事に踏破したし、寺に帰ろうか」

「うっす」

「はー踏破しちゃったねー」

「帰ったらおやつだな」

寺から来た4人は「帰るべー」って感じだけど成田君らはどうしてよいやらと困っている。

「成田君たちも一緒に帰ろう」

「で、でも」

成田君ら5人は顔を見あってるけど決めかねてる感じ。じゃあ俺が引っ張っちゃおうかな。

「ちょっと聞きたいこともあるからさ。晩御飯はうちで食べて泊っていきなって」

10人乗りハイエースで来てるから何とか乗れるんだ。

ということで寺に帰った。