軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

55.成田君のピンチ③

【コブラ】の男5人はすでに地面に転がって戦力外になっているが、元クラスメイトに刃を向けるのは抵抗が強く、成田以下5人は無傷だ。

その成田たち5人に囲まれていた。だが不安はない。不審な外人を追いかけたのが寺最強の守なのだ。

「やりすぎてないといいねー」

「「「それな!」」」

それは無理というものだ。

「このままじゃ埒があかねえっと!」

襲ってきた湖北の剣を一宮が金剛杖ではじく。と同時に喧嘩キックで湖北の腹を蹴った。湖北は吹っ飛んで地面を転がるがすぐに立ち上がる。一宮も本気で蹴ることができない上に湖北も鍛えられているので耐久力はあるのが面倒だった。

「どうするべ!」

「どうするっていってもなぁ!」

天王台が襲ってきたので館山も喧嘩キックで距離を稼ぐ。棍棒で殴るとダメージがでかすぎる。

軽いキックなので疲れることはない。いくらでもできるがそれでは解決しない。

「刀なら峰打ちができるのになー」

「それなー」

足立と渋谷がぼやく。足立は片手剣のままだが渋谷は両手持ちの大剣に武器を変えていた。

スキルなしの攻撃でも当たれば大けがだし、だからといって手を抜くと剣で防御される。

やりにくさにストレスがマッハだった。

「杖はいいぞ!」

「棍棒もいいぞ!」

一宮が金剛杖を突き上げ、館山がオーガの巨大棍棒を振り回す。偶然にしてふたりは打撃ペアだった。

「見てくれって大事だよね」

「それなー」

「鈍器最高!」

「棍棒最高!」

呆れる足立と渋谷をよそに一宮と館山はご機嫌だ。

緊張感がだいぶ薄れてしまっていた。

「あ」

成田がつぶやいて棒立ちになった。成田に続いて我孫子、天王台ら4人も棒立ちになる。一宮が駆け寄りそうになったが館山が肩をつかんだ。

「様子見ようぜ」

「あ、ああ、そうだな」

一宮も館山も武器は下げたが警戒は続ける。

「あれ、ここは?」

成田があたりを見て「ダンジョンですね」とつぶやき、そして一宮に気が付いた。

「あれ、一宮君じゃないですか。久しぶりですね」

「……お前、成田か?」

「えっと、 僕(・) が成田でなかったらなんなんでしょうか?」

困惑した成田がメガネをくいっと上げる。

「おぉ、成田だ!」

「正気に戻ったか!」

ホッとした一宮と館山が成田に近寄る。

「あれ、足立と渋谷がいる」

「ほんとだ」

「一宮と館山だ。あれ、別なパーティじゃなかったっけ?」

「大宮ダンジョン……じゃないっぽいなここ」

他の4人も周りを見ては理解に苦しんでいた。

「湖北ー、ここは取手ダンジョンだよ?」

「取手!? なんで取手!?」

渋谷が湖北に教えたが、彼は混乱するだけだった。

「成田、何でここにいるか覚えてねーの?」

「僕らは大宮のダンジョンに入ったはずですが。渋谷さんが言う通りここが取手だとしたら、何で僕らはここにいるんでしょう?」

「ほーん、記憶無しってことか」

「じゃあ説明すっか」

館山が5人に事のあらましを伝えた。

「まっっったく記憶にありません」

「マジで俺が足立さんに斬りかかったの?」

「【コブラ】って俺らに付きまとってたやつらだな」

天王台が転がっている男たちを睨んだ。それだけで彼らの所業がわかってしまう。

「で、真犯人ぽいのが逃げたから守さんが追いかけてる」

「なるほど、やりすぎてないといいですね」

「それな」

「佐倉がらみじゃないから大丈夫だとは思うけどお仕置きしなきゃって言ってたからなー」

「追うか?」

「その前にさ、こいつらどうする?」

渋谷が転がっている男をこつんと蹴った。行くにしてもお荷物だし、逃がすわけにはいかない。

「誰か縄とか持ってねえ? 縛ろうぜ」

「あ、僕が持ってますよ」

成田が腰のマジックバッグから丈夫そうなナイロンザイルのロープを出した。

「さすがは委員長だ」

「高校は卒業したので委員長も卒業しましたけど?」

「成田はみんなの委員長だからいいんだよ」

一宮がニカッと笑った。

ルークを連れて7階まできた。静かだなと思ったら一宮君と成田君らが何やら談笑してた。地面には紐で縛られて芋虫になった【コブラ】の5人の男がいる。無事だったみたいでよかった。

「守さんそいつ!」

渋谷ちゃんが気が付いた。

「あー、こいつは【魅了】の魔法で無力化したから」

「【魅了】の魔法!?」

そんなこと言われてもわからんよね。ルークを後ろ手に縛って座らせ、みんなにかいつまんで説明。

【コブラ】の輩はうーうーうるさいので【説法】で眠らせた。

「ってことは、僕らは【魅了】されてたと」

「まーじーかー」

「うそだろ!?」

成田君ら5人は信じられんという顔になってる。

「守さん、【魅了】の魔法なんて覚えてたんですね」

「あ、それはこいつから奪った」

ルークの頭に手を載せる。

「は? 奪った?」

「えーーーっと、魔法って奪えるもんなんですか?」

「もう何でもありだな……」

「守さん、超人とか言われてません?」

「実は宇宙人とか」

失敬な。その辺にいる普通の人間やぞ。

「まぁそこは仏さまの謎パワーでってことで」

仏さまごめんなさい。

「成田君たちが正気に戻ったようで一安心だね」

「俺らと戦ってはいたんですけど、急に我に返った感じで」

「そうそう。突然「ほぇ?」って顔になっちゃって」

「僕だって突然知らないところにいたんですから、混乱もしますよ」

ほぅほぅ、【魅了】が切れたらそうなるのか。

「守さん、とりあえず成田たちを確保できたんで目的は達成しましたけど、こいつらどうしましょう」

館山君が転がってる【コブラ】のリーダーを軽く小突く。悪党だが犯罪を犯した証拠がない。成田君たちと同じく【魅了】で操られていたけど、だからと言って何か悪いことをしたわけじゃないんだよね。

まあ、襲われたのは確かだから縛ったままにするけど。

「連れて帰るのもだるいーってか触りたくない」

渋谷ちゃんは嫌悪感を隠さない。襲ってきたしね。

「連れて帰るにしても……いっそ踏破して地上に戻る?」

その方が速そうだし。

「え……」

「それは……」

「踏破したら他に移動するだけでって」

俺の提案に困惑してる。まじめでいい子たちだなぁ。

「最後のとどめは俺が収納する形の踏破ならどこにもいかないし、まぁ、寺にダンジョンが増えるだけかな」

日比谷に置いちゃってもいいけど。

「それができるなら、踏破を経験はしてみたいっす」

「いいんですか?」

「だってこいつを連れてダンジョンを戻るより下に行った方が近いし。短時間だからこいつらはここに放置でいいでしょ」

ルークの頭をポムポムする。こいつらと一緒に【駆け込み寺】に放り込んでおこう。連れていくにも邪魔くさい。

「踏破の方が手っ取り早いって思考が怖えっす」

「みんなだってできるくらいは強いんだよ?」

人数もそろってるし大丈夫でしょ。

「いやいやいや」

「四街道ならともかく!」

「わたしらには10年早いって」

みんな謙遜してるなぁ。

「時間ももったいないし、さっさと終わらせよう。ダンジョンボスとは戦ってね?」

レッツゴー!