軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

49.なんてことのない日常② 太田のお悩み相談

その日、臼は部屋で銃を磨いていた。樹脂製なので磨いたところで輝くわけではないが、武器は大切にしたい。

「磨きすぎで、だいぶ角がとれてきちゃったな。ん?誰か来た?」

部屋のドアがノックされたので「開いてるよー」と声をかける。

ガチャとドアが開けば、そこには緊張した顔の太田が立っていた。

「あれ、ポニーの太田ちゃん? 姉さんならダンジョンだけど?」

「ああああの、臼さんに、ちょっとご相談がありまして!」

「えと、俺でよければ?」

顔は知っているけど接点がないので臼も疑問形で答えた。

部屋に入った太田は腰のスマホホルダーから大きなクッションを取り出して座った。

「へー、マジックバッグなんだねそれ」

「そ、卒業記念品で、も、もらいました」

緊張しているので雑談から始めた臼だが、太田の緊張はほぐれないようだ。

仕方ない、直球でいくか。

「ふむ、で、相談ってのはどんな感じ?」

「あの、私のスキルが【射撃】で、最近矢だと威力が足りないなって感じて」

「矢はねー、威力はあるけど、頭打ちなんだよね」

「そ、そうなんです。でもみんなはどんどん強くなってて、わたしだけ追いていかれちゃう気がして」

なるほど。

「臼さんは【射撃】スキルで銃を使ってて、その、わたしも銃がいいのかなって」

矢だと威力に限界があるから銃だとどうなのかってことね。

臼は納得した。

「銃といっても弾はただの金属弾で火薬は入ってない。スキルで増速させて威力を増して、でも足りないから散弾銃のように数で補ってるんだ」

「数で……そうなんですね」

「良ければ、スキルを教えてもらってもいい? 何かアドバイスができるかも」

「えっと、【射撃】【忍耐】【狙い撃ち】です……あと、魔法をいくつか覚えました」

「なるほど、狙撃向きなんだね」

「師匠にもそう言われてて。でも剣に比べると威力が……パーティのみんなは剣で魔物を倒せるけど自分は……」

とだんだん声が小さくなっていく。

自分のスキルが足りないから、いつか足を引っ張るんじゃないかと不安なんだろうなと臼は推測した。気持ちはよくわかる。

「射撃スキルは、どうしても一撃で魔物を倒すって戦い方じゃなくって、サポート的な動きが主になるからね。俺だと姉さんが好き放題暴れるから背後から襲いそうな魔物の邪魔するとか」

「そ、それはいまもやってて……」

「なるほど、その上で不安なわけか」

臼は考える。クロスボウ自体が狙撃用の弓といっていいものだ。

弓の威力は弦の張力に影響されるので、威力を高めたければ大型化するしかない。小型でも弦の張りを強くすれば威力は出るが、そうすると矢を引けなくなってしまうか、弓が弾性限界を超えて折れる。

物理的な限界は低いんだよね。

「銃といっても、結局は物理でしかないから、魔物にはあまり通用しないんだよね。弾にスキルを載せてようやくて感じだから銃にしてもあまり変わらないかもしれない。クロスボウよりは弾道低下が少ないから狙いやすいけどね」

「狙いやすい……確かに、矢は少し上を狙うくらいがちょうどよかったりします」

「じゃあ銃を大きくすればって考えると、そもそも銃刀法があって日本では本物の銃は持てないし、モデルガンはそこまで大きいのはないんだよねぇ」

ライフル銃はあるが取り回しで難がある。遠方の狙撃ならいいが、ダンジョン内でそのタイミングは少ない。魔物と接敵するのは中距離ないし近接が多いからだ。

「考えを変えて、近接でも戦えるような拳銃タイプも持つとかは、どうかな?」

腰に入れてある拳銃を取り出す。威力を出すために大口径を狙ってデザートイーグルだ。

「拳銃……」

「俺もそうなんだけど、【射撃】スキル持ちって近接戦闘が弱いんだよね。クロスボウでも近すぎると照準をつける前に襲われちゃうし」

「そ、そうなんです! そうなったときはいつも逃げてて……」

「まぁ、突破されちゃう前衛にも責はあるんだけどね」

「で、でも」

太田は言いよどむ。

パーティのメンバーとは対等でありたいんだろうなぁ。と臼は予測した。

自分は、姉としか組んだことはなくてパーティというのはわかってないからその不安が理解できない。姉はユニークスキル持ちで自分とは違いすぎて対等とか考えたことがない。姉は圧倒的に強く、比較する気にならない。

優しい子だなぁ。

「もっと自信をもっていいと思うよ」

少しおどおどしている太田が、なんとなく姉に重なる。

それは姉にも言いたい言葉。長身で迫力がある顔のために人との接触をためらっていた。

そんな姉にも声をかけてくる人はいる。利用するつもりだったり、単に興味があったりなど色々だった。好意を持って話しかけてくる男もいた。

でも姉はすべてを遮断した。

見てくれが悪いから。男よりもずっと背が高いから。

そんなコンプレックスが燻っているのは、弟として痛いほどよくわかった。

姉には魅力がある。強いことも十分魅力だ。臼はそう思っている。

だからこそ、同じように縮こまってしまっている太田に対してそんな言葉をかけた。

「わ、わたし太ってるから」

「そう? 健康的だと思うよ。抱き心地もよさそうだし」

「だだだだだ抱き心地!!!」

ずささっと後ずさりする太田。

やっちまった。デリカシーが足りなかった。

後悔は先に立たず。

「あああの、ありがとうございました!」

太田が部屋を出て駆けていく。弁明することもできす見送る臼。

俺も姉さんのことは言えないなぁ。臼はがりがり頭をかいた。

翌日、臼はトレーラハウスの部屋で銃の手入れをしていた。道具の手入れは重要で、そして頭をクリアーにするに都合がよかった。

ドアが控えめにノックされる。

「開いてるよー」

「あああの、太田です! その、わたしにちょうどいい拳銃って、ありませんか!」

臼が顔を上げれば、顔を真っ赤にした太田が叫んでいた。

あれ? 昨日は怖くて逃げたんだよねぇ?

なんで来たの?

などとさらなるデリカシーのなさを発揮することはなく。

「えっと、狭いとこだけど、どうぞ?」

「おおおじゃまします!」

なぜか太田を部屋に入れていた。

結局、週末にモデルガンの店を一緒に見に行く約束をしてしまうのだった。