軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.行って(1月)逃げて(2月)去ってしまう(3月)⑧  ヒグマ襲来③

『次だ!』

羅(クマ) さんがドスドス階段を下りていく。いつものワイト君と騎士骨4体がお待ちかねだ。

『む、あいつはなんだ?』

「ワイトですね。魔法を撃ってきます。あんな感じで」

ワイト君はファイヤーボールを撃ってきた。

『魔法!? アワワワ』

羅さんは右往左往した挙句にファイヤーボールの直撃を受けて倒れた。いやマジで?

「あー、姉さんは物理なら最強なんだけど、魔法には弱くって」

臼さんはどこからか取り出したショットガンを手にしていた。金属ではなく樹脂製っぽいのでエアガンだろうか?

「ほいっと」

引き金を引いてドパンと打ったらば細かい弾がすごい速度で飛んでいく。哀れワイト君は穴だらけになって光と消えた。

「なんかすごい武器ですね」

「武器というかスキルだね」

臼さん曰く、武器はエアガンのショットガンで、弾が魔物の牙を混ぜた鉄製。スキルで加速させるから魔物にも通用するし、火薬を使わないからほぼ弾がある限り無限に打てるんだって。臼さんもユニークスキルじゃんって思ったけど【射撃】スキルなんだって。

「姉さんのスキルは物理に対しては超強くなるんだけど引き換えに魔法とかにはめっぽう弱くなってね」

「あー、とがった性能で玄人好みなんですね」

「そう言ってもらえると弟としてはうれしいね」

お姉さん思いの弟君だ。

羅さんは気を失ってるけどケガ自体はほぼなくて、でも一応ポーションは飲んでもらう。

『うううう、情けないところを』

「まぁ、人には得手不得手がありますからね。あと魔物との相性は誰にでもありますし」

『私なんか私なんか私なんか……』

大きなクマさんが体育座りでガッカリしてるからフォローが大変だ。

「4階まですんなり来れてるのは強いからですよ」

「そうそう。骨なんて蹴散らせばいいんだよ」

俺と臼さんふたりがかりで慰めれば、何とか復活した。

ということで、5階へ行くことに。ワイトとレイスが出るから、もぐらたたき式で速攻つぶそう。

「ここはまた違うんだね」

「地下墓地ですね。で、マミーがたくさん出ます。あんな感じで」

横の通路からわらわら包帯人間が湧いてくる。ぱっと見でも50体ほど。

「うわー。多すぎじゃない?」

「いつもあんなもんですよ。1回の掃除で数百体を倒しますからね」

「俺じゃ弾切れになるなー」

俺と臼さんでのんきに会話している間も、羅さんはマミーの群れに突撃して暴れまくってる。腕の一振りで5体くらいのマミーが消える。足を動かしても同じ。動くだけでマミーを蹂躙していく。すげえ。

壁からレイスがこんにちはした。

『ウワァァァァン!』

羅さんが急に床に臥せって泣き叫んだ。【フィアー】を食らったのかもしれない。すぐに【キュア】をかける。

『ァァアアアア、あ?』

正気に戻ったようだ。レイスにファイヤーボールをぶつけて倒す。厄介だからね。

「姉さんはどうしたんだ?」

「多分、レイスの【フィアー】って魔法を食らって恐慌状態になったんだと思う。【キュア】の魔法で治したよ」

「そうなんだ。ありがとうね」

遠くにワイトが3体見えた。あいつの【カース】が厄介だ。羅さんに魔法はばっちり特効だからね。

羅さんの横から前に出て金剛杖をワイトに向ける。

「【シャイニングブレス】」

金剛杖から光のブレスが走り、マミーを消滅させながらワイトもろとも貫通してダンジョの向こうの壁に激突してドゴゴゴーンってすごい音がした。通路にいた魔物が全部消えたぜ!

『い、いまのは何?』

「日比谷ダンジョンのダンジョンボスだったツインヘッドドラゴンのブレスでシャイニングブレスってやつ。あたると消滅しちゃうやべーやつ」

『な、なに、なにそれ! 消滅って、コワッ!』

羅さんに聞かれたから答えたのに臼さんの後ろに逃げちゃった。だから隠れられないでしょって。

横の通路からマミーがわらわら出てくる。

「そうだ。これ持ってマミーを倒してくれます?」

試しにラビットテールを持ってもらう。ラビットフットよりドロップ率が高いから結構ゲットできると思うんだよね。

『お、おぅ……こんなちっさいやつ。壊しそうだ』

羅さんがおそるおそる爪でつまんで毛皮の中にしまいこんだ。毛皮の中にしまえるんだね。便利だなそれ。

『よ、よし! ウガァァァア!!』

羅さんがマミーを倒していくと、ぽつぽつだけど包帯が落ちてる。効果は抜群だ。

「ちょ、坂場君! ドロップ品がすごいんだけど。あれマジ?」

「マジもマジでおおマジです。ラビットテールはすごいな」

「あれ、ラビットテールなの!? 超レア品じゃん!」

「智が雪ウサキングからカツアゲしてきましてね」

「カツアゲ!?」

びっくりするよね。でもあれはカツアゲとしか言えない。

『どりゃぁぁあ!!』

『うりゃぁぁぁ!!』

『てりゃぁぁぁ!!』

羅さんが獅子奮迅で暴れまくってる。俺と臼さんは落ちてるドロップ品を拾ってて、時折出てくるレイスを仕留めてるだけ。なお、臼さんの弾だとレイスには無効なので俺が倒してるけどね。

「そろそろ戻りますか?」

結構な数のきれいな包帯をゲットできた。これは浦河姉弟のものだけどね。買い取りまっせ。

「姉さん、いったん休憩しようか」

『む。お腹も空いたし、帰るか』

ということで、撤退戦しながら階段を上った。

墓地ダンジョンを堪能した日の夕刻。夕食前ののんびりした時間を配信に充てるべく、浦河姉弟はせっせとカメラセットをしていた。

「今日は画面半分で映像を流しつつ解説する流れで」

「わはっは」

羅は本日のお茶菓子と銘打った千葉県銘菓をもぐもぐしている。ぴーなっつ最中である。

落花生の形をした最中で、落花生の甘煮を煉り込んだ餡を詰め込んである。ピーナッツ風味抜群の最中だ。

「姉さん、始めるから食べるのやめて」

「んんごく。いいぞ」

「やれやれ。配信開始」

臼がタブレットをポチっとする。

「はいこんにちは、浦河家の臼です。こっちは姉の羅です」

「羅だ」

「今日は、獄楽寺の墓地ダンジョンに入ってきました」

「いくら暴れても次から次から魔物が出てきて、いいぞ」

「そんなことをいうのは姉さんくらいでしょ。というわけで、今日は画面の半分に撮影した動画を流しながらその解説をしていきまーす」

「そうだぞ」

臼の説明に「待ってた」「化けの皮がはがれるか?」なんてコメントが上がっている。

「まずは階段降りてすぐ。画面に映ってるのは、日比谷高校の生徒だって。階段が複数見えるけど、墓地ダンジョンの階段は一番遠くのアレ」

臼がペンを持って画面に丸を書く。

「あとはなんだっけ、備後、神西、日比谷ダンジョンだって」

「明日は日比谷に行く」

「姉さんはいつも突然だよね。ということで、明日は墓地ダンジョンにある日比谷ダンジョンに行きます。なんか意味わからないね」

コメントでも「明日はいいから今日のハヨ」「日比谷って踏破されたはずじゃ?」とある。

「墓地ダンジョンでの映像を見ていこうかな」

映像は、1階のゴブリン骨をつぶして2階、3階と楽勝な様子を映している。

「余裕じゃんって思うでしょ。姉さんにとっては余裕だったね」

「ここまでは」

「そう、ここまではなんだよね」

臼がもったいぶると「なんだなにがあった」「はよー」と視聴者が騒ぎ出す。

4階に移り、ワイトのファイヤーボールで羅が燃える場面では「魔法やぞ」「【ヒグマ】が苦手な奴」「弟君ナイスショット」とコメントでにぎわう。

「ダンジョンの広さから推測すればランクは1のはずだけど、4階で魔法を使う魔物が出るんじゃ、ランクは5以上だろうね」

臼が肩をすくめると「4階で魔法とかありえんて」「ンなバカな」とコメントが上がる。

「そんな馬鹿なというが、実際に燃やされた私は幻でも見たと?」

羅がすごむ。実はここで服が燃えてしまってクマ形態から戻ると裸になってしまうためにトレーラーハウスまでクマのままで戻っていたのだ。近所の住民が見たら大騒ぎである。