軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44.行って(1月)逃げて(2月)去ってしまう(3月)⑦  ギルド会議①

2月も半ばに入り、寒さにも飽きて「春はまだか」と思い始めるころ。全国ギルド会議の日がやってきた。俺的には望んでないけど。

会議はネットで中継されているので寮の食堂に集まってみなで参加することにした。うちに隠すことはない。零士くん以外は。

メンバーは俺に瀬奈さんに京香さんだ。今日は大阪の府立天王寺高校から生徒が来てて、俺たちが集まっているのが気になってる様子でチラチラ見てくる。

食堂に大型モニターを持ってきて、それで参加する。

時間になって指定のネット会議アプリ接続して、ボケーっと待っているとざわざわと音声がつながった。始まるらしい。

『時間になりましたので全国ギルド会議を始めたいと思います』

スーツ姿の男性が映って仕切り始めた。総務省の偉い人らしい。

『まずは犠牲になられたハンターに黙とうを捧げます。黙とう』

目を閉じて祈る。この方々の犠牲の上に今の快適さがある。この方々の来世に幸あれ。

『お直りください。まずは各ギルドの売り上げからです。割愛しますのでお手元の資料をご覧ください』

メールで送られた資料を印刷した紙を見る。各ギルドの売り上げ一覧があって、半年しかたっていないが 獄楽寺(うち) がぶっちぎりの1位だ。

「わかってはいたけどうちがトップなのねー」

現在134億ですって奥様。これもみんなが頑張ってるからだよね。ありがとう!

『さて議題に移りたいと思います』

『大阪城ギルドだ。発言の許可を願う』

「うわ、あのデブだ」

食堂で休憩してる天王寺の子がイヤそうにつぶやいた。それだけでこいつはどんな奴なのかわかっちゃった。

『当ギルドだけではなく各ギルドからポーション供給を増やしてくれとの意見があるが、現状、供給されるポーションの半数が獄楽寺ギルドになっている。もっと増やしてもらわねば困るな』

冷静な口調だけどどこかうちを馬鹿にしてる感じで、こいつはもうエネミー判定だ。

やっぱりデブはお飾りギルド長だ。

「守君、現在ギルドには5000本を超えるポーションのストックがありますが、災害などへの対応用として保管しているので出す義理はありません」

京香さんがフォローしてくる。そうだよねぇ。

『獄楽寺ギルド』

発言を求められた。マイクをオンにする。

「えー獄楽寺ギルドの坂場です。増やせと言われても人手がいませんし無理です」

無理なもんは無理やで。

『人を増やせばいいだろう』

『そんなこともわからんのか』

ヤジが飛んだ。おっと、攻撃的だぞ?

じゃあ鏡で返そうか。

「当ギルドは超零細ですので、ポーションを増やせというギルド様が増員してこちらに派遣してくれれば幸いです。それと、入手してくるのはギルド職員ではなくハンターですのでお間違えなく」

『生意気なことを』

『これだから若造は』

わかりやすくdisってくる。これも戦術なのかな。高度な情報戦ってやつ。

「うちは秘密が多い上に墓地ダンジョンの特異性から簡単な増員は難しいです。信用できない人間に立ち入ってほしくはないですね」

隣の京香さんが困った顔をしている。俺もそう思うよ。

だからこそ職員は身内で固めてて、例外は北国分さんと日比谷の4人だけ。できれば増員はしたいんだけど、なかなかねー。

『さっさとダンジョンを開放したまえ』

『そうだそうだ』

『ダンジョンを独占しているのが悪い!』

ほ?

今更何を?

「ダンジョンは開放してますけど? ハンターが来ないだけです。ハンターコースの高校生は全国からガンガン来てますけど。ちょうど発言された大阪の天王寺の生徒も来てますよ? 大阪のギルドはあまり評判がよくないようですが」

高校生はたくさん来るよ。あと黄金騎士団。もう黄金騎士団の合宿所みたいなとこもある。

そのおかげか団員さんらはけがをしても治せるし、ガンガン強くなってて池袋ではブイブイ言わせてるみたいだし。強くなれるって噂も流れてて入団希望者が殺到してるって聞いたよ?

あれ、うちには希望者が来ないな……。

『ぐぬぬぬ、なぜハンターを呼ばないんだ!』

「ハンターは自分でダンジョンを選ぶ 権(・) 利(・) があります。危険性などを考えて行動するのは当然だと思いますよ。うちの墓地ダンジョンはスタンピードが頻発する危険なダンジョンですし」

ハンターは自由業なんでしょ? 個人経営者だってハンター講習で習ったけど?

リスクマネジメントはするよね?

『我々の言うことが聞けないと』

「押し売りはお断りなんですが?」

言うことって、ただ押し付けてるだけじゃん。もっと提案とかないの?

大人ってこんなクソなの?

「日本人相手に日本語が通じないのは悲しいですね。先日ですが、アメリカの商社からもポーションの引き合いがありまして、そちらのほうが高額で買い取りしてくれるそうなので、うちとしてはそっちに流してもいいのですが」

『貴様! 日本を捨てるのか!』

『何たる愚挙!』

『お前は何を言ってるんだ!』

なんか豚さんが怒鳴ってる。知らんがな。

「ポーションを入手してくるのはハンターなのでポーションの優先はハンターと考えています。ハンターは全世界にいますので「誰を」とか「どこの」とかは考慮いたしておりません」

どこかに流れたポーションはそこのハンターの傷を治すんだ。それが国内か国外かの差でしかない。

そりゃー心情的には国内だけどさー。こんなおバカさんの言うことは聞いてられないって。

協力もしない口だけの人間の言うことを聞く義理はないし。仏様だってお怒りmaxでラリアットしちゃうぞ?

「皆さんのように口だけ達者で自分が動かない人が多いようなので国内に見切りをつけてもいいかなーって思ってまーす。あ、頑張ってる高校生は最優先ですよ。これは譲れません」

おっと口が滑った。後ろで見てる高校生らが爆笑してる。俺はやる気のある高校生を優先するよ。

口だけデブはもう見飽きた。イケオジかバリキャリおねーさんはいないのか!

目の保養が欲しいよー。

『まぁまぁ。ヒートアップしすぎですよ、みなさん』

仲裁に入ったのは主宰してる総務省の偉い人だ。すらっとしてて背広がよく似合うイケオジだ。

俺はヒートアップしてないけどさー。

『ギルドの総意として、ポーションを増やしてほしいのは間違いありません。ただ、それが特定のダンジョンからが半数を占めるというのはバランスが悪いと思うのですよ』

まーそーよねー。

「獄楽寺です。口だけで増やせるならとっくに増やしてます。自分はギルド長ですがハンターでもあって毎日ダンジョンで魔物を倒しています。今朝も5時に起きてダンジョンの掃除をしてポーションも入手してきました。やることはやってる上での発言です。皆様はいかがでしょうか? 勤労に励んでおられますでしょうか?」

ラビットフットが手に入って美奈子ちゃん、葉子ちゃん、三島ちゃんや多賀城ちゃんでもゲットできるようになったのでポーションの入手量は増えたけど、そもそもオーガ骨だけが出るわけじゃないからね。俺が頑張ったところで増やせるもんでもないのよ。

そもそも智が【盗人】スキルを覚えた時から増やしてるんだけどね。

「ダンジョンに入るハンターを増やしたところで出現する魔物の数が増えるわけでもないので、意味があるか疑問ですが、えっと、総務省としてはどうお考えですか?」

『なるほど。確かに、ポーションは魔物のドロップ品でしかないから母数が増えなければポーションも増えないですな』

この人は日本語が通じるようだ。よかった。

まぁ、魔物が増えれば脅威も増すんだけどね。

「あの人は総務省の事務次官で、事務方のトップです」

「すっごく偉い人?」

「そうですね。権力争いに勝ち残った超腹黒官僚の鑑です」

「信用しちゃダメな人じゃん」

同じ穴のムジナやんけ。

京香さんの知恵袋には助けられるなぁ。

「自分が知ってる限りでは、オーガ、オルトロスがポーションをドロップします。この魔物が出るダンジョンにハンターを増員すればよいのでは? 当ギルドではすでに限界ですのでみなさまよろしくお願いします」

こいつらの話を聞いていても解決はしないだろうし、うちには日比谷もあるけど他のダンジョンに振ってしまえ。

『うちにもオーガは出るが……』

『オーガクラスを倒せるとなると、強いハンターが必要だぞ!』

『強いハンターが余ってるはずないだろう!』

知らんがな。ちゃんと育てなさいよ。

「獄楽寺ではハンターの育成を行っています。他のギルドで同じようなことをやっているところはあるのでしょうか? 甚だ疑問で、うちだけが苦労するのは理に叶いません。であるならば、ポーションの供給を停止してもよいのですけど?」

『な、なんたる言い草!』

「重ねて申し上げますか、やることはやっております。うちのようにハンターの育成に力を入れればドロップ品の入手量も増えるのではないでしょうか。獄楽寺からは以上です」

結局それからは堂々巡りで結論はでず。建設的な議論も提案もできないデブの存在価値とは?

「なんだかなーな結果だね」

「口は出すけど何もしないの典型的なフリーライダー理論でしかありませんね。無視すれば良いかと」

「有名どこはこんなのしかいないのかしらねー」

うちはうちで優秀なハンターを育てていこう。