軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.狂犬(わん)ちゃんがやってきた⑤

ダンジョンを出ても多賀城さんが起きないので左手で抱っこしながら寺に戻ると食堂で京香さんとエンカウントした。6時前だけどすでにメイド服でテーブルを拭いてくれてた。ありがたい。

「守君、浮気ですか?」

いい笑顔でにらまれた。コワイヨー。

「この子、お化けが苦手みたいで、ゴブリン骨も怖がってたんだけど、5階でレイスを見て気絶しちゃってまだ起きないんだ」

「……初心な娘を5階に連れて行ってはだめです。守君は意外にスパルタですね」

「スパルタのつもりはなくって。今日は地上にゴブリン骨がいて、墓地ダンジョンをしっかり掃除したかったんだよね」

その分ドロップ品はゲットできるけどさー。

「それは仕方ないですね。墓地ダンジョンを抑え込むのが一番の目的ですから」

「むにゃにゃにゃ」

多賀城さんがうーんと伸ばした腕が俺のあごにヒット。痛い。

ぱっちり目を開いた多賀城さんが俺を見てる。

「うぉぉぉなんでオレは抱かれてんだぁぁ!」

「はなせはなせ」とバタバタ暴れて腕からベシャっと落ちた。

「あいててて」

痛そうに腰をさすってる。

「多賀城さん、レイスを見て気絶したそうですが」

「そそそそうだ! 幽霊だろあれ! ぜってー幽霊だ! だって墓地なんだぞ!」

京香さんがかがんで視線を合わせて問うと多賀城さんは青い顔でキャンキャン騒ぎ始めた。レイスだし、幽霊に違いはない。けどね。

「うちのダンジョンはアンデッドしか出ない墓地ダンジョンだから。ともかく、朝ご飯にしよう」

俺はキッチンに入ったけど、ふたりはまだ話をしている。

「多賀城さん、レベルは上がりましたか?」

「お……上がってるぜ! 魔物を凹しても上がらなかったのに、ここに来たらすぐに上がったぜ!」

「それは何よりです。ここは【祈り】スキルと相性が良いので、できればここで活躍してくれると助かります」

「オレに任せとけ!」

多賀城さんはドンと薄い胸を叩いた。

一気にレベルが上がり10になったようで【大いなる祈り】も覚えたみたいだね。まぁ、あれだけ魔物が出てくれば、ね。

「っはよーございまーす」

「おはよっす」

「ざーまーす……」

7時くらいになると眠い目をこすりながらヒヨコ一同が食堂に集まってくる。まだ寝ぐせがついてる女の子もいる。

でも疲れた様子はない。若い。俺と2歳しか違わないけど。Aチームは元気にやってきた。

「朝はバイキング方式でよろしくー」

料理はひとつのテーブルにまとめておいた。目玉焼きにウィンナーたくさん、キャベツの千切りにミニトマトときゅうり、豆腐とわかめのみそ汁。ご飯のおかわりは自由だ。納豆はお好みで。

パンを食べたい人はセルフで焼いてもらう。

朝ごはん抜きは許しまへんでー。

「この子は多賀城さんと言って仙台第一のハンターコースの子で、智と同じ【祈り】スキル持ちでーす。卒業課題でうちにきてて、俺の手伝いをしてもらうので顔を覚えて下さーい」

「オ、オレは多賀城京子。よよよよろしくたのむぜ!」

俺が紹介するとみなの視線が多賀城さんに集まる。

「中学生?」

「髪の長い柏みたい」

「かわいい」

「あの子も佐倉みたいにゴリラなるのか……」

ぼそぼそと聞こえてくると多賀城さんの眉根が寄る。ついでに俺の眉根も寄ったぞ。

ゴリラとは何だゴリラとは。プリチーやろがい!

「オレは 子供(ガキ) じゃねえ! 高校生だぞ!」

高校生も子供です。

その後も多賀城さんはキャンキャンキャンと吠えてる。かわいい感じで迫力がなく怖くないので皆の視線が生ぬるい。こんなことも彼女のコンプレックスを刺激するんだろうなー。

「はいはい、この子はわたしたちが鍛えちゃうからねー。おちおちしてると抜かれちゃうわよー」

既にレベルは抜いてしまったけど。

そんなこんなで多賀城さんには俺の手伝いをしてもらう。午前中はタオル類と俺たちの洗濯だ。

「パパパンツ!」

俺のトランクスを広げて興奮してる。

「かわいい! オレもほしい……いや、オレには似合わねえな!」

京香さんの下着を見ても興奮してる。

「で、でけぇ! オレの頭が入りそうだ!」

瀬奈さんのブラに頭を突っ込んでる。

「よし、タオルを干したぜ! いやー働くってのはいいもんだぜ!」

やり切った顔の多賀城さんは額の汗を腕で拭った。洗濯物を干すのも面倒くさがらずにやる。

ヤンキーな恰好だけどヤンキーになりきれてない。見た目と同じくらいの精神年齢に思えてしまう。人のことは言えないけど。

身長と見た目でいじられた結果の自己防衛なんだろうか。

午後は瀬奈さんも買い物に付き合ってもらって、3人でショッピングモールに向かう。俺が食料品を買っている間に彼女の服と下着類を揃えてもらう。不足してるタオル類の補充もだ。

「服はいらねーって! オレ金持ってーし!」

「おねーさんは多賀城さんが カ(・) ッ(・) コ(・) イ(・) イ(・) 服を着たところを見たいなー」

「カッコイイ!? そうか、オレのカッコイイところを見たいのか!」

割とちょろい説得でスキップしながらアパレルゾーンに消えていった。

食材をカート2つ分買い込んだ後に合流した。瀬奈さんが両手に大荷物なのですかざす俺が預かって半分くらいを収納に入れた。

多賀城さんは制服のブレザーではなく買ったであろうロングのジャンパースカートに変わってて、申し訳ないけど背の高い小学生高学年に見えてしまった。

「へへ、カッコいいだろ!」

自慢げに長いスカートを振って見せてくる多賀城さん。余計に子供に見える、とは言えない。新しい服がうれしいのか、顔はにやけっぱなしだ。

「カッコイイネ!」

サムズアップしといた。

今日は智たちが札幌につく予定なので急ぎ寺へ戻った。