軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

42.狂犬(わん)ちゃんがやってきた④

「一概にそうとは言い切れませんが、ハンターは稼げると宣伝している側面もあって、貧困からの脱出のためにハンターになる人はいます」

「わたしもそうだったしねー」

京香さんの捕捉に瀬奈さんが同意する。

「俺とか、自宅にダンジョンができてしまった人は違うだろうけど」

数は少ないだろうけどいるんだよ。うちみたいに。

「ですが、ハンターとなってスキルを得ることで働くことができる側面もあります。特に戦闘向きではないスキルは日常生活で役に立ちます」

京香さんは【記憶】【速記】を持ってるしね。特に【記憶】がぶっこわれ系でしょ。人類という種の 壁(限界) を壊すくらいのインパクトだと思うよ。

「多賀城さんですが、3月には卒業式がありますし卒業課題もあるはずです。彼女の将来について、どう 手(・) 伝(・) う(・) のが良いのか、いつまでここにいるかも含めて考えてあげたほうが良いかと。私個人的な考えですが、墓地ダンジョン対応要員としてギルド預かりでもよいと思います。もちろん、彼女に仲間がいればそちら優先ですが」

「使えないスキルだからって迷惑かけないようにひとりでダンジョンに入ってたみたい」

「放っておくと何かをしでかす気がしますね」

京香さんが不安そうな顔をした。

「不幸な境遇は 魂の修行(輪廻) と考えても辛いことに変わりはない。本人が拒否しなければ、何か手を差し伸べるべきだと思う」

父さんが手を合わせる。

苦境は前世の行いの結果とは言うけど、自業自得なんて言葉で済ませたくはない。

「わたしの経験からだけど、高校卒業で親が支援をやめるわよー」

瀬奈さんがそうだったからね。であるなら、なおさら今のうちに手を打たないと。

「多賀城さんには俺の手伝いをしてもらいます。あと彼女をダンジョンに連れて行くのは俺がやるから。あの子、小さいわんこみたいで繋いでおかないと、どこに行っちゃうかわからないし」

俺の腕は短くて手も小さいけど、やれることはやるぞ。智に会わせたいのもあるしね。

翌朝。いつもの通り5時に起きて凍える寒さの中、竹ぼうきで墓地を掃除していく。ネックウォーマーとスパイダーシルクの肌着がめっちゃ暖かい。心もポカポカだぜ。

「さてダンジョンも掃除するかな」

「兄貴! こんな朝早くにどこ行くんだ?」

墓地を歩いてると後ろから多賀城さんがトテテテと追いかけてきた。昨日と同じブレザーの制服にスカートだ。服も買ってあげないと。

「おはよう、ずいぶん早起きだね。俺は毎日の墓地と墓地ダンジョンの掃除をしててね」

「ダンジョンの掃除? こんな朝から?」

「こんな朝にしかできないんだよ」

歩きながら説明する。ダンジョンがあるけどここは寺で、幼稚園もあること。ギルドはあるけど人数が少ないこと。市船のハンタークラスの子たちが来てダンジョンで鍛錬してること。なんかをね。

「墓地ダンジョンは魔物が多くて、きちんと間引かないとって言ってるそばから!」

ダンジョン入り口があるビニールハウスが破れて壁の代わりにしてた植木が散らばってる。犯人たるゴブリン骨が墓石をたたいてやがる。

「罰当たりめー!」

【師走】スキルで近づいて竹ぼうきで叩くいて収納即成仏。

「ここ最近はおとなしかったけど油断できないな。ビニールハウスも直さなくっちゃ」

「オ、オレが来たせいか?」

多賀城さんが涙目になってる。なんだろう、負い目でもあるのかな。

「多賀城さんのせいじゃなくってダンジョンのせいだから」

思わず頭をなでてしまった。

「あああたまをなでるんじゃねぇ! 子ども扱いするなぁ!」

わわわわんと吠えられてしまった。でもなでる。

「せっかくだし、ダンジョンに入ってく?」

竹ぼうきを収納して代わりに合金製金剛杖を取り出す。

「わ、ほうきが棒に変わったぜ!」

「俺のスキルが収納スキルでね。そこに入れておいたんだ」

「あー、兄貴は収納スキルなのか!」

多賀城さんの目がキラキラしてる。うう、純粋でまぶしいぞ。

それはそれとして。

「俺は兄貴なの?」

「なんか兄貴みたいだし! 昨日もダンジョンでオレが魔物にぶるってた時に前に立ってくれたし!」

「そっかー」

「かっこいいぞ!」

裏表のない笑顔を向けられるとくすぐったい。葉子ちゃんと同じ系統だ。境遇も似てる。

パーティ編成をしてダンジョンに入る。多賀城さんに経験値は分けないとね。

「やっぱりねー」

ダンジョンはゴブリン骨のすし詰め満員電車だ。だから地上に出てきちゃったんだな。どこかでスタンピードが起きたろこれ。

「ほほほ骨がいっぱい!」

多賀城さんが俺の背中にしがみついてる。やっぱりお化けが怖いんだ。

「すぐにやっつけるからさ」

投げ網で近場の骨を収納して、遠いところは炎のブレスで燃やした。

「す、すげー! 兄貴すげー!」

俺の背中から出てきた多賀城さんが騒いでる。君も【祈り】スキルで一網打尽にできるんだけど?

「多賀城さんも【祈り】スキルで同じようなことができるよ」

「ででででででもよー」

またも涙目になる多賀城さん。よほど苦手らしい。無理は禁物だね。

「まだ下の階も掃除しないとだめだから、戻っててもいいよ?」

「い、いや、オレもいくぞ! 怖くなんて、ないんだ!」

やっぱり怖いんじゃん。

2階もやっぱりすし詰めだった。こっちもかよ。

「うひゃぁぁぁ」「いやぁぁぁ!」「こっちくんなぁぁl!」ときゃんきゃん吠える多賀城さんだけど、一応スキルは使ってくれて、大半は光に消えた。お小遣いになるから落ちてる魔石は拾おうね。

「釘バットもってやがる! やんのかゴルァ!」

「あれはオーガ骨で、別に釘バットじゃないから」

「で、でけぇ骨だ! ガシャどくろだろあれ!」

「あれはワイトっていう魔物でね」

「ミ、ミイラ男だぁぁぁぁ!」

「マミーっていう魔物でね。まぁミイラ男でも間違いではないけど女性のミイラもいるからね」

「きゃぁぁぁおばけぇぇ!」

「あれ、【フィアー】にかかる前に気絶しちゃった」

多賀城さんは4階のワイトで悲鳴を上げ、5階のマミーで俺の腕にしがみつき、壁を抜けてきたレイスを見て気絶した。

「騒がしい子だ」

放置もできないので多賀城さんを左手で抱っこしながら右手で投網してマミーを減らしていく。軽すぎて片手で抱き上げられちゃう。

「うーん、今日はここも数が多い」

きりがないので【鎮魂の鐘】で動けなくさせて収納してまわった。合掌。

リザルト。

【ポーション×147】

【硬いこん棒295】

【収納:マッスルポーション×2】

【魔法書:フィアー×5】

【魔法書:サイレス×5】

【魔法書:キュア×1】

【綺麗な包帯×268】

結構な収穫だ。さて戻って朝食の用意をしないと。