軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

41.ヒヨコたちははばたく準備をする③

「卒業課題に行くにあたってー、ハンター祭りが配信されちゃって、あなたたちも顔が売れちゃったのねー」

「四街道とか佐倉じゃなくってわたしたち!?」

「俺たち!?」

智ら3人は、ギルド公式やらモデルやらで露出しちゃってるから有名になってはいるけど、まさか自分たち?って思うよね。

「千葉は公開告白してるしー、足立は寄居とバッチバチにやりあったわけでしょー。だいたい最初の障害物競争からしてやっちゃってるしねー」

と智を見た。智だけじゃないけどね。

「で、目立つといろいろ絡まれるのが目に見えてるのでー。ハイ京香ちゃん、よろしくー」

「バトンタッチされた京香です」

京香さんがぽんぽんとテーブルの上に魔法書を出した。その数6つ。なんだなんだと魔法書に視線が集まる。

「【カース】【ヒール】【キュア】の魔法書がそれぞれふたつずつです。各々1セットを渡すので、だれが覚えるかは話し合って決めてください」

「「「魔法!???」」」

「魔法って言っても、直接攻撃する魔法じゃないわよー。【ヒール】と【キュア】はイメージがわくと思うから【カース】の説明からねー」

京香さんから3つの魔法の説明があった。【カース】の効果が『呪いで身体能力を40%下げる』で、しかも発動させた人物が異なれば累積が有効とか。ぶっこわれだった。

これを使ってくるワイト君がやばい魔物だって、改めて認識した。那覇さんが魔法戦のいい経験になったって言うわけだ。

「ちょ、やばくね……」

「ふえぇぇぇ」

みなのドン引きな気配を感じる。

「【カース】に関しては、もちろん魔物にも有効だけど、これを渡す理由は逃亡用だからよー」

「出かけた先のギルドやダンジョンで悪意を持った輩に絡まれる可能性があります。その時に、争うのではなく逃げるのです。近寄ってくる悪意はさらなる手を持っている可能性が高いので、戦うよりも逃げるが得策です」

「這ってでもここに逃げてきなさい。守くんはじめ師匠も、もちろん私たちも、全力で何とかするわよー」

「ミサイルが飛んできても何とかするよ」

なんならダンジョンに逃げちゃえばいいんだし。日比谷ダンジョンなら瀬奈さんがボスを従えた女王様だし。

「そそそそんなにやばいんっすか!??」

「そんなのやだー」

9人はあわあわ取り乱しちゃってる。ポニーの4人は、夏に話はしてあったけど、魔法書を渡されていざその時となって不安を感じたんだろう。

そりゃそうだよ。悪いことなんてしてないんだし。悪いのは悪だくみをする奴だ。

「君たちは何も悪いことなんてしてないしー、人の恨みを買うようなこともしてないわよー。でも、【勇者】豊川とか日比谷の唐津が守くんに因縁つけてきたみたいに、話の通じない馬鹿はいるのよー」

「そのために強くなり、自衛しなければいけません。 獄楽寺(うち) に関係してしまったことが原因でもあるので、その責は私たちにあります」

「皆を守り切るくらいには強くなるからさ。何なら世界を相手に戦えちゃうし」

「下らんバカどもは俺が切り捨ててやる。やばいと思ったら逃げてこい。逃げるのは負けじゃねえ。最後に生き残ったやつが勝つんだ」

不安を払しょくするために、俺も零士くんも大きなことを言う。俺たちにだって絶対はないけど、彼らを守るのは俺たちの役目だ。

寄らば大樹。

がんばるぜ。

「お、おれは、強くなって八重を守りたくてここに来た。今だってその意思は変わらねえ。悪いとしたら俺自身で、守さんたちが悪いんじゃねえ!」

千葉君がテーブル叩いて立ち上がった。こぶしを震わせてだいぶオコだ。その怒りは俺とか彼自身でもなく、見知らぬ悪意にだろう。

「千葉がかっこよく見えるぞ?」

「渋谷、武志はカッコいいぞ? やらねーけど」

「はいはい、砂糖を吐きそうだよ」

渋谷ちゃんと品川ちゃんがじゃれてる。

「まー、俺も強くなりてぇてのは変わりないな」

「タケシにくっついて寺にきてなきゃレベルもあがってなかったろーし」

「強くなれば儲かるしよ」

「壊れねーこん棒ももらったし!」

館山君はいまだにオーガの棍棒を使ってる。リーチの長さも重さも硬さもいい具合なんだとか。壊しても替えがあるしね。

「男どもは強くなれ。嫌というほど鍛えてやる」

「「「「「あざっす!」」」」」

いくら金を積んだところで受けることはできない零士くんの指導だ。彼らは知らないだろうけどね。

一方、ポニーの4人はすでに誰が覚えるかの話し合いに入っていた。うろたえはしたけど、事前に話をしていたのが利いているんだろう。気持ちの切り替えも早くて、頼もしい。修羅場をくぐったから面構えが違う、とか言ったら怒られちゃうかな。

俺も頑張らねば。

「まずは【カース】だけど。誰が覚えるのが一番かな」

「太田でしょ」

「柏みたいに魔法を飛ばせるじゃん」

「だよね」

「えぇぇぇぇぇ!」

気の弱い太田ちゃんが悲鳴を上げてるけど、適任なんだよね。うちの3人の葉子ちゃんポジションで、後方から全体を見れるからね。魔法を飛ばせるのも強みだ。

ハンター祭りでも射撃ですごい成績だったんだし、実力者なんだぜ。

「じゃあ【ヒール】と【キュア】も太田かなぁ」

「魔法を使える奴は散らばしておけ。集中させるとそいつが気を失ったら困るぞ」

零士くんからのアドバイスが飛んだ。

「じゃあ、わたしが【キュア】を覚える。なんかわたしって役に立ってないしさ」

渋谷ちゃんが控えめに手を挙げる。ポニーの残りの3人が目を開いて驚いてる。

「渋谷だって戦ってるじゃん」

「いやほら、役に立ってないっつーか、足立も品川も太田もすげーなーって」

「わたしがすげーなら渋谷だってすげーって」

「わたしと渋谷の差なんて彼氏がいるかどうかじゃね?」

「くそ品川め、ここでも砂糖を吐きやがって!」

「彼氏持ちの余裕か!」

「……いいなぁ」

揉めてるのかじゃれてるのか判断つかないな。険悪ではないけど。

「渋谷。今のお前らじゃまだどんぐりの背比べだ。そもそもお前の言う『役に立つ』ってのはなんだ? 魔物をバッタバッタと倒すことか?」

零士くんが口をはさむ。渋谷ちゃんは具体的にどうなのかと答えられない。

「ハンターとはまったく違うが、サッカーなんてのは、得点を取るためのフォワードよりも守備のディフェンダーのほうが多い。守ったうえで得点を争うスポーツだ。戦闘も変わらん。魔物を倒したが同じ数だけ仲間が死んだら、それは勝ちなのか? 取返しのつかん失態だろ。魔物と違ってハンターはわいてこん。失った仲間は失ったままだ。だから、勝てるように戦うために、それぞれが得意なスキルで役割を分担する必要が出てくる。経験でしかないが、飛びぬけて強いやつがいるパーティよりも平均的に強いパーティが生き残る。その強いやつが毒食らったりして戦闘不能に陥って全滅するってのはよくあるパターンだ。強いやつのリカバリーができねーからだ」

零士くんの話を聞いて、みな黙り込む。

「師匠のパーティはどうだったの?」

気になって聞いてみた。