軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

38.日比谷からの客人①

俺が総務省に呼びつけられた次の日の月曜日。垂れ流してた音声はネットの片隅で話題になってたっぽいけど俺は知らぬ。興味ないし。

いつもの通り墓地の掃除とダンジョンの掃除を済ませた。瀬奈さんが管理する【日比谷ダンジョン】は墓地ダンジョン内に出してあって、零士くんが探索して地図を作ってる。踏破したけど走り回ってて地図は作ってなかったんだよ。あの時は時間との勝負だったし。

俺も一緒に潜ってワイバーンやら赤青ドラゴンやらエキドナを収納してドロップ品をゲットした。俺に隠れて美奈子ちゃんを連れて行ってるのを見たけど、黙っておこう。

「やったー! でたー!」

墓地ダンジョン3階でオーガ骨の集団を蹂躙した智が叫んだ。地面に転がる魔石に混ざってポーションがあったんだ。5体成仏させて1個ではあったけど、いままでは0個だったんだから、とんでもない変化だ。

俺に比べれば数は少ないけど、それは問題じゃない。ポーションときれいな包帯の増産(?)が見込めるのでビッチさんへの卸を増やす予定だ。

「これであたしも役に立てるね!」

って智がうれしそうな顔してるけど、すでに君は役に立ちまくってて俺が役立たずで捨てられそうなんですが?

捨てられたくないので頑張ろう。

「俺の奥様方がやばい件」

京香さんが焦ってる感じだけどそもそも京香さんが持ってくる情報は重要なのだ。しょんぼり気味だったのでぎゅーとお姫様抱っこ他でご奉仕した。たっぷり念入りに溶かしました。

そんな夕暮れ時。そろそろ智たちが帰ってくるかなーって思ったとき、母屋のインターフォンが鳴った。

「こんな時間に来客は、ないよなぁ」

「予定はありませんね」

京香さんも知らないという。誰だろうと画面をのぞいたら、見知らぬ制服姿の男女がいた。今時珍しい詰襟の学ランだ。清潔な髪形のほっそり男子と黒髪ストレートでちょっと強張った顔の女の子だ。

「日比谷高校の制服ですね」

「うちに文句を言いに来たのかな」

ともかく対応しよう。玄関を開けて挨拶だ。

「急な訪問で申し訳ありません。僕は日比谷高校ハンターコース3年の由比ヶ浜といます。この子は三島です」

ふたり揃ってぺこりと頭を下げる。

「俺はギルド長の坂場です。こちらはギルド職員の京香です」

「妻兼メイド兼ギルド職員の京香です」

「こっちはプライベートな空間なのでこっちでお話を聞きますよ。日比谷ダンジョンの件でしょ?」

「あ、はい」

京香さんは中から移動してもらって、俺がふたりを寮の入り口に案内する。母屋は基本的に家族だけなんよ。その中には零士くんも入ってる。当然でしょ。

食堂に行けば北国分さんがドロップ品に埋もれてウヒーウヒーしてた。もう見慣れちゃった。

「北国分さん、ちょっとお邪魔するよ」

「北国分さん、お久しぶりです」

「ギルド長お疲れですー。あ、由比ヶ浜君に三島さんだ。あれ、ここって日比谷だったっけ?」

北国分さんはさっとよだれを拭いた。

彼の顔は知っているようだね。まぁ、日比谷ダンジョンに顔を出してればそうなるよね。

「ふたりとも、お茶を出すから適当に座って」

「あの、お構いなく」

「遠路はるばるこんな田舎まで来たんだから、休憩は必要でしょ。はい座って座って」

「は、はい。では失礼します」

礼儀正しいなぁ。あのデブ3人に爪の垢を飲ませてやりたい。ガフガフ言うまで飲ませてやる。

お茶と菓子を用意すれば京香さんも来た。何やら資料を持ってる。

「おまたせ。ほうじ茶とどら焼きね。小麦がだめならせんべいがあるから」

「いえ、お構いなく」

「うーん、硬いなぁ」

「守君、話を進めましょう」

京香さんにせっつかれちゃった。

「今日はどんな話なのかな?」

なるべくフレンドリーに切り出す。日比谷ダンジョンがなくなったことの原因は俺にもあるはあるんだしね。日比谷高校については責任を感じてる。

「あの、実は昨日の総務省との配信を聞いていまして」

「アレを聞いてたんだ。あいつら、ひどい大人だよね」

「えぇ。ダンジョンのことばかりで、僕らのことは何も考えてない感じでした」

由比ヶ浜君は明らかにがっかりな顔をする。

そりゃそうだよね。ハンターコースだったら最寄りのダンジョンで授業とかもあるだろうし。そもそも近くにダンジョンがあるからハンターコースを作ったんだろうしね。

「自分たちで動かないといけないと感じました。僕らの学年はいいんです。年明けから各地のダンジョンに行きますから。困るのが来年3年になる生徒で、彼らが苦労するのは避けたいのです。獄楽寺ではダンジョンを所有していると聞きました。わがクラスメイトが発端になった結果なのでお前らが何を言うかとおっしゃりたいでしょうが、何とか後輩を助けていただけないでしょうか」

由比ヶ浜君は終始丁寧な姿勢を崩さない。彼らから見たら俺なんて戦犯だぞ?

金に目がくらんだ大人よりもよほど立派だ。見習いたい。

「こちらから聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「どうぞ」

「ダンジョンがないと困るのは理解してる。で、そのダンジョンは日比谷ダンジョンでないと困るのかな?」

「いえ、正直言いますと、日比谷ダンジョンは我々ハンターコースの生徒には手に余るといいますか、僕らのレベルが低くて魔物に対応できていませんでした」

あそこはランク3のダンジョンだったっけ。船橋が2だから、ちょっと厳しいのかな。

「由比ヶ浜君はレベル2で三島さんはレベルは1ですね」

「うちに来る前の千葉くんくらいかな」

京香さんからこっそり情報が。

なるほど、魔物を倒せないからレベルも上がらないと。

「うちがやれるとすれば、【いわきダンジョン】か【備後ダンジョン】を置くくらいなんだけど」

「これが資料です」

京香さんが持ってきたふたりに資料を渡す。那覇さんに渡したのと同じやつだ。ふたりは肩を寄せ合って資料を読み始めた。

おや、距離が近くはありませんか?