軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

37.国から呼び出された②

「早速だが、日比谷ダンジョンを返してほしい」

乃木坂氏が強い口調で言ってきた。脅しのつもりらしい。

「ダンジョンは踏破したので持ってません」

事実で返す。乃木坂氏は表情を変えない。

「なぜ踏破したのかね」

道玄坂氏に変わった。中年ファットマンに変わりはないけど。

「全国に配信する形で喧嘩を売られましたからね。喧嘩を買うついでに踏破してしまっただけですよ。それと、踏破することに法的制限はないはずでは?」

これは葉介さんからの入れ知恵だ。ダンジョンに入るためにはいろいろ法律があるけど入ったらほぼ治外法権だし、踏破に関しては制限も罰則もないんだって。法律に詳しい人がいるのは助かるよ。

「ふん、なぜ喧嘩など買ったのかね。くだらんと思わないのか?」

今度は赤坂氏にタッチした。こいつが一番高圧的だ。この中では一番偉いのかもしれない。

「デマは都度反論してつぶさないといけないんですよ。それに刑法上の名誉棄損にあたる行為ととりましたので訴訟中です。こんなことする相手はモラルもないと思うんですが、喧嘩を売った方には何も言わないですか?」

訴訟中というのは知らなかったのか、デブ3人にはちょっと動揺が見えた。シゴデキ女史は無表情のままだ。

「ダンジョンがなくなったがための損失はどうするつもりだね」

「具体的な金額を提示してくれませんか?」

「道玄坂」

「は。日比谷ダンジョンの売り上げは年間20億だ」

「それだけですか? うちが1か月頑張れば稼げそうな額ですね。日比谷ダンジョンから出ていた分の魔石は獄楽寺が補填しましょう。ドロップ品なんかはハンターが他のダンジョンに分散しますから、トータルではさほど変わらないのではないですか?」

エネルギー源たる魔石は補填したるわい。文句はないでしょ?

「むぅ、それは困る」

「魔石の供給は滞りませんし、なんならうちがそれ以上の納入をしますよ?」

「魔石の問題じゃないんだ!」

「そうだ! そこじゃない!」

何が困るんだか。お怒りってことは、こいつらにも裏金が回ってるんだろうなぁ。

その裏金のせいで、どれだけの人が不幸になったのやら。もはや現世においても餓鬼道に落ちてしまっているんだろうなぁ。

っと、こっちからも聞かないと。

「日比谷ダンジョンを利用していた日比谷高校はどうするんですか?」

「日比谷高校か」

「所轄が違う。あれは文科省だ」

「東京都じゃないのか?」

「そんなことはどうでもいい」

「ダンジョンがなくなってしまったのが大問題だ」

なんだよ、知らねーのかよ。つーか考えるつもりはないのか。

なんかムカついてきたな。小悪党よりも将来を担う高校生のほうが大切でしょが。テーブルをばぁんしたくなるけど自重自重。

そういえばシゴデキ女史は無言だな。ちらっと視線をやると、俺をじっと見てるようだ。目が合った。

んー、俺を観察または 鑑(・) 定(・) してるのかもしれない。見れるのはレベルと熟練度だったかな。

あ、いつの間にか熟練度が2になってたんだよね。俺だけじゃなく、智も美奈子ちゃんも葉子ちゃんも。スキルを使えば使うほど、熟練度は上がるのかもしれない。

「そういえば、唐津親子はどうなりましたか? 警察に連れていかれた後の音沙汰がないようですが」

「唐津? そんな奴は知らんな」

「俺も知らん」

「同じく」

おっと、尻尾切り?

こっちはスキルを保持してるかが気になってるだけで、消息自体はどうでもよかったりするんだけど、知らんぷりは非道いなぁ。あなたたち、甘い汁を吸ってたんでしょ?

消息といえば船橋で智に暴言はいた上に襲い掛かった馬鹿どももわからないままだな。犯罪を犯したハンターについては厳罰となってるから、まぁそうーゆーことなんだろう。

「ともかく、我々としてはダンジョン踏破に抗議する」

「ダンジョンは資源だ」

「どうしてくれるんだね!」

おっさんらが憤慨し始めた。知らんよ。

くだらない話ならもう切り上げだね。

「平行線みたいなので、もう終わってもいいですかね。こちらも暇ではないので」

「なんだと!」

「たかが零細ギルドのくせに!」

「生意気な! 詐欺師風情が!」

なんだかなー。もう感情論になってるじゃん。官僚って頭がいいんじゃないの?

言葉が通じないなんて魔物と同じじゃん。

さて帰ろうかな。

「あ」

何もない床を見て声を上げた。と同時にそこに【いわきダンジョン】を置いた。カーペットの床に苔むす石階段が現れた。違和感さんが仕事しすぎです。

「だだだだだ」

「ダンジョン!!?」

「なななんでこんなところに!」

デブ3人が脱兎のごとく逃げ出した。シゴデキ女史は椅子から滑り落ちてアワアワしてる。

「そ、そんな、【いわきダンジョン】が……」

「おや、おわかりになる?」

この人はやっぱり鑑定持ちのハンターか。

「俺に何か見えましたか?」

シゴデキ女史の脇に立って見下ろす。おたおたしてて、シゴデキ風だったけど強気が崩れてなかなか可愛い。

「レレレレベル、26……」

「正解です」

「熟練度2……なんで、半年も経ってないのに」

「さー、なんででしょうねぇ」

【鑑定】で見える情報は、熟練度が上がると増えたりしないのかな。京香さんに聞いてみよう。

「おねーさんはどこのギルド所属なんですか?」

「ひぃっ」

おねーさんは足をバタバタさせながら後ずさりしていく。パンツスーツだから見えないけど、足は閉じたほうがいいですよ。

「教えてほしいなー」

「わわわわわたしは迷宮局ののの、専属でで」

「なるほど、彼らとは違って甘い蜜は吸ってないっぽいね。驚かしてごめんねー」

頭をなでなでしてごまかす。向こうが年上だけど。

【いわきダンジョン】を収納して帰りましょうかね。

「では失礼しますねー」

勝手に部屋を出て帰った。この音声がネットに垂れ流しだけど、いいよね。