軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.踊るギルド内会議③

「先輩!」

「おねーちゃん!」

京香さんと智が止める間もなく使ってしまった。俺も動けなかった。妊娠してるのもあるけど、瀬奈さんが活躍できてなかったから、気にしてるのはわかってたってのは言い訳だ。

「んーーーーーー」

指でこめかみを抑えて何かをこらえている瀬奈さん。慌てて彼女の手を握る。京香さんと智、そして美奈子ちゃんが瀬奈さんのそばに寄ってきた。瀬奈さんを見守るだけで何もできない時間が過ぎていく。

1分近く唸っていたろうか。瀬奈さんの顔が和らいだ。

「はーーーー、きつかったわー」

瀬奈さんが大きく息を吐き、肩が下がる。

「瀬奈先輩!?」

「おねーちゃん!?」

「先輩!」

「出産もこんな感じなのかしらー」

瀬奈さんがとぼける。

「瀬奈さん。体は大丈夫ですか?」

「体は大丈夫よー。ちょっと情報が多すぎて頭が痛くなっただけー」

瀬奈さんが俺に寄りかかりつつにこっとする。無理は……していなさそうだけど。

「瀬奈先輩。本当に大丈夫ですか?」

「京香ちゃんは心配性ねー」

「伊達に何年も後輩をやってませんから」

「んー、大丈夫よ。今から説明するから座ってー。あ、守くんはそのままっていうかぎゅーしといてー」

問題ないと言うけどぎゅーを求めるあたり不安はありそう。よし、ぎゅーしよう。

「えっとねー、簡潔に言うと、日比谷ダンジョンを出せるようになりましたー」

瀬奈さんの言葉に「やっぱりか」「は……理解が追い付かないですが」「もしかして日比谷にチャレンジできる?」という声が。

その後も説明が続き。以下が判明した。

・マスターはダンジョンの出現消滅を自由にできる(出現させると24時間は消滅できず)。

・ダンジョンボスは存在する。

・マスターはダンジョンボスを 従(・) え(・) る(・) 。

・ボスが倒されるとダンジョンは 撤(・) 去(・) される(再生可能)

・魔物の管理はできず、スタンピードは発生する。

・マスターは魔物からは認識されず、襲われない。

・マスターはダンジョンをフロアごとに視認できる。

・ドロップ品の管理はできない。

俺の所有とはまた違うみたいだけど、これはこれですごい。特に魔物に認識されず襲われないのはでかいし、ダンジョンボスを従えちゃうのはワイルドカードすぎる。日比谷ダンジョンにおいて神を意味する。さすがダンジョンマスター。

「勝浦に限っちゃ、日比谷ダンジョンに逃げ込めば身の安全が確保できるってことか」

零士くんが顎に手を当て何かを考えている。

「わたしの苗字はそろそろ坂場に代わるのよー?」

「そこじゃねえだろ」

「呼び方は大事よー? あたしは瀬奈。妹の京香ちゃんと智だからねー」

「わかったわかった」

零士くんが手をあげて降参した。年下なはずだけどおねーさんは強い。

「魔物の管理はできないってことは、ダンジョンの管理権限ってことですかね」

「そうねー、マスターキーはあるけど個別のプライバシーにはアクセスできないマンション管理組合な感じかしらねー」

例えが微妙だ。でもそんな微妙具合なんだろう。

「実際にどうなのかは調べていきましょう」

京香さんが〆た。

「最後に、唐津が持ってたユニークスキルの【盗人】スキルだけど。イメージは悪いけど収納の肥やしにするにはもったいないかなーって」

「【盗人】スキルは、相対した魔物のドロップ品を盗めるという説明になっていますが、おそらく対人でも可能なのでしょう」

京香さんの補足説明。さすがは知恵袋。

「じゃあ、あたしが【盗人】を覚える。【祈り】で骨を一網打尽にしてもドロップ品をゲットできるかもしれないんでしょ? 守の次に魔物に遭遇する回数が多いのはたぶんあたしだし。アンデッドにしか使わないから、正直罪悪感は感じないかなって」

智がスキル書に手を伸ばした。

智がオーガからポーション、マミーからきれいな包帯をゲットできるようになれば俺の負荷は減る。そして智がドロップ品をゲットできればポーションの供給体制が改善される。いいことしかない。

智の負担を考えなければね。

「守はあたしの負担が増えるって思ってるでしょ? 大丈夫よ、やることは今と変わらないんだから」

智に先制されてしまった。

「確かに、俺も助かるし、ポーションの供給量が増えればハンターにもいい影響だとは思う。でも、智が無理をする必要はないからね?」

「それはわかってるけど、守の嫁として、おねーちゃんたちに負けるわけにもいかないからさー」

智がちらっとふたりを見る。

「あら、言ってくれるわねー。負けないわよー?」

「む。次にダンジョンマスターのスキル書がでたら私の番です」

受けて立つという空気のふたり。仲よくしてね?

「お前ら、揃いも揃って人間を辞めすぎだ。何になるつもりだ?」

零士くんもあきれてる。

「守くんひとりに頼ってちゃ嫁失格よー。共に歩いてこその嫁よー」

「私はどこまでも ご主人様(守君) についていくのみ。そのためならば何でもします」

「人を辞めるのにもひとりじゃ寂しいだろうし、あたしもついて行ってあげるわよ」

3人がお互いを見ながらフフッと笑う。嬉しいけどガンギマリ過ぎててちょっと引くんですけど。

「そこまで言うなら止めねぇ。俺だから言うがな、人間は死んだら終わりだ。悔いのないようにな」

零士くんが肩をすくめた。

零士くん、それ、君にも降りかかる言葉だよ。隣で「絶対に曲げない強い意志を固めました」って顔の美奈子ちゃんがいるからね?

覚悟しようね?