軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

36.踊るギルド内会議①

柏葉子は今日も空を飛んでいる。冬の暗い空を、眼下に街の明かりを見ながら、海を渡ってくる冷たい空気を切り裂きながら。

「きっもちイー! 」

頭はバイクのフルフェイスヘルメット。体はもこもこのダウン。制服のスカートに冬用ジャージを履く。手には矢を5本。なんとも奇妙な格好で葉子は空を飛んでいる。

葉子が飛んでいるのは【飛翔】魔法でだ。日比谷ダンジョンのワイバーンからのドロップ品である。

首にぶら下げたGPS式速度計は時速60キロを示していた。

「よーし、飛んでケー!」

葉子が手に持っていたカーボン製の矢を5本放り投げる。

「ついてコーイ!」

ばらばらに放り投げられた矢は急激に姿勢を変え、葉子をぐるっと囲うように位置どった。

「よーし、イーゾー。1本メー!」

葉子がヘルメットの中で叫ぶと1本の矢が急加速して前方にカッ飛んでいく。さながらミサイルだ。

飛んで行った矢は急旋回を繰り返す超機動をする。

「ヨシ、【サンダー】」

葉子が指示すると、矢の先から電撃が迸る。20メートルほど稲妻が走り、消えた。

「やった! デタ!」

ヘルメットの中で葉子ウシシと笑う。

「カエッテコーイ」

電撃を放った矢は緩やかな軌道で葉子の手元に戻ってきた。

「イーコイーコ。それ次ダー!」

2本目、3本目の矢が同じように急加速し飛んでいく。矢を 発(・) 射(・) した葉子は戦闘機のようにバレルロールで横に回転して位置を変えた。

そんな機動をした葉子の手に矢が戻ってくる。4本目5本目も同様だった。

「新しいスキルもだいぶ慣れたゼ」

ヘルメットの中で葉子は「スケ兄に褒めてもらえるゾ」と笑顔になる。

ポケットに入れてあったタイマーがぶるぶると大きく震える。タイマーは25分が経過したことを示していた。

「時間ギレー。降りルカー」

葉子は寺がある方に旋回して緩やかに速度を落としていく。寺の上空で静止した葉子はゆっくり下降する。下には兄である葉介が上を向いて心配そうな顔をしている。

ふわふわと舞い降りた葉子は「えいヤッ」っと着地した。

ヘルメットを脱ぎぷはーと息を吐く。暑かったのか、ベリーショートの金髪から湯気が上がっている。

「ようちゃんおかえり」

「楽しかっタ!」

葉子は手に持った矢を放り投げ、葉介に抱きついた。ゴロゴロゴロと喉を鳴らし猫のように甘える。

葉子がこんなことができるようになったのは、数日前に獄楽寺で開かれた会議の末である。彼女のレベルが11になり【増速】スキルを覚えたこともあるが。

ではその会議はどうだったのかというと。

日比谷ダンジョン踏破はかなりの衝撃だったようで、総務省という、名前は聞くけどどんな仕事をしているかわかりにくいところから召喚命令がきた。

ちょっと来て話を聞かせろ、という内容だ。

あまり寺を空けたくないんだけどなー。

「ということで、集まってもらいました」

寮の食堂に寺ギルドの一同が集まる。

俺、奥様ズの3人、美奈子ちゃん、葉子ちゃん、零士さん、葉介さん、北国分さんだ。

零士さん(ショタ形態)と初対面になる北国分さん。気になるようでしきりに視線を送っているけど、零士くんの隣に陣取ってる美奈子ちゃんにがっちりガードされてる。北国分さんもショタ属性か?

「守、何の集まりだ?」

おはぎをもぐもぐする零士くんから質問が飛ぶ。ごもっとも。

「実は、日比谷ダンジョンを踏破したときにゲットした魔法とスキルをどうするか決めてません。ので、集まってもらって決めようかなーって」

「ふむ、【ヒール】とかか?」

「それもありますけど【飛翔】【サンダー】【自己治癒】【シャイニングブレス】【ダークネスブレス】【日比谷ダンジョンマスター】それと、極秘ですけど、唐津の【盗人】スキルもゲットしました」

「ハイ守君質問!」

「京香さんどうぞ」

「【ダンジョンマスター】までは聞いていましたが【盗人】は初耳です。経緯の説明を」

シュタッと挙手した京香さんが問い詰めてくる。こちらもごもっとも。あまりにも影響が大きすぎて俺も説明してないんだ。

「【盗人】に関しては、唐津が襲ってきたときに、何をしてくるのかわからなかったので収納って念じてたらあいつのスキルを収納しちゃいました」

「あーあの時のって、そんなことになってたの?」

智は単純に驚いただけだけど、瀬奈さんと京香さん、零士くんは難しい顔をしてる。

「守くん、このことは絶対に口外しちゃだめよー?」

「守君の身が危うくなる」

「人のスキルを収納可能となれば、 海(・) 外(・) も(・) 黙っていないだろう」

「ですよねー。そこは俺でも予想できたんで黙ってました。ただ、今の唐津がスキルを 持(・) っ(・) て(・) い(・) る(・) かが不明なので、奪ったのかコピーしたのかがわからないんですよ」

まぁ、なくなってたら大騒ぎすると思うんだよね。

「それと、スキルなら何でも収納って感じではなくって、例えば闘刃なんかはそのものは収納できるけどスキル書としては無理なんじゃないかって気がする。俺の体が触れる、相手が仕掛けてくる、って感じの条件はあると思う」

「クラン唐津組は強制解体。唐津氏は警察に身柄を拘束されて行方知れず。確認が取れません」

京香さんの言う通りなんだ。警察の動きは速かった。あいつが目覚めたと同時にどこかに連れ去られていった。裏で何かしてる組織がありそうな気がする。

「それは、呼び出された時に聞くかだな。呼び出したんだから情報くらいよこせってな」

指についたあんこをなめとってる零士くん。その指をさらにハンカチで拭く美奈子ちゃん。お母さんだぞそれ。

「……それは、おいおいわかることかもしれません。私もギルドのサーバに潜って調べてみます」

イリーガルメイドさんがそんなことを言う。

「えっと、話を戻すけど、使ってない魔法書とスキル書をどうするかの相談がしたい」

ということで強引に話を進める。

「俺は魔法もスキルも覚えられないから除外だ」

零士くんは早々にリングアウトしてせんべいを食い始めた。アドバイスはくれるっぽい。

「じゃあ【ヒール】から決めていこうか。俺はどんなんだか調べるために覚えちゃってるからね」

「【ヒール】はここにいる全員ねー。悪用できないしー、あっても損ではないしー、地域で災害が起きた時も力になれるわー」

「墓地ダンジョンを進んでいけばゲットできそうな気もしますし、まずうちの人員に使うのは賛成です。できればお義父さまにも」

瀬奈さんも京香さんも地域のことまで考えてくれる、ありがたい。大好きです。

「あああああの、私も、いいんですか? 来たばっかりのペーペーですよ?」

北国分さんが控えめに手を挙げた。

「ギルドにいるならば、覚えてもらったほうが、いろいろな場合に対処できます。常にポーションを携帯しているわけでもありませんし」

「幼稚園もあるしねー。とれる手段は多いほうがいいわー」

ということで決定された。みなに配って即使用する。

余剰が出たので、ひとつはビッチさんへの賄賂に使われることになった。また「き、きたないですわ!」って言うんだろうな。いいじゃん、信号機の3人がけがした時も使えるんだから。