軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

32.売られたケンカは買います(ニッコリ)①

ハンターコースを開設している高校は市船だけではない。実は全国に6つあり、一番古いのが都立日比谷高校ハンターコースだ。日比谷公園ダンジョンをホームとしている。

古いといっても1年しか変わらないが、自分たちこそ先駆者だと言わんばかりにプライドを持っている。

だが、そのプライドは、市船秋のハンター祭りで木っ端微塵になってしまった。

ハンターランク(ハンター未満)でトップ3を市船が独占したからだ。

「市船のアマがハンターランク1位だと!?」

日比谷高校3年の唐津雄一が机を蹴って叫んだ。

詰襟の学生服に特徴的な天にそびえる金髪リーゼント。小さく切りそろえられた眉が歪んでいる。

155センチと低い身長を激しく動かし、地団駄を踏んだ。

「俺が苦労してレベル7なのに、なんで市船の奴のほうがレベルが上なんだよ!」

唐津は残った椅子も蹴った。クラスメイトは遠巻きに戦々恐々としている。

高校生でレベル7は、本来であればあり得ないほど高い。ぶっちぎりで1位なはずなのだ。

「くっそ、ふざけやがって! こんなのインチキに決まってんだろ! お前もそう思うよな!」

「え、えっと、はい、そう思います!」

唐津はおびえている男子生徒を捕まえ、胸ぐらをつかみながらそう詰問する。男子生徒は汗だくになりながら答えるしかなかった。

「チッ、親父に相談だ」

唐津は授業を無視して教室を出て行った。

学校を出た唐津が向かったのは日比谷ダンジョン。そこのギルドに父のクランの事務所がある。彼がさぼるときはそこにしけこむのだ。

「邪魔するぜ」

ギルドの受付を顔パスした唐津はダンジョンがある待合場ではなく、ギルドの事務所に向かう。階段を上り廊下を歩いて「唐津組」と看板がある扉の前まで来た。

襟と髪型を整え、扉を開ける。

「親父、いるか?」

「おう、雄一か。どうしたぁ?」

扉の向こうは、15畳ほどの応接室になっていて、場末のスナックのようなソファが置かれ、そこにだらしなく横になってる中年男性が答えた。

無精ひげで、シャツのボタンが開けっ放しでだらしない腹が丸見えだ。彼も金髪だが顔が純日本人で似合っていない。

「親父、市船のアマがハンターランク3位までを独占してるって知ってたか?」

「あー、それなぁ」

唐津の父、慎吾が頭を掻きながら面倒くさそうに起き上がる。

「市船のハンター祭りを見たけどよぉ、到底信じられねぇな」

「そうなんだよ。インチキしてんじゃねーのか?」

「あー、あの子らは獄楽寺関係だろぉ? 何か不正でもしてるんじゃねえのかぁ?」

慎吾がニヤニヤしながら胸ポケから煙草をとった。

「墓地ダンジョンだからいろいろドロップ品が出るって言うけどよぉ、俺みたいな特殊なスキルを持ってるわけじゃねえんだ。不思議だよなぁ?」

「それだよ。ぜってぇ何か不正してんだよ」

雄一がリーゼントに手を添え整える仕草をする。この時の彼はちょっと不安で、心を落ち着かせるために髪形を直すのだ。

「よぉし。かわいい息子のためだ。一肌脱ごうじゃねえかぁ」

「い、いいのか親父!」

「おうともよ。悪党を野放しにしちゃおけねえだろぅ? それにお前は彼女もいなかったな。市船のあの3人なんていいんじゃねぇのかぁ?」

慎吾がニチャァと笑う。

「おおおおおぅ、そうだな! あの3人なら、俺にぴったりだろ!」

雄一が顔を赤くしながら何度も頷く。

「はは、俺に任せとけ」

慎吾がドンと胸をたたいた。

ハンター祭りも終わり、市船ハンターコースは、少々気が抜けていた。現に朝のホームルームでも担任から「12月半ばの期末試験が高校生最後の試験だぞ!」と言われてもみな上の空だった。

そんな弛緩しきった空気をぶっ壊すような声が教室に響いた。

「ちょ佐倉、これ、これ見て!」

ポニーの足立がスマホをもって興奮気味に声をかけてきた。

「あによ、どうしたのよ」

「これよこれ!」

佐倉はスマホを見せられる。

そこには見知らぬだらしない中年と時代錯誤的なツッパリ男子が映っている。その横には司会なのかスーツ姿の女性がいる。

「こいつらがおにーさんを不正だってハンターTVでわめいてるんだよ」

「不正?」

途端に佐倉の眉間に皺が寄る。

『ユニークスキルの中でもとびっきり特殊なスキルを持ってる俺ならいざ知らずぅ、ぽっと出のガキがドロップ品をバカスカ納品してハンターの売り上げ1位はおかしいんですよぉ』

『なるほどなるほど』

『俺としちゃぁ、不正は見逃せないんでぇ、白黒はっきりさせなきゃと思ってるんですよぉ』

『わぁ! 正義の発言ですね』

『だからよぉ、日比谷ダンジョンでドロップ品で勝負して、化けの皮をはがしてやろうかと思ってなぁ』

『うんうん、それは公正ですねぇ』

『で、挑戦状を送り付けたんですよぉ。不正じゃないなら出てこいってぇ』

画面の中の中年がニチャァと笑う。佐倉は嫌悪感で頭を後方にそらしスマホから距離をとる。

『それとねぇ、今のハンターランクでもあそこに関係してる学生がおかしいなぁって思っていてぇ』

『おっと、それは現在ランク1位の佐倉智美のことでしょうか?』

『それと2位と3位もおかしいですよぉ』

『そうだぜ! 努力してる俺がレベル7なのにもうレベルが16だとか24だとか、おかしすぎるぜ!』

中年と女性の会話にツッパリが割り込んできた。このあたりで教育が足りてないのが露呈しているが女性はスルーした。

『彼女らも不正だと?』

『うちの鑑定持ちが見たわけじゃないんでぇ、何とも言えませんがねぇ』

『不正だった場合、大問題ですね!』

『彼女たちの今後がぁ、心配ですよねぇ』

『ユニークスキルを持ってる俺の彼女枠なら空いてるぜ。3人まとめて嫁にしてやるよ』

その言葉を聞いた佐倉の額にはぶっとい青筋が浮かんだ。

「……こいつら誰?」

佐倉の口からは予想以上に低い声が出た。

「日比谷高校のハンターコースにいる唐津ってやつね。レベル7であっちでは一番強いって話」

「ちょっと日比谷に行って教育してくるわ」

佐倉が立ち上がると足立が慌てて肩をつかむ。

「ちょっと佐倉! 落ち着きなって!」

「守をインチキ呼ばわりしたんだからわかってるんでしょこの馬鹿ども」

「ひぃ」

足立は佐倉の背後に鬼を見た。

「だから待ちなって! まったく、佐倉はおにーさんのことになると般若になっちゃうんだからー」

「……智が行くならわたしも行くわよ」

足立が説得中にもかかわらず、刀を2本担いだ四街道が参戦した。足立の顔が青くなっていく。

「よーし、殴り込みダゼー!」

柏もノリノリだ。

なんでこんなに戦闘民族なんだよ!

足立はめまいで倒れそうだった。