軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

31.備後ダンジョン譲渡⑤

念のため墓地ダンジョンの4階まで掃除してから1階にダンジョンの階段を出現させる。いわきも備後も同じ石造りの階段なので看板でもつけたい。両方を同時に出したら間違うよね。

「さて行くか」

感慨も感想もなく零士くんは階段をおりていく。出る魔物の内で強度を確認すべきはサンダーボア、サーベルタイガー、白狼なので一気に5階までおりていく。

「見通しが悪いからいい鍛錬ができそうだ」

零士くんが悪い笑顔になる。鬼教官のツボに入ってしまったようだ。

「さっそく出しますよー」

「おう」

零士くんは大蛇丸を出して肩に担いだ。

まずは1体でお試しだ。

5階の見える場所にサンダーボアを出現させる。プギャー!と吠えながら襲ってきた。

サンダーボアの体にまとわりつくバチバチが大きくなり零士くんに向かって発射された。

「ふむ」

零士くんは迫る雷撃に対して大蛇丸を振り下ろす。バチィッ!っと激しい音がして雷撃が消えた。

「なるほど。もっと撃ってこい」

「ブモモォォ!」

サンダーボアが突進する。充電が必要なのか雷撃を撃たないまま突っ込んでいく。

「よっと」

当たる寸前に零士くんは体を横に逃がし、その代わりにすれ違いざまに足払いをする。

「プギャァァァ!」

サンダーボアはものの見事に転んで顔を地面に打ち付けたままズサササっと2メートルほど滑っていく。

「初撃の雷さえかわせればあとはただのイノシシだな」

サンダーボアはもんどりうった後に立ち上がり零士くんを睨みつけた。そしてまた突進してくる。

「芸のない奴だ」

サンダーボアはまた転がされた。

突進しては転がされ、起き上がってはまた突進。

「どっかでみたことがあるなこのやり取り」

と思いつつ。

そのうちにサンダーボアの体にまたバチバチが戻ってきた。

「ブモモォ!」

サンダーボアから雷撃が飛び、零士くんはまた大蛇丸で払った。

「次弾まで5分ってところか。その間に片付ければいいだけだな」

零士くんはそう呟くと大きく跳躍してサンダーボアに斬りかかった。

一撃必殺。

サンダーボアは光に消えた。

「美奈子なら単体相手はいけるが複数はまだきついかもな」

評価の基準軸は美奈子ちゃんらしい。あの子に何をさせるつもりやら。

責(・) 任(・) を(・) 取(・) る(・) なら口は出さないけどさ。

この後に複数とやったけど同じことだった。雷って打ち消せるんだね。知らなかったよ。

次はサーベルタイガーだ。

「グルルルル」

出現したサーベルタイガーは零士くんを見て喉を鳴らして威嚇する。むやみやたらと突っ込んでこないのはこいつの特性なのかも。

「来ないならこっちから行くぞ」

零士くんが大蛇丸を振ると闘刃が飛んでいく。

「ガウッ!」

サーベルタイガーが大きくよけた。危険だとの認識はあるようだ。

「ほう、避けたか」

「やっぱり賢い」

でも逃げることはない。あくまで隙を窺ってる。人間に対して間違いなく敵対的だ。

「これならどうだ?」

零士くんは大蛇丸を軽く2回振ると闘刃がふたつ飛んでいく。サーベルタイガーはひとつ目は避けたけどふたつ目にあたって首を切断された。そして光と消える。

「……闘刃って連続で出せるんですか?」

「一般には知られてないが、熟練度の数だけ同時に出せる。俺だと5個だな」

「うわぁ……」

あの時の武者幽鬼は俺たちに対して舐めプしてたのかもしれない。あの時の俺じゃ、5個も打たれたら対処できないよ。いまも怪しいけどさ。

また複数体出現させて色々やった。

「フェイントは使うが攻撃は単純だから、3体くらいならいまの美奈子でもいけるな」

だから、美奈子ちゃんを基準にしちゃだめー。

10階に移動して白狼だ。まずは単体。

「綺麗なもんだな。ペットに飼ってもいいんじゃないか?」

「魔物なんでやめましょう」

気持ちはわかるけどね。あと大きすぎ。

なんてバカやってたら先制でブレスを吹かれた。

「ほっと」

「ビニール傘!」

零士くんは飛んでよけて、俺は傘で収納した。

【収納:弱い吹雪×1】

弱いんかーい。

収納したのが吹雪ブレスの一部だし、そりゃそうか。

吹雪は数秒で終わり、白狼は俺に向かって駆けてくる。

「俺が標的?」

弱そうだしな、俺。

えいやっと投げ網を放る。白狼も横に飛んで避けたけど投げ網のほうが大きかった。あっさり捕獲即収納。

【白狼×1】

「次のブレスまでの時間を確認したかったんだがな」

零士くんが残念そうだ。

「じゃあ今度は逃げまくりましょうか」

走るのは得意だぜ。

ということでまた1体だけ出して走り回った。ブレスに追い立てられて必死で走ったら木を駆け上がれたぜ。

「こいつは2分ってところだな」

「連発できるのは厄介だなー」

「一発で死ぬような威力じゃねえから喰らうこと前提で近接戦闘に持ち込めるな」

「わぁ脳筋」

なんて油断してたらブレスを喰らった。零士くんはひらりと避けやがった。くそう、強いっていいなぁ。

「うぅ、寒さで肌が痛いけど、それよりも鼻水が凍ってる……」

鼻の穴がガチガチだ。

許さんぞこの狼ちゃんめ。金属製の金剛杖をぶん回しながら白狼を追いかける。

「ワウ? ワウワウワウ!」

白狼が逃げる。俺が追う。魔物も逃げるんだね。

「がははは!」

零士くんが爆笑してる。コントじゃないんだぞー。

「えいやっと」

追いついて追い越したので金剛杖で叩いて収納する。

「白狼は、速いっていうほど速くはなかったし、ブレスも痛いだけでどっちかっていうと視界が遮られるほうが厄介だ」

「レベル10に達してないハンターならてこずる相手だが、守のレベルでは相手にならんだろ」

「まぁ確かに」

ってことは俺も強くなったってことなのかな。レベル分程度だけど。

「いわきダンジョンと違って魔物が獣系だから素早さが要求される。美奈子なら10階まで、他は4階までにした方がいいかもな」

零士くんの評価だ。やっぱり基準は美奈子ちゃんか。

サンダーボアは避ける方針にした。もちろんレベルが上がって戦闘にも慣れたらサンダーボアもサーベルタイガーも倒せるんだろうけど。焦っちゃだめだね。

零士と守がダンジョンの調査をしている同時刻。母屋では勝浦と小湊がアイテムを前に話し合いをしていた。

「サンダーの魔法書を売るのはありだけどブレスは危ういかもねー」

「銀行強盗とかに使われかねませんね」

「それねー。【サンダー】は直線で被害も限定的だけどブレスの範囲が意外に広いのよねー」

「20メートル四方に広がるのは予想外でした」

「サンダーはビッチさんに卸すとして、わたしたちも覚えておきましょー」

「逃走手段は多いに越したことはないですしね」

妊婦なふたりは襲われた時などは戦わずに逃げることにしている。もちろん相手は人間だ。

【カース】があれば問題ないと思われるが【キュア】で回復されてしまうかもしれない。【キュア】は販売もしているし、そもそも使えるハンターもいる。

「やっぱり【フィアー】も覚えるべきかしらー?」

「【サイレス】も覚えましょうか」

「人質なんかになって守くんの足手まといにはなりたくないものねー」

「はい。何とかして寺に逃げ込みましょう」

悪意は何食わぬ顔をしてひっそりとやってくる。小さなダンジョンを所有し続ければ悪党は必ず現れる。跳ねのける力も必要だが、それだけではより強い力につぶされるのが世の常だ。手段は多いほうが良い。

「これをどの子に渡すかが問題よねー」

「絶対に裏切らない智は当然として、零士さんべったりの美奈子は大丈夫でしょう」

「葉介くんがいるなら葉子も大丈夫そうねー」

「問題とすれば、ポニーの4人です。Aチームもですが」

「あの子たちはうちに依存してるわけじゃないしねー」

「ある程度強くなって、社会の悪に気が付けるようになれば好きな場所で生きていくのがよいと思います」

「そうよねー。ここにくぎ付けはかわいそうよねー」

ふたりは冷静に判断していく。もちろんふたりは守を裏切るなど考えもしない。ここ以上に愛され住みよい居場所はないのだ。

「京香ちゃん、いまの幸せを守るわよー」

「やるぞ」

「「おー!」」