軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25 ダンジョンテイクアウト①

市船へ行ったその夜。夕食も終えて、鍛錬に来てた千葉君と品川ちゃんも帰ってまったりしたころ。寝巻に着替えた瀬奈さんと京香さんが母屋にやってきた。なお隣家は改装中でみんな寮に引っ越している。風呂が広いので4人でも入れちゃうんだぜ。俺が奥様方の髪を洗うんだけど瀬奈さんはふにゃふにゃにとろけちゃって人様には見せられない顔になるんだ。

おっと話がずれた。

「ダンジョン踏破の話なんだけどー」

「先日、個人で管理していたダンジョンから魔物が溢れてギルドごと周辺が壊滅した地域がありました」

その話に胸が痛んだ。うちと同じく出来てしまったダンジョンをなんとか管理していたらしいけど、規模の大きいスタンピードが起きて対処できず、地上に溢れてしまったとのこと。

地元の警察と自衛隊で対処したみたいだけど、それでも住民に死傷者が出てしまったらしい。

「今は警察が管理してるんだけど、悪戯で入るハンターとか迷惑系配信者とか廃墟マニアとかが後を絶たないって問題になっててー」

「小さいダンジョンなので踏破して無くしたほうがいいのではと」

なるほど。地域の安全を考えたら野放図なダンジョンなんてないほうがいい。

「でも、勝手にダンジョンをなくしてもいいのかなぁ」

「ダンジョンの踏破を遮る法律はないんです」

ないんだ。まぁないほうがいいもんね。

でも。

「ダンジョンをなくしたら別の場所にできちゃうんじゃ?」

「もしかしたらなんだけどー、守くんのスキルでダンジョンを収納できないかなってー」

「あーーーー、やってみないとわからないなぁ」

やれちゃいそうな気はしてるけど。そうするとうちの墓地ダンジョンも収納可能?

「仮に収納できちゃったとしたらその収納したダンジョンの扱いとかやってみないとわからないことが多いね。でも、それで困っていることが減るならやってみたいかも」

「守君がやる気なら私がついていく」

「あら、わたしだって行くわよー」

ふたりが腕に抱き着いてきた。

「そういえば場所はどこ?」

「現地はいわき市の郊外で、山のふもとねー」

「電車よりは車」

調べると、寺からだと3時間ちょっとで着くみたいだ。日帰りも可能だね。キツイけど。

「ダンジョン自体は小さいから踏破も可能だと思うわよー」

「ゲートが1個だからたぶん10階のダンジョン」

「ゲートの数×10がダンジョンのフロア数だって法則があるのよー」

「あれ? ってことはうちも10階しかない?」

「墓地ダンジョンは未知のダンジョンだから法則が当てはまらない可能性がある」

「墓地ダンジョンがそうとは限らないってことか。狭いダンジョンで10階しかないんだったら走り切れちゃうな」

いける気がしてきた。

「一応映像を撮っておくべき。今後の資料になる」

「そうねー。ついでにリアルタイム中継しちゃう?」

「またインチキとか湧いてきそうな予感がする」

俺はどうでもいいんだけど、行き過ぎてみなに牙が向くのが嫌だ。ならばその牙を折ってやるとか考えちゃうよね。

「実際にダンジョンが無くなってたらインチキもへったくれもないと思うわよー」

「脳みそが腐ってる人間は何を見せてもだめだから無視か排除推奨」

うちの奥様方が過激なんですが。

「智は留守番かな?」

「置いてったらすねちゃうわよー」

「デスヨネー」

ということで、急遽出張?と相成った。

二日後。早朝の掃除を終わったらすぐに出発した。留守は零士くんと美奈子ちゃんと柏兄妹に任せた。平日だったので高校生は学校を休ませた。急いで終わらせて帰るぞ。

途中で運転を変わりつつ3時間半かけて現地に到着。山に入る林道の入り口って場所で、民家は少ない。魔物があふれた時もそのおかげで比較的被害が少なくて済んだんだとか。

目の前にあるのは壊れた建物の残骸。ゲートの機械はすでに撤去されててダンジョンの階段がむき出しになってる。立ち入り禁止の表示もない。

ダンジョンに向かって合掌。来世に幸あらんことを。

「うちがこうならない保証はないのよねー」

「小規模のダンジョンだからスタンピードが起きても規模が小さい。今回はたまたま大規模が起きてしまった」

「言葉が出ない……」

奥様方もダンジョンの入り口を前に手を合わせてる。ありがとう。

「さて、とりあえず収納できるか試してみようか」

金剛杖を取り出す。これで階段に触れながら収納を試す。瀬奈さんと京香さんが三脚とカメラの準備。智はまだ手を合わせてる。

「【大いなる祈り】!」

智がスキルを使った。建物の残骸がある付近が光り、靄のようなものが空に溶けていった。

「心残りがあるよね……」

智がつぶやいた。

魔物ではないけど、亡くなった方に心残りがあって魂が輪廻に戻れなかったのかもしれない。

「ありがとう」

智をぎゅーした。優しい子だ。

さて、こうなったらこのダンジョンには消えてもらわないと。

「カメラの準備完了」

京香さんから合図が来た。

「じゃあやりましょうか」

「おっけー。じゃあ獄楽寺ギルドの公式サイトで中継するわよー」

京香さんがタブレットで画面を確認する。タブレットには目の前のダンジョン入り口が映ってた。

「こっちも確認できたよー」というコメントが流れていく。留守番の美奈子ちゃんからのコメントだ。接続数をみると1とあるので美奈子ちゃんだけだ。アーカイブは残すのでこれでいいのだ。

「接続ヨシ」

京香さんの合図でカメラの前に移動する。ちなみに映るのは俺だけだ。

「えー、獄楽寺ギルド長の坂場守です。先日、スタンピードが起きてしまった福島県いわき市のダンジョンに来てます。これから俺のスキルを使ってこのダンジョンを消滅させようと思います」

階段に金剛杖を突き当てる。階段からは無念が湧き上がってくるように感じた。

「南無阿弥陀仏」

経を唱えてスキルを発動させた。

「!!」

今までとは違って体の中にぐわーって何かが入ってくる感触がある。でもそれも一瞬で終わった。

収納の中には【いわきダンジョン×1】とある。目の前にあった階段は消え失せてて、ちょうどそこだけ土がむき出しになってた。無事にダンジョンは消え失せたようでほっとした。合掌。

「無事に消滅しました」

カメラで階段があった場所を撮影する。念のためその場所を足でドスドス踏んで見せた。

「うん、土だね」

「守くん、体に異常は感じるー?」

「守君、大丈夫ですか?」

瀬奈さんと京香さん早足で歩いてくる。妊婦さんなのでゆっくり歩いていただきたい。

「異常はないですね。【いわきダンジョン】って名前だったんですかね、ここ」

「ここを管理していたギルドの記録ではそうみたいねー」

「守君、収納しただけ?」

「そうですね……」

京香さんに言われ、魔物と同じことができるか調べてみると【→所有する? Y/N】と出てきた。

ちょっとまて、所有ってなんじゃい!

「ちょっと相談したい状況ですね」

「わかった。ここで録画を止める」

京香さんがカメラに向かった。

カメラが止まったので即撤収だ。帰りも時間がかかる。車に戻りながら説明だな。

「魔物だと経験値にするかの選択が出るんですけど、ダンジョンは所有するかを問われてます」

「「「所有!?」」」

綺麗にハモる奥様ズ。可愛いが過ぎるぞ。

「所有する場合はどうなるのか。しなかったらどうなるのか。予想がつかないんですよね」

車に乗り込みエンジンをかける。

「まぁ所有しなかったらどこかにダンジョンができちゃうんだろうなって気はしてます」

このまま収納しっぱなしだとダンジョンも出なくって平和なんだけど、割と異物感もあって何とかしたいんだよね。なんかこう、薬を飲んだけど喉のあたりで引っかかってる感じ。んんんって喉を鳴らしたくなっちゃう。

小さいダンジョンでもダンジョンはでかいってことね。

「聞く限り、所有しないってのは無しねー」

「守君が収納し続けるのも無しで」

「そうしたら所有するしかないじゃない?」

選択肢なんてなかったのさ。

「ここじゃ危ないし、寺に帰ってから試すよ」

ということで現地滞在時間が30分という短時間で離れた。