軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

24 尊敬

「ヘルガ様にお話を聞いていただけて、良かったです。ありがとう、ございました」

「いえ、こちらこそ。オリヴァーに連絡をしていただけて良かった。放置していては取り返しのつかないことになっていた可能性もありますから」

「ゆ、勇気出して良かったです」

クリスタはニコッと笑って、胸の前で両手をぎゅっと握る。

その小動物のような仕草と、なんだか常に緊張している様子がヘルガから見ると少し父に似ていた。

そのほかの部分はまったく似ていないただのかわいい女の子で、そばに居たら頭をなでたくなる愛嬌があった。

しかし彼女自身はそれに気がついてなさそうな様子である。

「……私からするとベティーナちゃんは、本当ちょっと前までは、別に普通で友達も多くて……少しだけアイロス君のこと嫌いみたいに言うときもあったけど、それはちょっとした愚痴なのかなって思ってたんです」

「はい」

「でも、どんどんエスカレートしてて、アイロス君、自身も真面目で勉強も魔法もできて頭が良い人だけど、ちょっと素直すぎるっところあるから、どんどん言うこと聞いて」

「……」

「どんどん……アイロス君、ベティーナちゃんが引っ張ったりつねったりするからたまに耳も跡ができてて……私、見ているだけは嫌だったんです」

思い出すようにクリスタは二人のことを語って、語っているうちにとても深刻そうな表情になってく。

アイロスはオリヴァーと違って文武両道ではない。年齢もベティーナよりも一つ下でまだ少年然としているところがある。

未成熟でヘルガからしてもオリヴァーからしてもかわいい弟分だ。

彼の性格の問題以前に侮られている部分があるのかもしれない。

「それに、社交界で言っていることもやってることも一線越えてる……必要ならそれもちゃんと証拠、と言うか現状を見せられます」

「ええ」

「だから、お願いします。アイロス君には、きっともっといい人が居ると思うんです」

「そうですね」

ヘルガも、話を聞いた限りクリスタの言葉に同意だった。きっと良い婚約者ではない。

彼の素直さを逆手にとって、あれこれと自分勝手をしてさらには、妙な企みをしているなんてまだ居ない方がマシと言うレベルだろう。

しかし、この話の面倒なところは不貞行為もなければ、本人たちが同意の上での関係性だという点だ。

多少なりとも、高圧的な態度には問題があるだろうが、それを責めたところで問題が表面的なことから、より内側の二人だけの閉じた場でだけ起こる問題になるだけだ。

アイロスも何もいわないということは今の関係を納得してしまっているのだろう。そんな歪んだ女性の歪んだ機嫌の取り方を学んでも何の足しにもならない。

しかし簡単に離れさせる決定的な材料はない。それが問題を難しくさせていた。

「……なにはともあれ、オリヴァーが戻ってきたらあちらの話も聞いてみて、対処を決めようと思います。すぐには解決しないかもしれませんが、放置はしません。それだけは約束できます」

ヘルガは答えは出ないけれども、クリスタを安心させるために笑みを浮かべる。

彼女はアイロスを案じてこうして、行動を起こしてくれたのだ。

面倒な問題なので、すぐに劇的な解決策があるわけではない。

しかしクリスタには、頑張ったけれど手応えがなかったなと不安に思ってほしくはなかった。

「……やっぱり、ヘルガ様って本当にアイロス君が言っていた通りの人なんですね」

するとクリスタは、えへへと笑って、続ける。

「アイロス君からよく聞いていたんです。お隣領地でよく遊んでくれたヘルガ様は困っていたら助けてくれるかっこいい人だって」

「……そうなんですか?」

「ハイッ。アイロス君、自分にも対応力がほしいって常々言っていますからほんとです。……私も実際、話を聞いてもらって、なんか心強いなって思いましたもん」

クリスタは屈託なくそう口にし、ヘルガはなんだか少し気恥ずかしいような気持ちになる。

アイロスが素直で、慕ってくれていることはわかっていたが、友人にもそんなふうに話をしていたなんてとてもけなげだろう。

それをまっすぐに受け取って同じように慕ってくれるクリスタもヘルガにとってはとてもかわいい。

お菓子をいっぱい出してもてなしたい気持ちになるが、ふとそこで気がついた。

「そういえば、あなたならアイロスから、オリヴァーのことを聞いていますか? ……オリヴァーが跡取りの地位を今更退いたことを、アイロスは酷く怒っているようでして」

「オリヴァー様のことも伺ってます……で、でも、そうなんですか?」

「?」

「あの、えっと、私がアイロス君から聞いてるのは、オリヴァーお兄様が認めてくれないと、そんなニュアンスでした」

クリスタはきょとんとして、アイロスがオリヴァーへ抱いている感情について口にする。

「無責任なことをしたのが許せない……というような感じではなかったのですよ」

「……なるほど、それもまた難題ですね」

「ですね。すれ違ってどこかこんがらがってるのかもしんないです」

「あり得る話です」

(無責任に怒っているわけではなく……認めてくれない……ですか)

てっきりヘルガは、クリスタの方からもなだめてもらって少しずつ距離を戻していけばオリヴァーとアイロスの仲も元通りになると思っていた。

しかしまったく予想外の言葉が出てきて、それもまたすぐには解決できそうにない案件だった。

クリスタの側もピンときていないのか、首をかしげて「今度、詳しく聞いてみます」と言ったのだった。