軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

51:再び王都へ行ってみた

二年ぶりの王都は、以前よりもさらに賑やかな雰囲気だ。

この国の今の王が、海外進出よりも内政に力を入れる人物なのと、諸外国からの攻撃がなく平和な時代であることが大きな原因だろう。

跡取りの王太子も、ちょっと変わっているけれど優秀だし、アンジェラは大人しくしているみたいだし。漫画の主人公であるメリルが現れるまでの数年間は、一応安泰だと思う。

王都の様子も平和そのもので、食べ物屋からは香ばしい匂いが漂い、街角では花屋が大輪のバラを売りさばいていた。

そんな午後、私は馬車に乗って王都の学園へと向かっている。

同じ馬車の中には、マリアをはじめとした世話係のメイドたちも乗っていた。

もう、巨大なお尻で二人掛けの席を占拠してしまうという心配はいらない。

大勢で馬車に乗れるって素敵だ。

しばらくすると馬車が止まり、御者とマリアが何やら話を始めた。

「どうしたの、何かあった?」

会話に混じると、マリアが困ったように眉尻を下げてみせる。

「ブリトニー様、これから向かう王都の学園なのですが……どうやら途中の道で馬車を違法駐車している輩がいるようで、先に進めないみたいなんです」

「ええっ? 避けて通ったりはできないの?」

「はい、馬だけなら通れるのですが、馬車となると難しいみたいですね。他の馬車も足止めを食らっていて、渋滞している模様です」

「困ったな、リカルドとの待ち合わせ時刻に間に合わないかも」

学園でのパーティーに参加するにあたり、あらかじめリカルドに到着時刻を連絡していたのだ。

ちなみに、この催しでは身内や友人を自由に呼ぶことができ、当日に限り外部の女性も堂々と学園内を歩くことができる。

馬車から降りた私は、予備で連れて来た馬の手綱を握った。

ハークス伯爵領は馬に恵まれているので、万が一の時のために馬を多めに連れて来ることができるのだ。

「仕方ないから、私は馬に乗って移動することにするね。マリアたちは、渋滞が解消されるまでここで待機して、解消後に合流。護衛を数名借りて行くわ」

「ブリトニー様、案内はどうなさるのですか……!」

「大丈夫、リカルドから手書きの地図をもらっているし、王都の道は碁盤の目のようになっているから、迷わずにたどり着けると思う」

ドレスを着たまま横乗りで馬に腰掛けた私は、護衛を引き連れて颯爽と馬を走らせる。

街中なので、スピードは落とし気味だ。あまりに速いと、髪も乱れてしまう。

しばらく進むと、渋滞の元凶が見えてきた。

やたらめったら飾り立てた、黄金の趣味の悪い大型の馬車が、道を塞ぐようにして止まっている。

その馬車の前後には、王家の紋章が輝いていた。

(まさか……)

いやな想像が頭をよぎる。

馬車が停まっているのは、ドレスを扱う店の前だった。

こんな迷惑行為を行う王族は、約一名しか思い浮かばない!

(出た! アンジェラー!)

王都に来て早々、悪役令嬢のアンジェラに遭遇してしまうなんてあんまりだ。

店の扉の前にお付きの人間が立っているものの、本人はまだ店の中……

(よし、普通に通り過ぎよう。リカルドとの待ち合わせに遅れてしまうものね)

私は他の通行人に混じって、店の前をスルーした。

王女のお付きの人も疲れているのか、特にこちらに興味を示すことはなかった。

馬に乗ったまま、王都の学園に到着する。

王都の学園はとても広い敷地を有しており、その中心に巨大な校舎が建っている。

貴族が通う学校だけあり、お金がかかっているようだ。

私のいる校門前の広場には、パーティー用の正装に身を包んだ学園の生徒がたくさん集まっている。

きっと、それぞれパーティーに招いた相手を待っているのだろう。

馬を降り、迎えに来てくれているリカルドを探すが、護衛だけ引き連れて馬に乗ったからか、私は注目を集めていた。

(きっと気のせい。少人数で来ている令嬢は他にもいるし、今の私には、デブキャラの持つ圧倒的な存在感がないはずだもの)

早くリカルドを見つけてこの場を去ろうと思い、周囲に視線を巡らせると、割と近くに彼が立っていた。

(どこかと思えば、すぐ傍にいるじゃん! 声をかけてくれればいいのに)

私は、自分から彼に近づいて声をかけた。

「リカルド、久しぶり。今日は、パーティーに誘ってくれてありがとう」

キョトンとした顔のリカルドは、数秒間私を見つめた後、おずおずと口を開いた。

「…………お前、まさか、ブリトニーなのか?」

こちらを見る彼の目は、わずかに動揺している。

「何を言っているの? 正真正銘、ブリトニーだよ。招待しておいて、それはひどくない?」

「……リュゼにもらった姿絵にそっくりだ」

一人でブツブツと呟くリカルドは、はっきり言って挙動不審である。

従兄と何かあったのだろうか?

「ところで、会場はどこなのかな?」

「あ、ああ、こっちだ、案内する」

ギクシャクとした動きで、リカルドは戸惑いがちに私の手を取った。