軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

168:王太子のトラウマについて

ライ麦とそば粉をゲットした私は、袋を担いで馬のいる場所へ戻った。

あれから少し探してみたが、ヴィーカには会えずじまい。彼女には潜伏場所さえ聞けなかった。

とりあえず、頭の中は混乱の大嵐が吹き荒れている。

(『メリルと王宮の扉2』なんて聞いてないよ〜!)

なんだそれは、なんだそれは、北の国と全面戦争ってなんだ〜!

(そのままそっくり少女漫画の内容通りに進まないとは思うけど、北の国との全面戦争は阻止したい!)

最悪なことに、昨年城にいたとき疑問に思っていたことが、少女漫画で描かれてしまっている。

昨年の事件に王族を排除しようとする意図があったのは、あながち間違いではないのかもしれない。救いがあるとすれば国王や王太子が生きていることだろう。

アンジェラも善人だし貴族も二分していない。ハークス伯爵領も取り潰されていないし、リュゼも生きていて駄目父は幽閉中。

そして、少女漫画の中でブリトニーが処刑されたのは、偶然ではないのかもしれない。

なぜ、アンジェラはブリトニーに王の食事に毒を盛らせたのか。

なぜ、ブリトニーは他の罪まで被せられ、処刑に導かれてしまったのか。

どうして、処刑される人物が、ブリトニーでなくてはならなかったのか。

北の国の侵攻に邪魔なハークス伯爵家を潰す意図があったと思うのは、考えすぎだろうか。

もし、そうなら、アンジェラの背後で別の誰かが暗躍していたはずだ。

裏でアンジェラを動かしていた人物が今、国内にいるかもしれない。

(とりあえず、リュゼお兄様やリカルド、エミーリャ様やセルーニャ様に相談だ!)

彼らは、私の前世の記憶のことを知っている数少ないメンバーである。

リュゼとリカルドのいる実家には手紙を出し、私はエミーリャ経由でセルーニャにこのことを知らせるべく動くことにした。

エミーリャに会うには王宮へ行くしかない。

エレフィスのダイエットの合間を見つつ、私は城へ向かった。

(そういえば、セルーニャ様は少女漫画の続編のことを知っているのかな)

今まで彼とした話の内容は、全て『メリルと王宮の扉1』のもので、続編に関する会話はしてこなかった。彼もまた、続編の内容を知らないのかもしれない。

知っていたら、溺愛する弟を中央の国へやったりしなさそうだ。

城の入口を通り過ぎ、エミーリャに会う前にアンジェラにエレフィスの経過を報告しておく。

あまり成果は芳しくないので、ちょっと足が重い。

しかし、アンジェラの方は、歓迎モードで私を迎え入れてくれた。

「ブリトニー! 待っておりましたわよ!」

「アンジェラ様、ハークス伯爵の件はありがとうございました。それで、エレフィス様の経過ですが……」

「あら、その様子だと、上手くいっていないみたいですわね。エレフィスは食べることが大好きですからね」

「すみません、これから色々な方法を試してみます」

「よろしくお願いしますわ。あの子が婚期を逃すことはないと思いますが、どうせなら良い条件で結婚して欲しいですから」

「はい……」

「婚約相手が、ありのままのエレフィスを受け入れてくれれば良いのですが。マーロウお兄様くらいの度量の持ち主はそういません」

その言葉を聞いて、私は思った。ぽっちゃり好きのマーロウなら、エレフィスのことを好きになる可能性があるのではと。

しかし、そんな思いつきは、アンジェラの言葉で打ち砕かれる。

「お兄様とエレフィスなら、色々な意味で釣り合いが取れるのでしょうけれど……お兄様がエレフィスに苦手意識を持っているから難しいでしょう。幼少期のトラウマが尾を引いているようですわね」

「トラウマとは?」

「子供の頃、エレフィスに趣味が女々しいと指摘されたらしいですわ。子供の言うことですし、エレフィスも悪気があったわけじゃないと思うのですが……それ以来、お兄様は彼女と距離を取っておいでですの。体型だけなら、エレフィスはお兄様のドストライクだと思うのですが」

「……そうなんですね」

確かに、ぽっちゃり体型で食べるのが大好きな令嬢なんて、マーロウの理想の女性だと思う。家だって権力のある侯爵家だし、王太子の相手としても良いだろう。

(世の中って、上手くいかない)

マーロウがエレフィスと婚約すれば、この国にとっても良いし、エレフィスのダイエットが失敗しても大丈夫だ。

アンジェラも同じようなことを考えていたようで、ため息を吐きながら口を開く。

「あの二人がくっつけばいいのですが。大臣が婚約話を持ち出したところ、お兄様が逃げ出してしまったので難しいでしょうね」

二人の間には(主にマーロウの側だが)、思った以上の確執があるらしい。