軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

155 やっぱり仲が良いっていいよね

うん、めっちゃいい天気。と言う訳で本日ものんびり馬車移動日和であります。

2ヵ月ほど滞在した町(ちなみにハンケンと言う名前だったらしい)を出発して数日、今日も今日とて温泉目指して馬車の旅である。

ちなみに王都からハンケンへの道中で途中に立ち寄った不愉快な村は分岐よりも北の方にあったので華麗にスルー。まあ仮に手前にあったとしてもスルーしたけどね。

「暇ですねー」

「そうですね」

うーん、リリーさんが暇を持て余していらっしゃる。と言っても私から特に暇つぶしの手段を提示する事もない。いや、何も思いつかないしね。

といいつつ私自身としては適当にポーション類を作って補充してたりするんだけど。長い事レベルが上がらなくなって久しいけど、【創造魔法】の経験稼ぎも兼ねていたりする。地道な努力が一番の近道ともいうしね……他のスキルみたいにポンポンレベルが上がるような事は半ば諦めてるけど、超レア度高そうな 固有(ユニーク) スキルだし、気長に行くしかないよねー。

リリーさんも最初は興味深そうに私のポーション作成を見ていたんけど、そう時間もおかずに興味を失ったようだった。というか最初は作成速度に顔を青くしてたんだけど。

「レンさん、暇ですよー」

「そうですね」

ちなみに、仲間も増えたのに馬車の 客室(キャビン) 内でポーション作りなんてそんな広さないだろうと思うだろうけど、今客室内に居るのは私とリリーさんだけだったりする。

馬車の運用自体は馬ゴーレムのお陰で御者がいなくても勝手に走るんだけど、御者もいないのに勝手に走る馬車とか怪しい以外の何物でもないので、現在御者席にはアリサさんとクロが座ってたりする。

ダミーの御者ゴーレムを出しても良かったんだけど、周囲への警戒も兼ねて御者係は持ち回りという事になっているのだ。とはいっても手綱は握ってるだけで実際に捌いてる訳でない。アリサさん曰く、これで馬車を引いてるのが本当の馬だと【御者】とか【騎乗】とかのスキルを覚えるらしい……。

スキル習得の機会を逃すのは勿体ないけど、リアルで馬の世話とか滅茶苦茶大変だし、悩みどころ……餌とか確保するのも面倒だしね。

「レンさーん」

「そうですね」

む、クロが御者席から飛び降りて走って行ってしまった……暇を持て余して周囲の様子を見に行ったっぽい。御者席に座ってる時は日向ぼっこしつつ昼寝してるか、今みたいに周囲の警戒も兼ねて馬車の周辺を走り回ってたりする。警戒自体はノルンとベルもやってくれてるのでそこまで密にしなくてもいいと言えばいいんだけど、クロは自主的に……というか、暇に耐えられなくなると駈け出していく。訓練にもなるので誰も止めてないけどね。あとついでに角兎をよく狩ってくるので食料確保の面でも助かっていたりもする。

「レンさああああああん」

「そろそろお昼にしましょうか」

そんな訳でそろそろリリーさんが限界っぽいので昼休憩にしようと思います。

今まで走っていた街道から横に逸れて踏み固められた道から降り、丁度いい感じの小さい林の近くまで移動して停車、馬車から降りる。

ゴーレムなので本来そこまでやる必要はないけど馬を馬車から外して木に繋ぎ、馬車も車輪をロックして動かないように固定しておく。あとは馬車横にオーニングテントを展開、日陰を作る。

「えーと、今回の料理当番は……」

「あ、私がやりますよ。馬車移動中は暇でしたし」

「それは助かりますけど、リリーさんは何か暇潰しの方法を自分で考えてください。作業中に絡まれると集中できなくなるので」

「……スミマセンデシタ」

私からの苦言にリリーさんがちょっとしょんぼりしてしまったけど、実際問題ちょっと鬱陶しいので勘弁して戴きたい。

【ストレージ】からにゅるりと調理台を出し、後はリリーさんにお任せ。あー、ついでにイスとテーブルも出しておかないと。

ちなみにこの調理台、野営の度に毎回簡易竈を作るのが面倒になったので作製した魔道具だったりする。コンロは四口、オーブンも完備の逸品である。

と、そこまで準備したところで警戒に走っていったクロが両手に角兎を持って帰って来た。

「リリ、肉獲ってきた!」

「クロちゃんお手柄ですね! じゃあこれを使って何か作りましょうか。クロちゃんも手伝ってね」

「わかったー」

「リリー、私も手伝おうかー?」

「アリサは……適当に休んでていいよ」

「わかったよー」

相変わらず緊張感の欠片もないパーティーである。ちなみにノルンとベルも自分達のご飯を獲りに駆けて行ってしまった。

……ふむ。それなら時間も出来たし、私は私で研究の続きでもするかな?

えっちらおっちらと馬車の屋根の上に登ると、そこには大量の鉢植えが並んでいる。それぞれ育成状態が違うけど、実はこれは全て同じタイミングで育て始めたものになる。

これはゴブリンレギオン攻略後に始めた私の真面目な研究、『魔力溜まりの疑似再現実験』になる。

以前リリーさんに『魔力溜まり』について聞いた時、ふと思いついた事を実際に研究してみる事にしたのだ。

魔力溜まりでは植物が活性化して成長が早くなる、というのであれば、人の手で魔力を流すなどして人工的に魔力溜まりを再現できるのではないか、ってやつね。

ちなみにこれ、実際に再現できた場合の作業効率とかも考えて、複数パターンで試している。

使用した種は全てトマトで、まずは比較対照用に普通の土のみ。次に私が作成した肥料を加えた場合。その次からが魔力を使用する場合を数種類。

こちらはまずはゴブリンの魔石を鉢の底に敷き詰めてから土を盛ったもの、次に魔石を細かく砕いて土に混ぜ込んだもの、最後に私が定期的に魔力を直接流すもの、そしてそれら3種類に肥料を加えたもので計6種類。合わせて全部で8種類。なお、使用している肥料は硝酸カリウムになる。

硝酸カリウムって何だって? 一部の人に分かり易い言葉を使うと『硝石』ってやつだよ。

え? どうやって作ったのかって? そりゃゴブリンの死体の山から作りましたよ、【創造魔法】を使ってちょいちょいと。死体のお腹の中に糞尿も詰まってるし、他の材料はそこら辺から簡単に手に入るし。まあ自分の糞尿からも作れるけど、それはちょっと気分の上でね……ほら、レン産硝石とかリリー産硝石って言われたら、流石にちょっとアレすぎない?

……それはさておき、この実験は割と早い段階から目に見えて差がついていて、結果が丸わかりだったりする。

目視による育成具合の順番としては、

通常の土のみ<肥料使用<魔石敷き詰め<粉砕魔石<魔石敷き詰め+肥料<粉砕魔石+肥料<魔力直流し<魔力直流し+肥料

となっている。

私が魔力 直(じか) 流ししてる鉢はもうもっさもさに育っていて、既に真っ赤な実も生っている。逆に通常の土のみのものは芽が出てから2週間程度の普通の育ち具合。育成具合順に並べると、植物の育ち方の見本一覧みたいな事になってしまっていた。ここまで分かり易い結果が出るのも何と言うか、正直コメントに困るんだけど。

……自分の魔力を流したものが一番育ち方がいいのを見ると、私の魔力って肥料だったのか……と、ちょっと微妙な気分にならなくもない。

とは言えコストパフォーマンスとか人手の手間暇を考えるとまた色々と評価は変わってくるんだけどね。

例えば魔石を敷き詰めたものは魔石からじわじわと魔力が染み出していって、最終的に魔石の魔力は空になるっぽい感じ。そして空の魔石に魔力を充填して再利用するには土から掘り出さないといけない。

次に粉砕魔石を土に混ぜたものは魔力の充填が出来ない為、再利用ができない。ただし魔石を敷き詰めたものよりも育成速度は速い。

私が直接魔力を流したものは他の追随を許さない異常な速度で育っていくけど、その代わりに都度私が魔力を流さないといけないので、その作業分の時間を取られて手間暇がかかる。

現時点で色々と確認した上で最低限人の手を掛ける共通部分を除いて考えると、どれも良し悪しがある感じの結果となっている。

私以外の人に任せる場合、長期的には多少の手間がかかるけど再利用できる魔石敷き詰め、短期的には再利用できない代わりに早く収穫できる粉砕魔石混ぜ込み、かな?

どこかに定住するとか人を雇って農業をやるとか、そういう状況にならないと使う機会はないとは思うけど、色々と役に立ちそうな研究結果になったと思う。特に私が直接魔力を流す場合は頭がおかしいくらいの早さで収穫できるから、短期間での品種改良とかできるだろうしね。

と色々と考察をしながら魔力直流しの鉢のトマトを収穫していく。

「レンさーん、ご飯ですよー」

「はぁい」

そんな事をしているうちに昼ご飯が出来上がったみたいだ。

さて、お昼ご飯である。メニューは角兎肉の串焼きとポトフ。あとパン。なんとなく予想してたけど、予想通りというかなんというか……。

とは言っても毎回毎回凝った料理作る意味ってあんまりないしね。美味しいと満足感はあるけど、作るのに時間かかるし。でも一応、パンは私が焼いて作り溜めしてあるバターロール。前に出してみたら好評だったので、それからたまに出すようになった。ただし腹持ちはあんまり良くないのが欠点ではある。そういうところは黒パンの方がいいので、味を取るか実を取るかで悩ましい所。

「んー! 串焼き美味しいー!」

「あ、本当だ、凄く美味しいですね」

「その串焼きはクロちゃんが焼いたんですよー」

「お肉! わたしが焼いた!」

おー、この串焼きはクロが焼いたのね。

実はクロ、猫獣人だから火の扱いは苦手かと思いきや、料理で焼き物を任せると絶妙な加減で焼き上げるんだよね。私が色々食べさせた所為か『ちゃんと焼いたお肉は美味しい!』と学んだようで、自分でも美味しく焼けるようにかなり頑張って覚えたらしい。猫と猫獣人は似てるようで別という事か……。

お昼ご飯を食べた後はちょっと食休み……。薬缶で沸かした麦茶を飲んでほっこりする。

「いやー、前々から思ってたけど、レンさんが作ったこのお茶、美味しいよねー」

「そうだねー」

「麦からこんなお茶が作れるなんてねー」

「そうだねー……あれ、これも色々騒ぎになるやつなのでは……?」

「リリー、そういう事は考えちゃだめだよー。折角いい気分なんだからさー」

「アリサはもうちょっと考えた方がいいと思うよ……」

リリーさんとアリサさん、また2人で漫才してる……。

食休みが終わったら色々と後始末も終わらせて、馬車移動再開の準備。まあ大した手間では無いんだけど……と色々やっていたらノルンとベルが戻って来た。

ちゃんとご飯食べた? ……え? ご飯は食べたけど、あっちの森の中で怪我してる女の人を見つけたの? うーん……どうする?

よし、リリーさんに確認しておこう。助ける事になるとは思うけどね。

「……という事らしいんですけど」

「なるほど……じゃあ助けに行きましょうか」

うん、やっぱりリリーさんならそういうと思った。ネルさんの時もそうだったけど、リリーさんって困ってる人いると結構助けようとするよね。でもそれでトラブルになった事とかないのかな?

「リリーは意外とお人よしだよねー」

「人助けは悪い事じゃないでしょ?」

「悪い事じゃないけど、ただ働きになる事も多いし、何なら 集(たか) られた事もあったじゃないー?」

「それはそうだけど……」

「それで軽く痛い目見たりしては色々警戒したりするけど、しばらくするとまたお節介焼いたりするしー」

「別にいいでしょ! 大体アリサだって止めないじゃない!」

「不味い事になりそうな時はちゃんと止めてるよー」

「それは、確かにそうだったけど……」

……なるほど、私が心配したような事は既に起きてたし、何ならそうなりそうな時はアリサさんがちゃんと見て止めてたのか。うーん、やっぱりこの2人っていいコンビだよね。ちょっと羨ましい。

……あとで聞いたところによると、一般人を助ける場合はまだしも、魔物相手にピンチになってる冒険者を助ける場合は特にトラブルになり易いらしく、最悪の場合は見捨てる方がいい事もあるらしい。倒した魔物の素材分配でとにかく揉めるんだとか。……そういえば前に私もオーガに追いかけられてた冒険者達を助けた時に、ちょっと揉め掛けたような気がする。

っと、こうしてる間にも魔物が寄ってきて襲われてるかもしれないし、助けに行くなら急いでいこう。

「リリーさん、夫婦漫才はそのくらいにして早く助けに行きましょう。万が一という事もありますし」

「誰と誰が夫婦漫才ですか! って、そうですね、急ぎましょう!」

「まったく、リリーは駄目だなー」

「誰の所為よ!」

……うん、いいから早く行こう?