軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第128話 再会

深く潜るにつれて、殉教者たちが離脱していく。

最後に残ったのはエルディを含む五人だけだった。

六番隊の中でも相当な実力者たち。

彼らは長いことヨルたちに同行し、サポートしてくれていた。

けれどそんな彼らですら、立ち入るのが危険な階層にまでやってくる。

階段の前で、ヨルはエルディたちを振り返った。

「ここまでだ。ありがとう」

「…………」

エルディは何か言いたげにしていたけれど、実力不足は本人たちが一番わかっているのだろう。

「……お気をつけて」

「そっちこそ、気をつけて」

「はい」

別れを済ませ、ヨルたちは階段を降りた。

この階層にまでくると、魔物の数はむしろ減る。

その分、一体一体の脅威度が跳ね上がる。

ヨルたちは細心の注意を払いながら歩を進めた。

戦闘は最小限に、四人になってからも体力の温存を優先することに変わりはなかった。

そうこうしているうちに——

やがて前方に、開け放たれた扉が見えた。

ノグ=サルアインの神殿だ。

「やっと戻ってこれましたね」

カッシがふぅと息を吐く。

もちろん、ここに戻ってくることが目的ではない。

でも一つの区切りであることは確かだ。

ダックとパッケも、肩の力を抜くのがわかった。

「置いてきた装備はどうなったんでしょう」

カッシは扉にまで駆けていった。

「そのままだといい——」

そして神殿に足を踏み入れ、ヒュッと短く息を吸い込む。

「……カッシ?」

パッケが不審そうに声をかけた。

だがカッシは応えず、目を見開いて固まっていた。

呼吸の仕方すら忘れてしまったように。

(……あぁ)

ヨルの中に、諦念のようなものが広がっていく。

パッケとダックが駆け出したが、ヨルは二人のように急ぐことはしなかった。

重い足取りで彼らの後に続く。

せっかく体力を温存してきたというのに、どっと疲労感が襲ってきた。

ノグ=サルアインの神殿。

何度見てもおぞましい。

赤黒い、神様の体内。

戦闘の余波で散乱した瓦礫——それが神殿の中央、祭壇があった辺りにうず高く積み上げられている。

その天辺に、荘厳な玉座が作られていた。

いやそれは玉座というより、神座とでも言ったほうが正しいかもしれない。

その椅子に、あの男が腰掛けていた。

自分こそが神様だとでも言わんばかりに踏ん反り返って、感情のこもらない目でこちらを睥睨していた。

「お姉様、あれが……」

カッシが男を見上げたまま、振り返らずに言う。

ヨルは無言で頷いた。

こっちを見ていないのだから、頷くだけじゃ意味がないのだが、声を出すのも億劫だった。

そもそも肯定なんてしなくても、答えなんて分かりきっている。

あんなのが何体もいてたまるか。

「ほら、だから言ったんだ。こいつの話は怪しいってよ」

ダックがボソリと呟いた。

微かに震える声で。

「……聞いてたよりも、ずっとやべえじゃねえかよ」

男はこちらを睥睨したまま、重く深いため息をつく。

苛立たしそうに頭をかくと、緩慢な動きで立ち上がり、瓦礫の山から降りてきた。

その姿に、ヨルはなぜだか裏切られたような心地になる。

戦う覚悟はしていた。

それは嘘じゃない。

けれど同時に、希望もあったのだ。

初めて遭遇した時、あの男は武器を放り捨てた。

動揺してその行動の意味を深く考えていなかったけれど——

もしかしたら争うつもりはないのではないか?

あれだけ豊かな世界だ。

我々に手を差し伸べてくれるだけの余裕があるんじゃないか……。

そんなふうに、心のどこかで期待していたのだ。

でも今のあの男からは、友好的な素振りはまるで感じない。

むしろその表情は冷え切っている。

一体何が、あの男の逆鱗に触れてしまったのだろう。

(……いや、何もクソもないか)

私たちは、侵略者なのだから。

ヨルはふっと小さく笑う。

そのことに自分で驚いた。

人前で笑うだなんて、一体いつぶりだろうか。

もしかしたら、物心ついてから初めてのことかもしれない。

ミレア様は悲愛の女神だ。

この世の悲しみを全て、一身に背負い込んでいる。

聖女の役目は、ミレア様の悲しみを共に背負うことだった。

ミレア様が——ヨルが自分の分まで悲しでくれる。

だからこんな世界でも、人々は笑顔をなくさずに生きることができるのだ。

ヨルは聖女の立場を捨てた。

けれど象徴としてのその役目までは、手放したつもりはなかった。

だというのに……。

——ミレヤ様はお前の裏切りに、お怒りになっているだろう。

いつぞやの神殿長の言葉が蘇った。

そう言われた時、ヨルは憤りを覚えたものだ。

誰かが大罪を犯してハグレ者になったとしても、ミレア様は決してお怒りになったりはしない。

ただただ、その事実を深く悲しむだけだ。

そんなミレア様がお怒りになるだなんて、それこそミレア様に対する侮辱だ。

現にその発言が問題になって、その神殿長は役職を失ったのだから。

けれど——

(確かに、ミレア様は私にお怒りになっているのかもしれないな……)

ヨルは生まれて初めて、神様に疑心を抱いた。