作品タイトル不明
おまけ 鈴木ジローラモという男
そうして彼らは、議論を交わす。
「武器を手に入れないと」
「武器を?」
「深く潜るほど、手に入る武器の性能が上がる。ヒノキの棒と皮の服は言い過ぎにしても、私たちの装備はあまりに心許ない」
「確かに……」
「ジローですら、特殊ダンジョンの魔物を倒しきれなかったくらいだから」
「結局ダーリンさんって……。その、神様みたいな存在なのかな?」
「どうなんだろう」
「ラストヘイブンじゃアンリは邪神扱いされてるけど……。あながち間違ってなかったんだ」
「間違ってる、超間違ってるよ春奈。特に『邪』の部分が」
「ボス、どこまで世間に公表しますか?」
「難しい問題だね。さすがに全てをってわけにはいかないし」
「別世界って時点で、パニックは必至ですもんね」
「まあ、そういう面倒なことは全部キャスパーに押し付けよう」
「そうですね」
「別の世界って、いくつくらいあるんだろう……」
「さぁ」
「最低でも、ダンジョンの数以上はあるってことですよね」
「おそらくね」
「それぞれの世界に管理者が——ダーリンさんのような存在がいるんですよね、きっと」
「多分」
「……わからないことだらけですね」
「本当にね」
「……結局、ルールってなんなんだろう。ダーリンさんがゲームマスターってことなのかな? それで私たちがプレイヤー……」
「あの男の言い草からすると、少し違うんじゃないかな」
「え?」
「あの男がプレイヤーで、私たちはキャラクター。そんなニュアンスだったように思う」
「言われてみれば……」
「そもそもゲームマスターは、ルールを作る側だしね」
「……じゃあ、ゲームマスターは他に?」
そんなふうに、彼らは話し合う。
厳密には、『彼女らは』だ。
五人で円卓を囲んで……。
でも一人だけ——
ジローだけが、全く発言をしなかった。
それどころか、周りの話を聞いてすらいない。
男子特有の、今にもずり落ちそうなダラっとした座り方。
体の軸も傾いていて、うたた寝でもしているように見える。
でもその目は確かに開いていた。
半眼で、でもその目には何も映っていない。
思考に没頭しているのが、傍目にも分かった。
彼女たちはチラチラとジローの様子を気にしながらも、話しかけることをしなかった。
それどころか思考の邪魔をしないように、声のトーンを落とし、物音を立てないように気を使っていた。
普段はどれだけおちゃらけていようと、ジローがやる時はやる男だと、この場の全員が理解しているからだ。
(そっか……。ダンジョンは、ただの通路だったのか。別世界に通じる……)
事実、ジローは考えに 耽(ふけ) っていた。
(こことは別の世界が、たくさん存在して……。ダンジョンを突破したら、その別世界に行くことができて……。ということは……)
深く深く、どこまでも深く。
ただ——
(異世界キャンプが楽しめるんじゃ……?)
確かに、ジローはやる時はやる男だ。
でも基本的には、ジローはあくまでジローだった。