軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

378.ウーハイトンへの帰還と意外な来客

「…………」

しばらく無言でじーっと見ていたミトは、ようやく何かに気づいて「あっ」と声を上げた。

「ニア様、また拾ったんですね?」

……うーん。

「確かに拾ったんだけど」

リノキスに言われたことを、ミトにも言われるとは思わなかった。

そのリノキスは、アンテナ島で会った料理人から拉麺のスープに合いそうな料理や出汁等の諸々を聞き込み、早速台所に立っているが。

「私、またって言うほど拾ってる?」

そんなでもないんじゃないかと思うのだが。

「拾ってますよ。拾われた当人が断言できるくらい拾ってますよ」

そうか。

拾われた当人が言うなら、そうなのかもな。

まあ、うん、まあそれはいいだろう。

「アルコットよ。使用人だから色々教えてあげてね」

旧赤島ことアンテナ島では予想外や予定外の出来事が多々あったが、帰りは何事もなく、ウーハイトンの屋敷まで帰ってくることができた。

アルコットの処遇は、船旅の間に相談済みだ。

身分は明かさない。

客人ではなく使用人として入る。

細々した決め事もあるが、この二つが最も重要なことである。

「あの、よろしく……」

「こちらこそ。私はミトです」

偶然にも二人は同い年のようだし、まあ、仲良くやってほしい。

「ウェイバァ老は?」

「用事があるからと宮殿に行きましたよ。私が学校から戻ってきた時、ジンキョウ様を連れて入れ違いで出ていきました。夕食は宮殿で食べるけど夜には戻ると言っていました」

今は用事ではずしてるのか。

ミトの様子だと、留守を任せたウェイバァ老はちゃんとこなしてくれたようだ。

時刻は夕方。

冬だけに、空はもう真っ暗だ。

夜には帰るそうなので、ウェイバァ老とは後で会えるだろう。

「――ああそうだ。これお土産」

「えっ。私に? ……っ!? ほ、宝石……!?」

「水晶よ。あまり高いものではないみたいだから、安心してとっときなさい」

さて。

まだ住んだ期間は短いが、それでもここは私の家である。

張り詰めていたものが自然とゆるくなり、船旅の疲れを自覚してしまう。

……うむ、私はまず風呂でも入るか。

私もリノキスも不在の中、ミトはしっかり家のことをやってくれていたようだ。

出た時と変わらない屋敷で、きちんと掃除も行き届いている。寝具だってすぐに使えるよう準備されていた。

「――おおニア殿、おかえり。すまん、たまたま用事が入ってしまっての。屋敷を空けてしもうた」

風呂に入り、夕食を取り、私とリノキスとついでにアルコットも一緒に不在の間のことをミトから聞いている最中、ウェイバァ老がやってきた。

「留守番ありがとう。大した問題もなかったみたいで安心したわ」

「ああ、まあ、ただ留守番しただけじゃがの。ご期待に添えたなら何よりじゃ」

……ほう?

ウェイバァ老の「八氣」、また大きくなっているな。

そのくせ安定感は増している、か。

本当に面白い逸材だ。

もしかしたら、もうすぐ「活氣」を習得してしまうかもしれない。恐ろしい成長速度だ。

「宮殿の用事はもう済んだの?」

「正確には済んどらんが、安易に結論を出しづらい話でのう……」

と、ウェイバァ老は苦笑しつつツルツルの頭を撫でる。

「……っと、そうか。ニア殿は知ってるかもしれんな」

「うん?」

「リンの奴が求婚されたようでな。その相談に乗っておったのよ」

あ、それ! 確かに知ってる!

氷上エスティグリア帝国のダンダロッサ・グリオンが、リントン・オーロンに結婚を申し込んでいたあれだ。

アルコットと向かい合いつつ、その現場をバルコニーから見ていた。

話こそできなかったが、リントン・オーロンは私より先にウーハイトンに発ったんだよな。

「結婚するの?」

「そこが微妙でのう……ほれ、リンは『帝王の拳』を習得しておるから、外国に出すのはまずいんじゃよ。あれは門外不出の秘拳じゃから……ニア殿に言うのも少々おこがましいがの」

いやいや、「氣」の扱いに慎重なのは正しい。

秘拳という認識でいいと思う。

「じゃが、ウーハイトンとしては、エスティグリア帝国との縁はできれば結びたいのよ。それも、あの元騎士団長グリオン殿との縁となると是が非でもほしいんじゃが……まあ、簡単に頷けない裏の事情も多々あってな」

どうやら内部事情を話せるのは、この辺までらしい。

興味がないとは言わないが、まあ、よき方向で話がまとまるといいが。

……にしてもだ。

「あのおじいさん、もう六十近いんじゃないかしら。でもリントン様は二十半ばくらいでしょう? さすがに年齢がアレなんじゃない?」

「…? ああ、いや、元騎士団長殿の息子さんとの縁談じゃよ。三十近いらしいから、年齢的にも丁度良いそうじゃ」

あ、なんだ、息子の縁談か。あの大剣振り回していたじいさんのじゃないのか。

「――おっと、そうじゃ。それよりニア殿には伝えておかねばならないことがあるんじゃ」

ん?

「ガンドルフという男が会いに来たぞい」

おや、意外な名前が出たな。

アンゼル、フレッサ、リネットにクランオールとは会えたが、アンテナ島では会えなかった弟子の名じゃないか。

奴はアンテナ島ではなく、こっちに来ていたのか。

「筋肉質な大男でしょ? 知り合いよ」

「うん。アレも例のやつを習得しとるようじゃし、ニア殿の関係者だとは思っておったよ。しかしさすがに主不在の屋敷に入れるわけにもいかんでな」

留守番として正しい判断である。

「下段にある天破の道場で寝泊まりすると言っておった。伝言、確かに伝えたぞ」

「ええ」

今日はもう遅いから、明日会いに行ってみよう。

……それにしても、ガンドルフは何しに来たんだろうな。