軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

83話 ライトミールに向かって!

俺は自宅に帰り隣町に向かう荷造りを始める。

そして翌朝再びアリスの家に顔を出した。

屋敷に到着した俺を出迎えてくれたメイドさんに挨拶を済ませた後、数分程でアリスが家の外に飛び出してきた。

「ラベルさん!」

今回は遠出と言う事で、アリスも今は装備を身に着けている。

ただ普段とは雰囲気が変わっており、一目で何かが違うと感じた。

その何かに気付くには時間は必要なかった。

「アリス、いつもと雰囲気が違うと思っていたら今日は髪型を変えたのか?」

「うん。気分転換に…… どうかな……?」

今回は後頭部で長い髪を一つにまとめて一つに束ねている。

それはポニーテールと呼ばれる髪型だった。

「いいんじゃないか? 似合っているぞ」

「そっそう? なら良いんだけど」

少し照れた素振りを見せたアリスは荷物を取って来ると俺に告げた後、恥ずかしそうに家の中に戻って行く。

アリスが部屋に戻っている間に、使用人の男がアリス専用の馬を門の傍に運び待機していた。

家に戻っていたアリスは荷物だけを持ってすぐに戻って来た。

今回は二人共馬で移動する事となっているので、俺も街でレンタル出来る馬を借りてアリスの家に来ている。

「お待たせ、おじい様の家はライトミールの街から少し離れた場所にあるの。ラベルさん、ライトミール迄の道はわかる?」

「ライトミールなら依頼で何度か行っているからわかるぞ」

「じゃあ、道案内は大丈夫だよね。ゆっくり移動しても一日もあれば着くから気分転換を兼ねてのんびり行こうよ」

「確かに、そう言うのも悪くないかもな」

荷物を馬に載せてアリスと俺は二人並んで祖父の家を目指し始めた。

景色を楽しみながら俺達はライトミールの街を目指す。

途中、道に咲く花を見つけてはアリスははしゃいでいた。

日差しは温かく、ゆったりとした馬のリズムに揺られながら風を切っていると心が癒される気がする。

そんな時、アリスが俺に話しかけてきた。

「ねぇ、ラベルさんは何故冒険者を目指していたの? お父様に色々話を聞いたんだけど、ラベルさんは長い間、冒険者に成る為だけに努力を続けてきたって」

アリスは俺の表情を伺いながら、不安そうな顔で聞いて来た。

きっと聞いても良い質問なのか、アリス自身にもわからなかったのだろう。

俺としては何度も聞かれた質問なので特に気にもしていない。

「そうだな」

俺は答えを返す為に、ふと昔を思い返してみた。

思い出したのは、初めて冒険者に憧れた時の恥ずかしい思い出ばかりだ。

だけどあの時の気持ちは今でもハッキリと覚えている。

俺は仲間には嘘を付きたくは無かった。

なので正直な気持ちを話し始めた。

「小さい時にS級ダンジョンをレイドで攻略したギルドのパレードを見たんだ。その時の冒険者達が凄く格好良くて心を奪われてな。それで俺も冒険者になりたいと思ったんだ」

「うんうん、その気持ち私も分かる」

「だけど…… あの時は子供だったから冒険者になる事がどれだけ大変な事か分かっていなかったんだ。ただ単純に冒険者に憧れていた」

「誰でも冒険者を目指す理由なんてそんなものだと思うよ。私もお父様とお母様に憧れて冒険者になったんだから」

「だけどその時の俺には冒険者に成る力が無かったんだ。だけどそれは努力すれば得られるって、馬鹿な俺は考えてしまって…… でも現実はそんな甘い物では無かったけどな。ハッキリ言って昔の俺は無知で夢見がちの馬鹿野郎だな」

「今のラベルさんからは全然想像つかない話」

「その後ポーターとしてダンジョンに潜る様になってから、初めて現実の厳しさを知ったんだ。知れば知るほど、甘くない世界だと分かったんだけど、諦めの悪い俺は偶然や奇跡の力を求めて十年もダンジョンに潜り続けたって訳だ。あはははっ、笑えるだろ? 」

「ううん。私はラベルさんを笑わないし、笑う人を許さない。だってラベルさんはSS級ダンジョンを攻略したメンバーの一人なんだもん。幾ら冒険者に分類されないポーターだと言っても私はそうとは思わない。ラベルさんもお父様達と同じ凄い人なんだと私は知っているから」

アリスは俺の目を見てハッキリとそう言った。

カインから色々聞いているのだろうが、あの馬鹿がどんな話をしたのかが気になる。

「ありがとう。だけど無理に俺を持ち上げなくてもいいぞ。俺はダンジョンに潜る度に次こそは必ずって勝手に思って、理由もないのにダンジョンに潜り続けていたら十年以上経過していた馬鹿野郎なんだからな」

「ラベルさんが本気でダンジョンに挑み続けたから、今の実力が身についたんだと私は思っているよ。魔石の力が無くても、ラベルさんはS級の冒険者が相手だって軽々と翻弄出来る実力がある事を私は知っているんだから」

頬を膨らませながらアリスは怒っていた。

俺の事なのにそこ迄自分の事の様に考えて貰って申し訳なく思う。

「とにかく俺の話はそんな所だ。今日まで色々と苦労もしたが、今はそれなりに満足している。もしリオンと出会えてなかったら俺は今でもポーターとしてダンジョンに潜っていたと思うしな」

何気ない俺の言葉にアリスは少し拗ねた表情を浮かべていた。

「俺の話はこの位でいいだろう。そろそろ昼食にしないか?」

丁度腹も減って来たので、俺は話題を変える為に食事を提案してみる。

「昼食!? 私…… 実は食材を持って来ているんだ。だから昼食は私が作ってもいいかな?」

「そうなのか? 俺も食材は用意してきたんだが」

「それは帰りに使おうよ。それじゃ駄目かな?」

「わかった。それなら今回はアリスに任せるよ」

「うん、任せて」

アリスはテキパキと準備を始める。

俺も火を起こしたり、地面にシーツを広げて座れる場所を確保したりする。

少し離れた場所で、鍋を見つめているアリスは真剣そのものだ。

既に美味しそうな香りが漂っており、味に関しては大丈夫だろう。

食事が出来上がり、食べてみると俺が作るよりも遥かに美味しい。

「マジで美味い。これならダンジョンでも食事はアリスに任せた方がいいかもな」

「えっ本当!? ラベルさんがそう言ってくれるなら。ダンジョンでも私が料理を作るから任せて」

俺としては冗談のつもりだったのだが、意外とアリスはノリノリだった。

食事を終えた俺達はライトミールに向けて移動を再開させた。

馬に乗り、手綱を軽く動かすと馬はゆっくりと進み始める。

★ ★ ★

俺達がライトミールの街にたどり着いた時は既に周囲は暗くなっていた。

街の中は光の魔法石で作られた街灯が周囲を照らしているので、とても明るい。

食堂には仕事終わりの人々が楽しそうに料理を囲み騒いでいた。

「おじい様の家は街から少し離れているの。だから今日はライトミールの街で宿を取った方がいいかも」

「それでいいのか? もし急ぐようなら、一応光の魔法石も持って来ているから大丈夫だぞ」

「ううん。今日は宿で休んで明るくなったらおじい様の家に向かおうよ」

「アリスがそれでいいのなら……」

俺達は宿を見つけた後、荷物を置いて食事に向かう。食事処は何処も賑わっており、酒を飲んでいなくても楽しい気分にさせてくれる。

「えへへへ。私、実は男の人と夜に二人でご飯食べに来たのって初めてかも」

少し恥ずかしそうにアリスは告白してくる。

「そんな大事な体験なのに、なんか…… こんなおっさんで何か申し訳ないな」

「違うって、私はラベルさんとだから嬉しいんだよ」

「そう言って貰えると助かるが、そういう事は軽々と言う言葉じゃないと思うぞ」

そう言いながら周囲を見渡せば、チラチラとアリスに視線を向ける男達を見つけた。

やはりアリスは魅力的である。

「何でそんな事を言うのかな? ラベルさんこそ私に対して失礼だと思わないの? 折角二人で食事をしに来ているんだから、そんな場を壊すような事を言わないで、もっとエスコートして欲しいかも」

確かにアリスの言う通りである。

小言を言って場を悪くしてどうするって言うんだ。

「そうだな、すまなかった。アリスの言う通りだ! 今日は二人で楽しもう」

「うん、この話はこれで終わり。あっ私、あの店に入りたい!!」

元気を取り戻したアリスは一際賑わっているレストランを見つけ駆け寄って行った。

その後二人で料理を食べながら、ダンジョンの話に花を咲かせる。

S級冒険者のアリスの話はバリエーションに溢れ、俺達の話が尽きる事はなかった。

アリスも俺も珍しくお酒を飲み、少しだが饒舌になっている気がした。

楽しい食事を終えた俺達は宿に帰るとそれぞれの部屋に入る。

明日の朝になればアリスの祖父の家へと向かう。

この宿から一時間程移動すれば到着するとの事なので、それ程離れている訳じゃない。

アリスとの旅は意外と楽しく、これで借りを返した事になるのが何だか申し訳なく思えてくる。

「これじゃ、借りを返した事にはならないよな」

俺は一人でそんな事を吐露していたのだが、アリスの祖父と出会った後、あの時の言葉が間違っていたと知る事になる。