軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

28話 ハンス、再びラベルの元へ

繁殖期が終わってから、一週間が経過している。

その頃、ハンスは執務室の中で荒れていた。

シャルマンの指示で殆どの権限を失ったハンスは自由にギルドを動かせなくなっていたからだ。

ギルド運営自体も平時なら全てがシステム化されており、事務職員だけでも十分でギルドマスターがやる仕事など殆どなく、あったとしても挨拶回りか来客の対応位である。

シャルマンのせいで自由にギルドを動かせなくなった為、ハンスはシャルマンを恨んでいた。

やる事がないなら訓練としてダンジョンに潜ればいい筈なのだが、ギルドマスターがダンジョンに潜って怪我をしたらどうする? とこんな時だけ正論を披露し絶賛引きこもり中という訳だった。

だが前回のSS級ダンジョンをアタックした時の敗因はちゃんと理解している。

だからダンジョンに潜り戦いの勘を取り戻すつもりでいた。

しかしそれは新しい装備が出来上がった後、装備の慣らしを兼ねてA級ダンジョンかS級ダンジョンを攻略すれば十分だとハンスは考えていた。

今のハンス達は別にダンジョンに潜らなくても、ギルドからギルドマスターや幹部としての給料が出ているので、生活するには困らない。

その事が引きこもりに拍車をかける原因にもなっていた。

シャーロットやフレイヤなどはダンジョンに潜りたそうにもしていたが、リーダーのハンスが動かないので、ダンジョンに潜れずにいた。

ただレミリアだけは今の生活を満喫している様子だった。

「ねぇハンス。ちょっと面白い話を聞いたんだけど」

執務室でレミリアが面白そうに話しかけてきた。

「ん? なんだ?」

「ギルドから追い出した、あのポーターの事は覚えてる? 」

「追い出したポーター? あぁラベルのおっさんの事か?」

「えぇ、そうよ。今どうしてると思う?」

「ふん。存在自体を忘れてたぞ。最後にちょっと手を回してやったから、この街でアイツと組むような冒険者はいなくなっている筈だ。そうだな…… 何処かで野垂れ死んでいるか。それとも別の街に逃げてるか? まぁそんな所だろうな」

ハンスは自分が追放したラベルの事を思い出して笑みを浮かべた。

最近のハンスにとってラベルを追放した時が絶頂であり、追放を言い渡した瞬間のラベルの悲痛な顔を思い出すだけで心地良くなり、失敗続きで溜まりに溜まったストレスがスッと消えていく感じがした。

「それがね。どうやら自分でギルドを作ってるみたいなの。メンバーも余り揃っていないみたいだけど」

「なにぃ? それは本当か?」

ハンスは顔色を変えた。

「えぇ、間違いはないわ」

レミリアは残念でしたという感じで、勝ち誇った顔を浮かべる。

レミリアは少し前、ギルドホームで【オールグランド】のギルドメンバーが噂話をしていたのを聞いていた。

そして興味を持ち自分なりに調べた結果、間違いないという結論に至ったのだ。

「全く、しぶといおっさんだぜ。再起不能まで追い込んでやったと思っていたのによ」

ハンスは忌々しそうにそう言い放つ。

「それでどうするの? 放っておくの?」

レミリアが挑発を始めた。

レミリアも楽しんでいるみたいだ。

シャルマンの件で丁度むしゃくしゃしていた所だ。

もう一度あのおっさんをどん底に叩き落としてやるのも面白いかもしれないとハンスは考えた。

「よし。おっさんの顔を拝みに行ってやろうぜ。どうせ仲間になった奴も大した事ない冒険者に決まっているだろうからよ」

「うふふ。面白そうね」

「よし。それじゃリンドバーグを呼んでくれ。おっさんが何処にいるか調べさせるぞ」

ハンスの心は晴れやかとなっており、以前の元気を取り戻しつつあった。

★ ★ ★

「お呼びですかハンス様……」

しばらくして、ハンスに呼び出されてリンドバーグが執務室に入って来た。

最近のリンドバーグは生気がない感じだ。

「リンドバーグか、よく来てくれた…… ん? リンドバーグ?」

「はっ、はい」

「どうした? 体調でも悪いのか? 随分痩せた様に見えるが?」

ハンスが心配するのも無理はない。リンドバーグの頬は痩せこけ、以前より体重も十キログラム近く落ちている。

「はぁ、最近食欲が無くて。心配をおかけしてすみません」

実際、最近ずっと胃が痛くて食事も余り食べれていない。

治療師に見て貰った所、胃に穴でもあいているんじゃないか? と言われていた。

治療系のスキルと薬で痛みを抑える事には一応…… 成功している。

しかしハンスに呼び出される度に装備の事が気になり、痛みが治まっていた胃が再びキリキリと痛み出す様になっていた。

「お前にはダンジョンにも潜って貰わないといけないからな。今からそんな体調管理でどうする?」

「はい。気を付けさせて頂きます。それで今日はどのような……」

リンドバーグは怯える様に尋ねてみた。

それは装備の事を聞かれたくなかったからだった。

もちろん装備の発注など出来てはいない。

「実はラベルというポーターについて調べて欲しい」

「ラベルって言うポーターって!? 【オールグランド】に居たラベルさんの事ですか?」

「お前はアイツの事を知っているんだな」

「そりゃ。長くギルドにいた人ですから。私もいつも頼んでいたポーターが急用で参加できない時とかに、臨時でポーターに付いてくれた事もありました。ポーターに困ったら、最初に声を掛けてみろってギルドでは共通認識でしたからね。どんな新人のパーティーでも自分の時間さえ空いていれば参加していた筈です」

ハンスにとっては初耳だったので、リンドバーグの話に少々驚いた様子。

「点数稼ぎかどうかしらんが、あのおっさん、誰のパーティーにも顔を出していたんだな」

「はぁ、それでラベルさんを調べてどうするんですか?」

「ちょっと用事があってな、なぁに顔を見に行くだけだ」

リンドバーグはハンスがラベルを追放した事を知らなかった。

ラベルがギルドから去った事は小耳に挟んだことはある。

しかしその時はSS級ダンジョン攻略の準備が忙しく、深く考える余裕などなかった。

何故、ハンスがラベルの事を? と気にはなったが、自分が考えても仕方ないと割り切った。

「分かりました。とにかく調べてみます」

リンドバーグは一礼すると執務室から出て行く。

ハンスは久しぶりにラベルの面を拝める事を楽しみになり始めていた。

「ふははは。今は一体どんな風に落ちぶれているのだろうな? もう一度、あの悲痛な顔が見れたら最高だぞ」

装備の完成を待つ事しか出来なくて、時間を持て余していたハンスは丁度良い玩具を見付け、嬉しそうに高笑いをはじめた。