軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

138話 封印作業 その1

早朝、俺は身支度を行い、冒険者組合へと向かった。

集合時間より少し早めに到着したのだが、ギルド会館は多くの人で溢れかえっていた。

「毎回思うが、よくこれだけ多くの人を集められるもんだ」

集合時間を待つ多くの人たちを掻き分け、俺は冒険者組合の支部長であるオスマンの元に向かう。

「オスマン、結構な人数を集めたな」

「そりゃそうだろう。封印作業が終わらなければ攻略が始められないんだからな! 一日でも早く封印を完了させるのが冒険者組合の責務だ」

「サボり魔のお前から、そんな言葉を聞くとは思わなかったな」

「馬鹿を言うな! 俺だってやるべき事はやっているぞ!」

「その言葉をアニータさんに聞かせてやりたいよ」

「ふんっ、言わなくてもあいつはわかっている! そうだラベル、朝飯は食ったか? 打ち合わせまで、まだ時間はある。今から用意させるから一緒にどうだ?」

「そう言えば、朝食はまだ食べていなかったな。今からこき使われるんだし、飯位は御馳走になっておくか」

「お前にとやかく指示を出す気はねーよ。俺が何かを言わなくても、お前は勝手に事を進める奴だからな」

「それは俺が動かないと終わらないからだろ!!!」

「わっはっは! 今回も当てにしているぜ」

「お前が心配しなくても、早く封印を終わらせないと俺もダンジョンに潜れないからな。全力で協力するつもりだ」

今の俺はやる気に満ち溢れていた。

◇ ◇ ◇

国からダンジョンの封印作業を請け負った冒険者組合は、ダンジョンが出現した場所の管轄支部長であるオスマンを統括責任者に据え作業を進める事が決まった。

そして俺はオスマンの指名を受けて、封印作業の監督員に任命された訳だ。

俺以外にも監督員は数名任命されており、封印で使う石材などの資材を用意する資材監督員。

封印作業中に魔物に襲われない様に作業員を守る護衛監督員。

最後に作業員全員の食事や寝床を担当する生活監督員が任命されている。

全体朝礼が始まる三十分前には全監督員が揃ったので、全体での打ち合わせを行う。

言わなくても全員が経験者であり、それぞれが見知った者ばかりだ。

「それでは今回も前回と同じ流れで、積石は一日に一列ずつ積み上げていきたいので、間に合う様に材料の運搬をお願いします」

「あぁ、任せてくれ。他に必要な材料があるのなら、早めに教えてくれれば対応させてもらう」

「わかりました。その時はお願いします」

打ち合わせといっても作業内容は毎回同じなので、ダンジョンが出現する場所によって変わる施工方法の確認と工程のすり合わせ位だった。

監督員全員(おれたち) の打ち合わせが終わった後、作業員全員参加の全体朝礼が行われる。

そこでオスマンが挨拶を行った後、各監督員が紹介された。

今回の封印作業に応募した者達は既に班分けをされており、今もその班ごとに並んでいる。

朝礼が終われば各班ごとに集まる事となっていた。

俺が受け持つ封印作業には、四十人の人員が割り当てられているとの事だ。

今回のA級ダンジョンは崖の側面に入口が出現しているので、入口全体を大きな石で積み上げて魔物が出入りできない様に封印するのが仕事である。

朝礼では施工方法や作業に関する注意点などが説明された。

朝礼はスムーズに終了し、俺の前に作業員が集まっている。

「この中で初めて封印作業を行う者は手を上げてくれ!」

俺が尋ねると、三割位の人が手を上げていた。

封印作業は賃金が高く短期間で高収入を得られる為、リピーターが多い。

封印作業は早く終わらせる必要がある為、募集の際も経験者が優遇される。

しかし経験者のみばかりを採用していたら、新人が育たない。

なので作業効率と人材育成を兼ねて経験者七割、未経験者三割にしているとの事だ。

「未経験者の者は経験者のサポートに回って貰う。今回の作業で経験者がやっている事を覚えて欲しい」

「はい」

「おっさんの癖に、偉そうにしやがって……」

未経験者の若者の中から、そんな言葉が聞こえてきた。

毎回必ず気の強い者が数名はいるので、俺は気にせずに説明を続ける。

「それじゃ今から作業を始める。まずは地面を掘り込み溝を作る作業だ! 積石一段目の半分が埋まる深さで、溝を掘っていくぞ」

全体を見渡していると八割位の参加者は俺の話を真剣に聞いてくれているようだ。

「一段目が土の中に埋まる事で積石を安定させてくれる。最初の一段目をきちんとやっておかないと、段数が上がる度に不安定になるから、手を抜かず真剣に作業を進めてくれ」

経験者は当然だなといった感じで、頷いていた。

「要するに掘ればいいだけだろ? それを小難しそうに言いやがってよ」

未経験者の中に、俺の事が気に喰わない奴がいるみたいだ。

(まぁ、作業が始まってしまえば直接話す事はないだろうし、相手をせずに放置しておくのが無難か……)

俺はその若者の事は無視をすると決めた。

「それでは今から作業開始だ。各班長の指示の元、作業に移ってくれ」

「「やるぞぉぉ~!」」

まずは地面を掘るのだが、腕力をアップする効果を持つスキル保持者二十名が、スコップやツルハシを持ってダンジョンの入り口の前を掘っていく。

残りの者は掘った土を小車に積み込み、所定の場所に運んで山にして行く。

封印に使用する積石の大きさは、俺の身長と同じ位あるのでかなりの重量だ。

しっかりとした下地を作っておかなければ、積重ねて行く途中でバランスを崩して崩壊する事がある。

所定の深さまで掘り進んだ所で、天秤を使って水平を割り出して糸を張る。

その糸から長さを測り、掘削床面を綺麗に均していく。

石は水平な状態で積み上げる必要があるのだが、見た目で均しても水平にはならないので、俺は天秤を使って水平を割り出す様にしている。

「流石、経験者は手慣れているな」

トラブルが発生する事も無く、滑り出しは順調だと感じた。

「今日はこんなものだろう。みんな作業はこれで終了だ。テントに戻って飯を食ってくれ」

「よっしゃー!」

そして俺は切りの良い所で作業の終了を告げる。

四十人の作業員が頑張ってくれたおかげで、一日で掘削作業を終わらせる事ができた。

重労働を終え、腹をすかせた作業員たちはテントに向かって帰り始めた。

食事は料理人が作っており、バイキング形式で美味しい料理を無料でいくらでも食べれる様になっている。

作業員を見送っていると、俺に文句を言っていた若者も疲れ果てた表情を浮かべながら歩いていた。

「チッ!」

相当こき使われた様で、俺と目線が合うと大きく舌打ちをしている。

どうやら自分は辛い作業をしているのに、作業に参加しなかった俺が楽をしている様に見えたのだろう。

しかし俺は天秤を使って水平を割り出したり、絶えず作業の指示を出していたのでサボっていた訳ではない。

「さて、誰も居なくなった事だしチェックだけしておくか」

気を取り直した俺は、掘削し終わった溝に飛び込み仕上がりをチェックする事にした。

掘削後の床面がボコボコになっていると、積石のバランスが悪くなるので床を綺麗に均す必要がある。

「う~ん、何箇所かもう少し綺麗に均した方が良い所があるな」

俺は周囲に誰もいない事を確認した後、サンドワームの魔石を飲み込みスキルを発動させた。

サンドワームの魔石の効果は土操作である。

俺は自分のスキルの訓練も兼ねて、床付けの悪い場所をスキルで修正していく。

「まぁ、こんなもんだな。それにしてもサンドワームの魔石も便利だ。今まではスコップで修正していたから楽でいい」

俺は自分のスキルの利便性を確認できて満足する。

翌日は石積み作業を行う予定だ。