軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

好きなひとへの贈り物

その日のうちにセレグラを発つことにした私は、まずアントニオ・アーベルの家に行き無事を報告した。

見送りをしてくれたルークは、とんでもなく責任を感じているらしく、泣きながら私の無事を喜んでくれた。

私が階段を踏み外したのは、私の不注意だ。

彼は悪くない。

頭にコブはあるものの、それだけだ。

出血はないし、ほかに不調もなかった。

セレグラを離れること、また戻ってくること。それまで、リュカがここに留まることを。

それらを伝えた後、私はひとつ、アントニオ・アーベルにお願いをすることにした。

宿に戻った私は、帰り支度を整えながらも、侍女リラのことを考えていた。

私の背を押したリラ──私が記憶を取り戻したことでどう反応するかと身構えていたけど、彼女の反応は、あまりにも意外なものだった。

《良かった……お嬢様、記憶が戻ったのね》

《あの時は……気がついたらお嬢様が落ちていて》

《私の不注意のせいだと思った》

《良かった、ほんとうに》

……リラは、私の記憶が戻ったことを心底、喜んでいる様子だった。

そして──彼女には、私を突き落とした、という自覚がない。

あまりにも異常だった。

こころの声は偽れないものだ。

こころの声を制御することは、並大抵の人間にはできない。出来るとしたら相当訓練を積んだ神官ぐらいなものだろう。

それに、リラは私のセカンド異能を知らないのだ。

だから、彼女はこころの声を偽る必要は無い。

それなのに、彼女は本心から、私の転落を 事故(・・) だと思っている。

これは…………どういうことなのだろう。

そこでふと、私はもっとも重要な事柄を見落としていることに気がついた。

(そもそも、の話、よ?どうやってジュリアンは、本物のジュリアン・ザイガーと成り代わったの?顔かたちがいくらそっくりだったとしても、成り代わりなんてそう上手くいくはずが……)

顔かたちを似せるのも相当大変だが、誰かを演じるのはさらに難易度が高いことだろう。

しかも、彼が騙すのは、ジュリアンの父親。親と子なら、よほど関係が悪くない限り、お互いの性格や考え方というものを把握していることだろう。

それなのに、ジュリアンはジュリアン・ザイガーとしてそこにいる。

ザイガー子爵を騙しきっている、ということだ。

それは、なぜか。

考えられることは──。

午後。

リュカは、見送りのために船着場まで来てくれた。

「気をつけて」

「すぐ戻ってくるわ。……ねえ、リュカ」

私は、抱えていた箱を彼に差し出した。

「これ、あなたに」

彼は、差し出された箱を前に面食らっているようだった。

なぜなら、その箱は私が両手で抱えるほど大きい。

「……これは?」

「贈り物よ」

「贈り物?」

リュカが目を瞬いて、不思議そうにそれを見た。

こんな大きな箱にいったい何が入っているのだろう……と思っているのだろう。

私は、箱の横から顔を出すとにっこりと笑いかける。

「 鎖帷子(チェーンメイル) !アントニオ・アーベルに頼んで、用意してもらったの。彼の異能を施してあるのよ?」