軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脱税の疑惑があります

関所は、シンと静まり返っていた。

懐中時計を取り出して確認すると、まだ朝の九時前。辺境なのもあって、もともと人の往来は少ないのだろう。

そして、アントニオの話通りであれば、今は税金が課され、さらに人通りは減っているはずである。

私とリュカは顔を見合せた後、サクサクと雪を踏みながら関所へと向かった。

関所に詰める男のうちひとりが、私たちに気がついた。

ずいぶん眠いようで、欠伸をしている。

「なんだ?観光客か。ここから先は一シリング八ペンスが必要だ」

一シリング八ペンス……。

その値段の高さに唖然とする。

商人にも同様にこの税が課されているのだから、とうぜん商人も商品の値を釣り上げなければ、赤字になってしまう。

以前のセレグラでの小麦の値は一シリングであったらしい。

この税が課されてから、三シリングになった、ということは……。

浮いた四ペンス分は商人の懐の中、ということなのだろう。

とはいえ……。

(いくら何でも、一シリング八ペンスって!ぼったくり過ぎじゃない?)

今までファーマル、セレグラ間に関所は設けられていなかったはず。

それに、ここに関所を敷いたこと。

代理領主は報告しているのかしら……。

脱税、という言葉が頭をよぎる。

黙り込む私を見て、男が眉を寄せる。

ちょび髭がユーモラスな男性だ。高そうな詰襟の制服を身につけている。

ふと、リュカが男に言った。

「高すぎないか?以前は、関所なんてなかったはずだけど」

「俺に言われても困る。領主様が決めたことだ。それで、どうする?この道を使うなら、税を払ってもらう必要があるが?」

他の道は除雪がされておらず、酷い悪路だ。

ファーマルに行くなら、この道を通るほかない。

完全にこちらの足元を見た発言だ。男は私たちが払うものだと決め込んで、ニヤニヤしている。この分だと、この男たちも税を少し多めに言って、ちょろまかしてそうな気さえしてくる。

……どうなっているの、ほんとうに。

私はめまいがする思いだったが、まさかここで彼相手に問い詰めても仕方がない。

私はリュカに目配せすると、男に言った。

「セレグラに戻るから構わないわ。ああ……でも、そうね」

ふと、思い出したように私は言った。

「ひとつ、お願いがあるの。いいかしら?」

その後、私はふたたび臀部の痛みに耐えながら帰路についた。

宿に戻った時にはすっかり日は昇っていた。だけど、例の税の件があるからだろうか。

あまり街の雰囲気は明るいものとは言い難い。思えば、セレグラに降り立った時も地元住人と思わしきひとたちが何事か話し合っていた。

こんなに寒いのによく長話してられるわね……と驚いたものだが、一刻を争うものだったからこそ、なのだろう。

リュカの手を借り、下馬すると私はようやく息を吐いた。

宿に戻ると、まだ代理領主の遣いは来ていないようだった。

時刻は、昼の十二時を少し回ったくらい。

代理領主の招待を受けているが、ここからどれくらい遠いか分からないので、軽食を摂って待つ。

そして、昼の十三時を過ぎたあたり。

代理領主の遣いである衛兵が宿を訪れた。

リュカと共に玄関に向かうと、そこには知った顔があった。

「あら。えーと、チャーリーにジョージ?」

名を呼ぶと、雪を払っていたジョージが私を見てにっこりと笑った。

その隣で、チャーリーが、胸に手を当てて頭を下げた。騎士の礼だ。

「昨日ぶりですね、ご令嬢。代理領主様直々に指名されまして……。面識があった方がいい、との仰せです」

「そうなの。よろしくね。こちらは、私の護衛である異能騎士、リュカ・ツァーベル。リュカ様、昨日アントニオ・アーベルの家まで護衛してくれたのが彼らよ。ジョージとチャーリー」

「ああ。昨日は助かった。急にすまなかった」

リュカが握手を求めると、チャーリーとジョージがそれぞれそれに応えた。

「高貴な方の護衛をするのはあまりないことですので、いい経験になりました。こちらこそ、感謝申し上げます」

チャーリーが微かに微笑みを浮かべて、和やかな雰囲気の中、私たちは宿を出た。