軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

958:天と地

「ルミナ、セイラン、それとベル! お前たちは上空の対処を! シリウスはあのデカブツを抑え込め!」

仲間たちに指示を飛ばし、破壊の跡へと地を蹴って駆けだす。

ぼんやりしていれば、上空のワイバーンたちは一斉に地上へと向けて攻撃してくることだろう。

十体以上いる奴らを抑え込むには、こちらもそれなりに力を使う必要がある。

しかし一方で、地上にいるグレイヴドラゴンについても油断することはできない。

頑強な岩の如き鱗に包まれたその巨体は、並の攻撃では通用しないだろう。

(空はあちらに任せるしかないが――地上は地上で、乱戦になりそうだな)

今は出し惜しみをしている余裕はない。

ルミナも精霊たちを召喚し、数の不利を補いながら上空へと飛び出した。

その戦いは、これまでと同じく地上へと叩き落して門下生たちに任せる形となるだろう。

そうなれば、地上でも複数の戦闘が発生することとなる。

それを、この化け物を相手にしながらやるとなると、どうしても危険は避けられないだろう。

「上等――シリウス!」

「ガアアアアアッ!!」

シリウスが咆哮を上げながら、グレイヴドラゴンへと向けて正面から突撃する。

対するグレイヴドラゴンもまた、正面からそれに相対してきた。

体格は互角。巨体と巨体がぶつかり合い、衝撃が周囲へと迸る。

シリウスの頑丈さは言わずもがなであったが、グレイヴドラゴンもどうやらかなりのものであるらしい。

二体のドラゴンの攻撃は、互いにほとんどダメージを与えられていないようだ。

「シリウスの攻撃でほとんどダメージを受けていないとなると――」

どうやら、グレイヴドラゴンは物理攻撃に対してかなりの耐性があるらしい。

それに対し、俺たちの攻撃は大体が物理攻撃だ。

正直なところ、あまり相性がいいとは言えないだろう。

「まずは足回りからだ……アリス!」

俺の言葉に返答はなく、しかし何処かから飛来した矢がグレイヴドラゴンの左後ろ足へと突き刺さる。

その瞬間発生した赤い印へと向け、俺は強く踏み込んでスキルを発動させる。

「――『練命破断』!」

アリスによって付与された弱点部位、その痕跡へと向けて黄金の刃を振る。

中空に軌跡を描きながら振るったその一閃は、頑強極まりないグレイヴドラゴンの鱗を斬り裂き、その足へと深い傷を刻んで見せた。

「ゴオオォ……ッ!」

受けたダメージに、グレイヴドラゴンの瞳が怒りに染まる。

しかし、その攻撃がこちらに向かうよりも先に、シリウスの牙がグレイヴドラゴンの首へと食らいついた。

その頑強さ故に、鱗を貫くほどに牙が食い込むことは無かったが、首を圧迫されたことで苦しげに呻いている。

そして動きが止まったその瞬間に、師範代たちもまた俺が攻撃した左後ろ足へと攻撃を集中させた。

「ええい、無駄に頑丈だなコイツ……!」

しかし、それだけ攻撃を集中させてなお、骨を断ち切るには至らない。

かなり深い傷を負わせはしたものの、行動不能にさせるには届かなかった。

尤も、傷自体はかなり深く、踏ん張りは効きづらくなっている。

おかげで、シリウスの攻撃を振り払うにも力が入らず、グレイヴドラゴンの巨体は徐々に抑え込まれつつあった。

しかし――その瞳の中に燃える怒りは、反撃を諦めている色ではなかった。

「――下がれ!」

それと共に吹き上がる、強大な魔力。

その気配に、俺たちは咄嗟にその場から退避した。

そして、次の瞬間――グレイヴドラゴンが地を踏み締めると共に、周囲には無数の岩の棘が突き出した。

少しでも追撃にこだわっていれば貫かれていたであろうその一撃に、思わず口角が吊り上がる。

(この状況でも諦めんか。いい度胸だ)

シリウスも腹の下から岩の槍に衝かれ、衝撃によって踏ん張りがきかなくなった。

その瞬間に思い切り体を捩ったグレイヴドラゴンは、首の鱗をいくらか剥がしながらもその拘束を振り払った。

更に怒りに燃えるグレイヴドラゴンは、その尾を大きく振るって周囲を薙ぎ払いつつ、その先に付いた鉄球の如き岩塊をシリウスへと向けて叩きつける。

物理攻撃であるためシリウスにはそれほど通じるわけではないのだが、体勢を崩していたシリウスは、その衝撃によって地面に転がることとなった。

その瞬間に、グレイヴドラゴンはシリウスに覆いかぶさるように襲い掛かり――その刹那、巨大な爆発がグレイヴドラゴンの巨体を押し返した。

「緋真……!」

その炎の中から現れたのは、《臨界融点》を使用した緋真であった。

自傷ダメージを負いながらも、たたらを踏んだグレイヴドラゴンの顔面へと向けて刃を振るう。

「――【断概】!」

それは、ティエルクレスの剣術。

防御力を無視する切断の一閃は、体勢を崩したままのグレイヴドラゴンの右目へと振り下ろされ――そこに、一筋の傷を刻んで見せた。

片方の目を潰し、視界を奪う。その瞬間に、そちら側にいた門下生たちは一気に接近した。

相手から姿を捉えられないその状況で、防御無視の手段がないならば魔法攻撃を優先し、少しずつそのHPを削り取ってゆく。

視界を奪われたグレイヴドラゴンは、怒りと共に緋真を攻撃しようとするが、緋真はその立ち位置を調整することで相手の視界に入らないよう立ち回っている。

そして、緋真を捉えようと視界を動かしていたその隙に、体勢を立て直したシリウスがその尾に魔力を収束させた。

「ォオオ……!」

しかし、その魔力の気配にグレイヴドラゴンもまた気づく。

シリウスの尾から放たれる《 不毀の絶剣(デュランダル) 》の一撃は、強固な肉体を持つグレイヴドラゴンとて無事では済まないだろう。

故に、グレイヴドラゴンもそれを止めるためにターゲットをシリウスへと移す。

尤も――

「《オーバーレンジ》――《練命剣》、【練煌命刃】!」

斬法――剛の型、白輝。

膨大な生命力が、巨大な剣となって形を成す。

それと共に振り下ろした一閃は、最早閃光となってグレイヴドラゴンの尾の一撃を迎撃した。

相手の重量はかなりのものだ、本来であればそれを正面から受けることは困難だっただろう。

だが、先ほど付けた左足の傷が、グレイヴドラゴンの踏み込みを甘くした。

生命力の刃はグレイヴドラゴンの尾を受け止め、力の通り切らぬその一撃を弾き返す。

「――今だ、シリウス!」

「ルァアアアアアッ!!」

銀に輝く閃光が、掬い上げるように放たれる。

空間を断ち割り、彼方まで駆ける次元の刃がグレイヴドラゴンの体をなぞる。

そして、断層を形成した空間は元に戻り――そこに付けられた傷だけは変わらぬまま、グレイヴドラゴンはゆっくりとその場に崩れ落ちた。

「……やはり、硬い相手にはコイツが一番か」

シリウスを上空の対処に向かわせなかったことは正解だったようだ。

とりあえずの強敵は倒したが、まだ上空の戦いは続いている。

ほぼ大半のワイバーンは地に落ちて、門下生たちによって対処されている。

残るワイバーンも、相対しているのはベルだ。程なくしてその戦いも終了することとなるだろう。

「やたらと硬い敵への対処は、まだ課題が残るところか」

白い翼を広げて空を舞ったベルが、光り輝く刃でワイバーンを斬り裂く。

そしてそれとほぼ同時、地上に落とされていたワイバーンたちへの対処も完了した様子であった。

とりあえずの難所の攻略に、安堵の吐息を零す。

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください――』

『……どうやら、これで私の枷も外れたようですね』

そして、戦闘終了と共に告げられた言葉に、俺は思わず目を見開いたのだった。