軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

954:前人未踏

『レベルが上昇しました。ステータスポイントを――』

俺の一撃がとどめとなったのか、或いは緋真たちの炎が致命的だったのか。

どちらにせよ、俺たちの猛攻を耐えきることはできず、寄生竜樹トネリュドはボロボロと枯れ果てながら崩壊していった。

最後の最後まで正体も弱点も良くわからない相手だったが、どうやら作戦自体は有効であったようだ。

「しかし、戦術として正解だったのかどうか」

「勝利できたのですから、良いのでは?」

「まあ、もう一度挑むような真似はしないつもりではあるがな」

もしもこの先の階層で敗北すれば、俺たちは再びこの階層に挑むことになるだろう。

そのようなことが無いように戦うつもりではあるが、再戦の可能性は考慮しておかなければなるまい。

尤も、答えらしい答えに辿り着ける気もしないのだが。

結局のところ、内部に取り込まれたブラッドトレントを破壊することが倒すことに繋がったようであるし、そこに攻撃を届かせるためにダメージを与え続けることも正解ではあった。

まあ、今度は再生力を抑えた上でとっとと《 不毀の絶剣(デュランダル) 》を撃たせて真っ二つにした方が良いだろうが。

「ともあれ、勝利は勝利だ。このまま先に進みたいところだが――まずは、レベルアップの処理だな」

先ほどブラッドトレントが生えていた場所を見れば、そこに巨大な穴が開いている。

どうやら、そこから先が次なる階層に繋がっているらしい。

果たしてどのような場所であるのか、気になるところではあるが――まあ、まずは準備だろう。

とりあえずはレベルアップの処理を進めつつ、同じくウィンドウを眺めている緋真へと声をかける。

「緋真、この先の階層の情報は?」

「ありませんね。ここの階層までしか情報は出回っていないです。って言うかそもそも、先に行ったプレイヤーもいないんじゃないですかね?」

「トネリュドを倒せた例は無かったか」

「報告はゼロですね。もしかしたらいたのかもしれませんが……少なくとも、この先の情報は皆無です。どんなフィールドなのかすら定かではありません」

「ふむ……ここから先は、慎重に進む必要があるか」

このエリアよりも更に敵は強大となり、その上で情報は皆無。

それは、俺たちにとってもかなり危険な戦いとなることだろう。

そもそも、このダンジョンが果たしてどこまで階層があるのかも不明であるが、消耗を避けるためにもなるべく慎重に立ち回る必要があるだろう。

無論、それはそれで楽しみであるともいえるのだが。

『……ふむ。かなり成長してきましたね』

「どうかしたか、ベル?」

と――ステータス画面を閉じようとしたそのタイミングで、後ろからベルが身を乗り出してきた。

俺のステータスを見ていたわけではないだろうが、じっとこちらを見つめる白いドラゴンは、どこか嬉しそうに声を上げる。

『もうじき、私の制限が外れます。そうすれば、私もより力となれるでしょう』

「ほう……ってことは、あの最後のスキルも使えるようになるってことか」

《ラグナロク》という名の、正体不明のスキル。

それはベルにとって最も強力なスキルであり、そして現在まで封印され続けている代物だ。

偏に俺の力不足が原因であるのだが、それももうじき解消されるようだ。

そのスキルがどのような性質を持っているのかは、一応説明は受けている。

だが、その能力は実際に見てみないことには実感できないだろう。

「そいつは楽しみだな。お前さんには、ここまで不自由をさせたもんだが」

『構いませんよ。あなたに付いて来たからこそ、果たすことができた目的もありますから』

「……まあ、そうだな」

ベルは契約こそ交わしているが、俺の配下というわけではない。

目的を全て果たしたのなら、契約を解除していてもおかしくはないのだ。

ここまで付いて来てくれているのは、義理という部分もあるだろう。

何だかんだと、彼女は義理堅く几帳面だ。この調子ならば、最後まで付いて来てくれることだろう。

「なら、次の階層で制限は外れそうだな。このダンジョンの最奥に辿り着くまでには間に合うかね」

『次が最後でなければ、間に合うのではないですかね。ここで私の真価を見せるのも悪くないでしょう』

どこか得意げな様子のベルには小さく苦笑しつつ、ステータス更新を終えて足を進める。

先ほどまで、天を衝くほどの大樹が生えていた場所。

そこに開いた大穴は、底の見通せぬ漆黒だった。

さて、果たしてこの先はどのようなエリアになっているのか。

というか――

「この穴、飛び込めってのかね?」

「それしか無いんじゃないですかね。ロープを引っ掛けるようなところも無さそうですし」

まあ、高所から飛び降りるのも初めてのことではない。

種族スキル強化の時も飛び込んだし、それと大して変わりはしないだろう。

流石に、階層の移動でいきなり殺されるということも無いだろうからな。

一応、注意はしておいた方がいいだろうが。

「よし、それじゃあ俺が行くから、連絡が届いたら続け」

「師範、それなら私の方が先に――」

「俺一人ってわけじゃない、テイムモンスターたちも行くんだ。万一空中からの落下になっても、セイランがいれば何とかなる」

この中で最もリスクが低いのが俺なのだ。

階層移動に悪辣な罠が仕掛けられていたとしても、対処することは可能なのだから。

尤も、甘く見るべきではないことも事実。

ここは大公ヴァルフレアのダンジョンなのだ。前人未踏の階層となれば、相応の危険もあることだろう。

俺はテイムモンスターたちを従魔結晶に戻し、手に持ったまま暗い穴の中へと飛び込んだ。

「……!」

浮遊感、吹きつける風。

その圧迫感に目を細めながら、暗い穴の先を見通すように目を凝らす。

やがて、頭上までもを闇が包み込み――急速に、視界が開けた。

「――っと」

着地の衝撃は、大したものではなかった。

深く積み重なった枯れ草が、クッションとなって衝撃を和らげてくれたのだ。

周囲を見渡せば、先ほどのような深い森とは異なる、開けた景色。

そして、目の前にあるのは――

「今度は山か。何とも、だだっ広いダンジョンだな」

聳え立つ、巨大な影。

見た目には木々の少ない、登りやすそうな山であった。

とはいえ、山登りがそうそう楽なものになるはずが無いし、そもそもその中で魔物と戦わなければならないのだ。

決して、容易い道行きにはならないだろう。

「それで……次の目的地はあそこか」

そして、はるか遠くに見える山の頂上。

そこに、ここからでもやたらと目立つ、高い塔が天へと伸びていた。

あの塔が最終目的地なのか、あるいはその先に何かがあるのか。

今のところは不明だが、とりあえずはの場所を目指して進んでいくしかないだろう。

「……よし。お前たち、降りても問題は無かったぞ。ただ、あまり一気に飛び込むと着地で衝突しかねんから、少しずつ来いよ」

レイドに向けた通話を行い、先ほどの着地点から少しだけ離れておく。

多少の度胸はいるだろうが、うちの連中ならばすぐにここで集結することになるだろう。

さて――果たして、この階層はどのような場所なのか。

従魔結晶からテイムモンスターたちを呼び出しつつ、俺は山の上へと視線を向けた。

「ここが次の階層ですか、お父様」

「ああ。揃うまでには時間がかかるから、魔物と接触しない程度に索敵をしてきてくれ」

「了解です、お待ちください」

ルミナには周囲の索敵を命じつつ、レイドのメンバーがこの階層に降りてくるのを待つ。

さて、果たしてどのような敵がいるのか。

ここから先は、注意深く進んでいくこととしよう。