軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

929:刃にて道を拓く

しばしこのエリアを進んでいくことで、ある程度の性質は見え始めた。

最初に戦った二体を始めとして、出現する敵は全て似通った姿、性質を持っているようで、どいつもこいつもある程度武器の扱いに習熟した動きをしていた。

確かに強くはあるが、強すぎるというほどでもない。

だが、それは俺たちが基準であるが故で、通常のプレイヤーにとってはかなり厳しいエリアだろう。

それだけ、プレイヤーたちはスキルの存在に頼っているのだから。

(こいつは、アルトリウスが見ても俺たちの担当にしそうだな)

流水にて相手の攻撃を捌きつつ、反撃で的確に殺しながら胸中でそう結論付ける。

純粋な戦闘技術がものを言う場所――となれば、俺たち久遠神通流の独壇場となるのは目に見えていた。

そして、俺たちとしてもこの趣向は嫌いではない。

スキルを用いた派手な戦いも悪くはないのだが、やはり武器のみの戦いというのも良いものだ。

尤も、アリスにとってはどうにも相性の悪い場所であったが。

「正面から戦うのは私の仕事ではないのだけど」

「そう言う割には、きっちり殺してるじゃないか」

「ま、この程度ならね」

正面から相手の心臓に刃を突き立てたアリスは、軽く嘆息しながらそう口にする。

通常、アリスはスキルを用いて姿を隠しながら戦うスタイルだ。

故にこそ、このエリアにおいてはかなり相性が悪いとも言えるだろう。

しかしながら、アリスは自在に虚拍を扱うことができる。その技術のみに限れば、俺を超えていると言っても過言ではない程だ。

そのため、アリスはこの相性の悪いエリア内においても、十分に戦うことができているのである。

「まあ、乱戦は相性が悪いだろうから、無茶はしないでくれよ」

「言われなくても、そこまで踏み込んだ動きはしないわ」

戦えると言っても、アリスがそれを活かすことができるのは一対一の戦闘の時だけだ。

集団戦の場合は、大人しく隙が見つかるまで待機しておいて貰いたいところである。

弓を使うこともできるのだから、離れていたとしても戦えないわけではないのだ。

「しかし……いまいち、傾向が掴めんな。出現も動きも、てんでバラバラだ」

敵の姿形、そしてこちらに襲い掛かってくる性質自体は共通している。

しかしながら、用いる武器や出現するタイミング、数などはパターン化されている様子はなく、どのタイミングでどこから来るのかも読みづらい。

そして一切喋りもしないため、この敵の目的や真意などについては完全に謎のままだ。

せめて何かしら変化があればいいのだが、適当に進んでいるだけでは答えは得られなさそうである。

「ふむ……全員、いったん集合」

「はーい」

「了解。方針転換かしら?」

「まずはその相談だな。このまま適当に進んでも、何も解決しなさそうだ」

このエリアの戦闘そのものは悪くない。

だが、俺たちの目的はあくまでもこのエリアの攻略なのだ。

ただ遊んでいるだけでは、目的を達成することはできないだろう。

「全員、何か気づいたことはないか?」

「改めてそう言われると、ちょっと難しいですね……」

「そうね……きちんとした数を数えたわけでもない、単なる体感の話だけど、敵の数がまた減ってきているような気はするわ」

アリスの言葉に一瞬沈黙し、思考を巡らせ――確かに、その通りであったと首肯する。

このエリアにきて最初の戦闘は、たった二体の敵が相手だった。

そこから進んでいくにつれて数の増減はあったが、全体の傾向としては基本的に増加だった筈だ。

だが、直近の戦闘では増加は打ち止めとなり、減少の傾向が増えてきている気がする。

「ルミナ、上空から見ても何もなかったんだよな?」

「はい、私が見た限りでは、何も発見できませんでした」

何か目印になるものがあるわけではない。

しかし、傾向として出現パターンに変化があったのであれば――

「……どこかの方角に進むと、敵の出現が増えるんですかね?」

「目印になるものが少なかったから確定じゃないが、基本的にはまっすぐ進んで来た筈だ。遠景の山の景色からしても、それは間違いじゃないだろう」

「それなら……いったん戻って、敵の出現が多かった辺りで進む方角を調整してみる?」

「そうだな。順当に、敵が多い方向に何かがあるというのならわかりやすいが」

確定ではないが、何かしらの手掛かりにはなるかもしれない。

今は何も情報を持ち合わせていない状態なのだ。

手探りの情報であったとしても、進むための目標になるのならば悪くはない。

そう判断した俺は、全員に同意を取ってから、一度元来た道を戻ることとした。

敵の数が増えることは少々厄介ではあるのだが、自分の剣を見つめ直すには悪くない時間だろう。

「けど、本当に方角が分かりづらいですね。何も目印がないから、真っすぐ進んでいるのかどうかも……」

「太陽の位置は変わっていないようだから、方角だけなら何とかなる。と言っても、真上に近いから大雑把だけどな」

ここまで来ると、意図してこのようなエリア構造になっている気がしてならない。

わざと方角を掴みづらくして、自分が進んでいる方向を誤認させているのだ。

まあ、流石に遠景に見えている山々を動かして場所を誤認させるような真似はしていないと思うが。

そこまでされると、流石に自分の位置を確認することもできなくなってしまうだろう。

最悪、遭難したら帰還のスクロールを使うことも選択肢に入れなくてはなるまい。

「でも、どうしてわざわざそんな構造にしてるんですかね?」

「端的に言うなら、迷わせるためだろうな。だが、どこに行くかも定まっていない内から迷わせるってのは中々病的だ」

目標もないのだから、最初は適当にうろつく他に道はない。

だというのに、このエリアは最初からこちらを迷わせようとしているのだ。

どこか、偏執的な意図すらも感じるエリアだった。

「何にせよ、他に手がかりもない。進んでみるしかあるまいよ」

果たして、敵が多い方向という考えが正解なのかどうか。

不明ではあるが、試してみればその答えも判明するだろう。

元来た道を戻り、歩を進め――程なくして、俺たちは再び敵の集団に遭遇することとなった?

「数は……六体か。さっきより一体多いな」

「これだけだと、偶然なのかどうかも分からないわね」

「そうだな。まあ、どちらにせよ倒すことに変わりはないさ」

アリスの言う通り、一体程度では誤差の範囲を超えない。

こうやって少しずつの数しか変動しないからわかりづらいのだ。

少しずつでも増えていく方向を確かめてみるしかないだろう。

「全員、一体ずつだ。さっさと片付けるぞ」

もちろん、この程度の数なら苦戦するほどの要素もない。

不利なアリスが戦う必要性もないほどだが、多少は体を動かした方がストレス解消にはなるだろう。

まあ、シリウスの場合は一体を相手にしても全く手応えはないのだろうが。

俺の方へと向かってくるのは、二振りの棒を持った人影。

あまり見覚えのない装備だが、あれは鉄鞭と呼ばれる類の武器だろう。取り回しのいい鈍器と考えておけば問題はあるまい。

(装備も何となく大陸風なんだよなぁ……)

直剣をはじめとして、偃月刀や戟など、日本ではそれほど見かけない装備を持った敵が多い。

むろん、槍だの弓矢だのを装備しているパターンもあるため全く共通点が無いわけではないのだが、全体的な印象はやはり大陸風であった。

おかげで、こちらとしても中々新鮮な感覚で戦える。

今目の前にしている鉄鞭も、実際にこれと戦うのは初めてだろう。

歩法――縮地。

とはいえ、二刀持ちの相手に先手を譲ると手数で負けてしまう。

ここはさっさと封殺させて貰うとしよう。

スライドするように移動した俺は、敵がこちらへと攻撃するよりも早く餓狼丸の刃を振り下ろす。

斬法――剛の型、竹別。

受け流しを許さない、鋭く刃筋を立てた一閃。

その衝撃に、僅かとは言え相手の膝が曲がり――

斬法――柔の型、零絶。

止まった刃を、上半身の動きだけで横向きに加速させる。

その一閃に反応することはできず、相手の首は仮面ごと刎ね飛ぶこととなった。

そのまま消滅していく体を油断せずに見送り、仲間たちもまた程なくして倒し切ったことを確認する。

「面白くはあるんだが……もう少し、歯応えがあってもいいかもな」

果たして、この先に進めばその変化もあるのかどうか。

実際に、自分の目で確かめてみることとしよう。