軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

860:強襲と迎撃

まずは、上空にて制空権を確保する必要がある。

だが正直なところ、俺たちがそちらに付いて行くのは逆にデメリットが大きいと考えていた。

今のセイランは、最早俺が乗っていない方が強い。あのスピードで飛行するセイランを、地上からの攻撃で捉えることは不可能だろう。

そして的のでかいシリウスは集中的に攻撃を喰らうことになるだろうから、当然その近くにいれば危険は大きくなる。

残念ながら、俺たちは付いて行かない方が無難という状況であった。

とはいえ――

「単純にワイバーンを相手にするだけなら、それほど心配は要らんと思うんだがな」

「まあ、あのプロテクターを付けた状態じゃ、セイランに追いつくのは不可能ですよね」

飛行する魔物としては、最上位クラスに位置するであろうワイルドハント。

しかも、ネームドモンスター化にまで到達した個体である。

凄まじい速度かつ、不規則な軌道で空を飛び回るセイランは、体の重いワイバーンたちには追い付けるような存在ではない。

ワイバーンはその身に魔法耐性のプロテクターを装備し、火炎弾やブレスでセイランのことを狙っている状況だが、生憎とまるで捉えられる様子は無かった。

「改めて見ていると、クオンさんのテイムモンスターは本当に鍛えられていますね」

「常に最前線だったからな。あれぐらいはできんと、流石にやっていけんさ」

アルトリウスの称賛を受け取りつつ、雷光の尾を引きながら飛び回るセイランの姿を追う。

ワイバーンたちは魔法に耐性を得ているが、生憎とセイランは物理攻撃にも秀でている。

その強靭な前肢による一撃は、物理攻撃には大した強度を持たないプロテクターを容易に破壊し、ワイバーンの身に深い傷を負わせていた。

そして当然、プロテクターが破損したならば魔法も通りやすくなる。追撃に放たれた雷は、傷を負った個体にとどめを刺すには十分すぎるものであった。

「しかし、ネームドモンスター化ですか……うちのメンバーにもそろそろ到達しそうな従魔がいますが、かなりの強化になるかもしれませんね」

「セイランが特殊な部類ってところもあるだろうがな」

あのスピードで飛行しながらデコイをばら撒いているセイランは、空戦においては基本的に負け無しだ。

しかし、あの強さはスピードとパワーに特化したが故のものであるし、成長方針次第でテイムモンスターの能力は大きく異なるものだろう。

『キャメロット』ならばラミティーズの騎獣が同じワイルドハントだろうが、セイランと同じように成長するかは分からないところだ。

バランスよく成長したルミナの方は、今も堅実に活躍している状況ではあるしな。

(正直、ルミナの方は相性が悪いんだよな……)

どのような状況にも柔軟に対処できるルミナではあるが、その攻撃力は魔法に依存している部分が大きい。

そのため、このワイバーンたちを相手には効率よく戦うとまでは行かない状況であった。

とはいえ、召喚した精霊たちを含めて武器で戦うことも可能であるし、その小回りの利く機動力はワイバーンを上回っている。

華麗に宙を舞うルミナは、ワイバーンの攻撃を的確に捌きながら己の攻撃を届かせていた。

それに、魔法が効きづらいと言っても全く効かないわけではない。

ルミナの魔法攻撃力ならば、プロテクターの守りを貫通してダメージを与えられているようだ。

「それで、アルトリウス。敵の航空戦力をどう見る?」

「地上からの迎撃は不利、基本的には航空戦での対処が必要でしょう」

ワイバーンの戦う姿を見て、アルトリウスはそう断言する。

ルミナほどの攻撃力が無ければ魔法でダメージを通せないとなると、撃ち落とすのにはそれなりに手間をかけなければならなくなる。

一方で、ワイバーンの方はただ足に持った爆弾を投げ落とすだけだ。

狙った場所に落とすなら降下してくる必要があるだろうが、適当な爆撃だけなら安全な高度から放り投げるだけでも済む。地上からこれを迎撃することは困難だろう。

「ただ、夜間の迎撃は困難ですね……敵が夜間に飛行できるのかどうかは確かめておいた方がいいかと」

「離陸はともかく、着陸は出来るのかね?」

「分かりませんが、最悪のパターンは想定しておくつもりです」

夜間の飛行は方向を見失うリスクが高い。

明かりの付いている街の方へ飛べたとしても、元の拠点へと戻ってくることは困難だ。

果たして、あのワイバーンたちにそれが出来るのかどうか――不明ではあるが、夜間の攻撃も想定しておくべきだろう。

ともあれ、奴らを迎撃するには、今のように航空戦力を用いた空中戦の方が有利である、ということだ。

「やはり、空中から攻めるのが正解だった、ってところか」

「あのワイバーンを相手にするなら、それが最適解でしょう。ただ……」

「そうだな、ある程度の機動力は必要そうだ」

アルトリウスが眉根を寄せながら見上げているのは、ワイバーンたちに群がられているシリウスだった。

シリウスは空を飛べるものの、機動力という面では優れていない。

体が重いため、とにかく小回りが利かないのだ。最高速度そのものは劣るものではないのだが、加減速は全くと言っていいほど向いていない。

攻撃力は申し分ないのだが、シリウスの機動力では接近してきた相手にしか攻撃を命中させることができなかった。

まあ、ブレスで広範囲を薙ぎ払うことはできるので、全く対処できないというわけではないのだが。

それに、シリウスの仕事はどちらかというと、敵の注意を引き付けることにある。

ワイバーンに加え、敵の砲撃の有効射程を調べる――それは、今後奴らと戦うに当たって重要な情報であった。

「……来ましたね、砲撃です」

「あの辺りが有効射程か。セイランも何度か入っていたが、流石に狙えんかったようだな」

敵陣に設置された高角砲が火を噴き、シリウスの体へと着弾する。

爆炎を上げているあの砲弾は、榴弾の類なのだろうか。

今シリウスがいる辺りは、先程セイランも度々入り込んでいたエリアではあるのだが、その時には砲撃は飛んできていなかった。

流石に、あのスピードで飛び回るセイランを狙うことはできなかったようだ。

「セイランはいいが、ルミナはシリウスより前には出ないようにせんとな」

「速射や連射には向かないようですね。それに……高玉さん、見えますか?」

「ああ、見えている。着弾前に爆発しているようだ」

「流石に近接信管ではないと思いますが……時限式ですかね?」

近接信管とは、簡単に言えばミサイルなどが標的に接近したタイミングで爆発する仕掛けだ。

空中の敵を狙うには適した仕掛けではあるのだが、流石に今の原始的な構造の弾頭で、近接信管を再現できるとは思えない。

恐らく、一定時間で爆発するような仕掛けなのだろう。

「ある程度以上の機動力があれば対処可能だが、そうでなければ爆発に巻き込まれる可能性があるか。とはいえ――」

「あくまでも物理攻撃、シリウスには問題無さそうですね」

次々と放たれる爆発が直撃しているが、シリウスは小揺るぎもしない。

あれが物理攻撃の類であるならば、シリウスの頑丈な鱗を貫けるものではないのだ。

ともあれ、敵の攻撃班はこれである程度は判明した。次は――

「皆さん、出発の準備を。前進を開始します」

「どうやって進むつもりだ?」

「恐らくは迫撃砲による砲撃が来ます。身を隠しながら進むべきですが……」

「時間がかかりすぎるし、合わせる必要はないってか?」

「ええ、無理に足並みを揃える必要はないでしょう。できることがあるなら、クオンさんたちにお任せします」

相変わらず、随分と信用して貰っているものだ。

だが、その期待には応えねばなるまい。こちらが先行して敵の動きを確認すれば、アルトリウスたちも動きやすくなるだろう。

ならば――こちらはこちらで、自由にさせて貰うとするか。

「了解した。それじゃあ、まずはシリウスたちの足元辺りまで前進することとしようか」

さて、敵はどのような反応を見せてくることか。

生半可な敵ではない、気を引き締めて臨むこととしよう。