軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

814:思わぬ再会

内部まで入り込んでしまえば、そのエリアを制圧することはそれほど難しくは無かった。

何しろ、配備されているのは殆どが低位から中位の悪魔程度だ。

統率者と思われる個体はアリスが暗殺してしまったため、それらによる直接指揮も警戒する必要はない。

つまり、懸念すべきはKたちでは制御しきれないであろうシリウスの暴走ぐらいだ。

まあ、言い含めてはおいたので、そこまで無茶なことをするとは思えないが。

「……こんなもんか」

兵器を動かそうとしていたアークデーモンを背後から斬りつけ、近場にいる悪魔を一掃したことを確認する。

基本的に、置かれていたのは近距離では働けないような兵器ばかりだ。

この場に於いては、注意する必要もないものばかりである。

しかし、これが街に向けて放たれていればかなり危険だっただろう。

結界があったとしても、絶え間なく降り注ぐ砲弾を防ぎ切れるとは思えない。

あまり様子見をせず、さっさとこの陣を潰せたことは僥倖だと言えるだろう。

「お父様、この悪魔たちの……いえ、エインセルの目的は何なんでしょう?」

「さて。正直、本気で攻めてきているようには見えんな。しかしそれと同時に、無視できるほどの戦力というわけでもない」

このような兵器を持ち出してきたとなると、少数の兵力だとしても油断はできない。

恐らく最低限の兵力だとは思うのだが、それでも危険度はかなり高い集団だと言えるだろう。

だが逆に言えば、最低限であるだけに、トップクラスのプレイヤーにとってはただのカモだ。

いくら多くのプレイヤーが散っている状態であるとしても、致命的な被害が出る前に潰すことは難しくは無い。

つまり、今回のエインセルからの攻撃は、単なる嫌がらせにしかなっていないのだ。

「ただ俺たちを牽制するためだけに、こんなものを持ち出してくるかねぇ」

「牽制で使い捨てにしても惜しいものではない、とか?」

「あり得るが、考えたくない可能性だな。これだけの兵器を持ち出しておきながら、平然と使い捨てにするとは」

これが本当にただの牽制で、嫌がらせ程度の目的であったとすると、奴の総戦力が恐ろしいことになる。

可能性としては考える必要があるが、正直あまり信じたくないパターンだ。

「意図して使い捨てたパターンの方がまだマシだな。いや、それはそれで怖いが」

「わざとこれらの兵器を鹵獲させたということですか?」

「トロイの木馬か? 持ち込んだ瞬間に大爆発、なんてのは勘弁してほしいところだな」

とはいえ、それも可能性としてはあり得るだろう。

街の内部まで持ち込んだところで、弾薬を全て爆破させれば、街の重要施設にも多少はダメージが通りそうだ。

しかしながら、俺たちにはそれらを検証する術もなければ証拠もない。

これについては搬入前に『エレノア商会』のメンバーに検分して貰った方がいいだろう。

「……考えていても仕方ないか。シリウスたちの方に行くぞ」

「はい、お父様」

アリスが統率個体を片付けたためか、殆どの敵は無力化されている。

既に斬るべき相手も殆ど残っておらず、戦闘終了は目前だろう。

移動しつつ敵を探しながら、嘆息と共に声を上げる。

「考えても、想像の域は出ない。もう少し情報を持っている奴に確認するべきだな」

「ではいつもの通り、『キャメロット』の方々に?」

「考えるのはあいつらに任せたいところだ。とはいえ、あいつらも動きづらいだろうが」

この状況に対応できるとしたら『キャメロット』だろうが、あいつらも戦力の強化に勤しんでいるところだ。

生憎と、あまり多くの戦力を防衛に回すことはできないだろう。

今回のクエスト探索は、プレイヤーが大公級と戦うために必要な力を付けることが目的なのだから。

或いは――エインセルは、それを察知して邪魔をしに来たのだろうか?

「……流石に、考え過ぎか」

脳裏を過った考えを捨て、シリウスたちの方へと向かって歩を進める。

全ての敵を殲滅したためか、多数の兵器に狙われていたシリウスも沈静化しているようだ。

流石にグレネードランチャーに狙われ続けては、無傷とはいかなかったらしい。

それでもKたちの援護があったおかげか、殆どダメージは残っていないようだ。

あまり大きな破壊の痕跡は無く、とりあえず安堵しながらKへと向けて声をかける。

「お疲れさん、問題は無かったか?」

「ええ、大丈夫ですよ。そちらもご無事で」

「まあ、この程度ならな」

蓋を開けてみれば、そこまで危険な戦いというわけではなかった。

まあ、山積みにされた兵器はあったため、対処を間違えれば危険だったかもしれないが、少なくとも『キャメロット』ならば苦戦する相手ではないだろう。

尤も、何故その程度の戦力を送り込んできたのか、という疑問は残り続けるのだが。

「それで、K。何か見つけたのかは知らんが、そっちの見解も教えてくれるか?」

「いえ、現状見えている範囲では、結論に至れるほどの情報はありませんよ。気になることは色々とありますがね」

そう呟き、Kは嘆息と共に周囲を見渡す。

悪魔の使っていたいくつもの兵器――未だ、プレイヤーには扱いきれていない代物だ。

これらを使い捨てにするということは、即ちプレイヤー側を強化することにも近い。

エインセルは、何故そのような真似をしたのか……今のところ、その答えは出そうにない。

「エインセルが我々の戦力を過小評価している――とは考えない方がいいでしょう。ここには何らかの意図がある」

「それについては同感だが、今のところこちらに打てる手はあるのか?」

「少なくとも、エインセルに接触することは避けるべきです。今の段階でエインセルと戦闘状態に入っても、こちらが不利ですから」

業腹ではあるが、Kの言う通りだ。

今の俺たちでは、エインセルを倒し切ることは不可能だと考えられる。

今しばし、クエストによる戦力の底上げに勤しまなくてはならないだろう。

「反撃には出ず、情報収集に徹する。その間に、これらの兵器については解析を進めておきましょう」

「……言われるまでもないとは思うが、ここに持ち込まれたものをあまり信用しすぎるなよ?」

「見せ札であることは分かっていますよ。これの対策をしたところで、無駄に終わることは多いでしょう」

肩を竦めてそう返してくるKに、こちらも首肯する。

こちらを油断させるための見せ札ならば、それを前提に作戦を構築する必要があるだろう。

その程度、アルトリウスからすれば言われるまでもないことだろうが。

「鹵獲品はそっちに任せていいか?」

「ええ。むしろ、クオン殿もそれでいいのですか?」

「こんなデカブツを手に入れたところで使い所が無いっての。罠には注意して扱ってくれ」

緋真たちが戻って来たことを確認して、シリウスに合図を送り踵を返す。

個人携行可能な兵器ならともかく、この大きさの兵器は手に入れても邪魔なだけだ。

尤も、俺は投擲はまだしも射撃の腕はからっきしであるため、拳銃の類を手に入れても使うつもりは無いのだが。

「緋真、そっちは何かあったか?」

「特に何も。炙ったらグレネードランチャーみたいなのが暴発して大変なことになりましたけど」

「そりゃまあ、火気厳禁だろうからな……」

魔法なんてものがある世界で、火への対策をしていないのもどうかとは思うのだが。

エインセルの戦力はまだまだ全貌が見えないし、その辺りの対策を怠っているのかどうかはまだまだ分からない。

今しばらくは、様子見を続けるべきだろう。

さて――

「……そういえば、次は何をするかね」

「あー。フィノの腕が上がるまでは装備の更新もお預けですしね」

「早い内にあの地下都市を見つけられたのは良かったんじゃない? エインセルと戦うまでには間に合うかもしれないし」

「それはその通りだが、今はクエスト関連だな。エルダードラゴンのところに行ってもいいんだが……」

稼ぎという意味では十分なのだが、不意に足爪のような化け物に遭遇する危険性もある。

今のところ、あれに対する勝ち筋は全力を出す以外に見つけられていないし、消耗を考えるとできるだけ出会いたくはない。

しかし、奴が出現する条件は不明――というかそもそも無いかもしれないため、あまり戦いたくはない場所であった。

それでも当てが無いこともまた事実であるし、ここはそろそろ他のプレイヤーが公開したクエスト情報を当たるべきか。

そう考えながら、街へと帰還して門をくぐり――こちらへと向けられる強い視線に、意識を向けた。

「――久しぶりね、魔剣使い」

壁を背に立つ、赤い髪の女。

その姿に、俺は思わず眼を見開いていた。