軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

805:炎石の情報

木工師のところにも顔を出してみたが、その代表である八雲にも、今の段階では装備の製作を断られてしまった。

どうやら、このデュオーヌにはかなり多くのクエストが眠っているらしく、『エレノア商会』はその開拓に集中している状況のようだ。

彼らがこの街のクエストに勤しめば、それだけこのデュオーヌも発展する。

どちらにとっても利のある展開だろうが、あの代表はいい顔をしていないことだろう。

ともあれ――今は、商会の主要なメンバーへのオーダーメイド依頼はできないと考えておいた方がいい。

「ちょいと目論見は外れたが、今後への期待はできそうだな」

「『エレノア商会』全体が強化されれば、プレイヤー陣営がまとめて強化されるようなものですしね」

自重を捨てた結果、殆どの販路を確保しているエレノアは、プレイヤーが持つアイテムの大半を手掛けていると言っても過言ではない。

逆に言えば、エレノアたちの腕が上がれば、それだけプレイヤーの力も底上げされることになるのだ。

尤も、その辺りが行き渡るまでにはまだしばらく時間がかかるだろうが――そこは長い目で見ておくしかないだろう。

何にせよ、商会メンバーの実力の底上げは喜ばしいことだ。このまま、クエストでの成長に勤しんで貰いたいところである。

「それで、どこでご注文の品を手に入れるのかしら?」

「プロフェッサーに質問を送ったら、資料付きで返信が来たんだよな……いつの間にこんなものを作ったのか」

篝神楽の鞘を作るための、炎属性の宝石か鉱石。

流石にそれだけで情報を得られるのかは微妙だと思ったのだが、プロフェッサーは割とあっさり、いくつもの候補を送ってきてくれた。

とはいえ、大半は既知の素材だ。これらは今まで攻略してきたエリアからも手に入るし、『エレノア商会』でも在庫が残っているような品だろう。

狙うべきは、現地人の情報で存在だけが確認されていて、その取得には至っていないようなアイテムだ。

「狙うとしたら……この『炎王結晶』か『炎の精霊石』か」

「どっちも火山地帯だけど、要は赤龍王の領域よね。まだだれも手に入れていないの?」

「前に赤龍王のところに行ったときは、そもそも素材の回収どころじゃなかったからな」

あの時は競争で赤龍王の許へと辿り着こうとしていたし、アイテムを回収している余裕もなかった。

他のプレイヤーに関してもそうだろうし、イベント後はあのエリアに行く理由もなかったからな。

何しろ、移動するだけで命の危機だ。足を踏み外せば一巻の終わりである。

「『炎王結晶』は溶岩溜まりに生まれる鉱石、『炎の精霊石』はその名の通り、火属性の精霊によって生み出される宝石。赤龍の火山を探索すれば見つかる可能性はある――というか、他に入れる火山が見当たらんからな」

「私的には相性が良くなくて戦いづらいんですけどね……」

火属性の緋真にとっては、魔法攻撃が通じ辛く不利な場所であると言える。

とはいえ、今は篝神楽があるため、相手の炎の攻撃も緋真には通じ辛いのだが。

「個人的な懸念は別にあるが、他に手に入りそうな場所も見当たらん。とりあえず、行ってみるとしよう」

場所はアドミス聖王国の南東部にある火山地帯。

ひときわ大きい火山の火口こそが、赤龍王の住まう場所だ。

まあ、そこまで行く必要があるかどうかは分からないが――まずは、その周囲を探索してみることとしよう。

* * * * *

久方ぶりに訪れた火山地帯。相変わらずの荒涼とした景色ではあるが、悪魔の出現を気にしなくてもいい場所というのは久しぶりだ。

出現する魔物は以前に訪れた時から変化していないため、今の俺たちにとっては苦戦するような相手ではない。

レベル差も理解できずに襲ってくる魔物たちは軽く蹴散らしつつ、山頂を目指して登って行く。

「空を飛んでも良かったんじゃないの?」

「そうなると、赤龍たちに接触することになるからな。別に敵対しているわけじゃないが、赤龍王と同じく血の気は多いようだから、喧嘩を売られても面倒だ」

あの、半ばガラの悪いチンピラのような性格をした赤龍王だ。

その配下である真龍たちも、ある程度は似たり寄ったりな性格をしているのである。

別段話が通じないというわけではないのだが、接触すると面倒なことになりかねない。

まあ、その配下の真龍たちについては、今やシリウスはそれと同格の領域に達している。

戦って負けるということは無いだろう。

「それより、目標はあくまでもアイテムの回収だからな。採取できるポイントがあったら見逃すなよ?」

「了解ですけど、この辺りじゃ手に入らないんじゃないですか?」

「まあ、それはそうなんだがな」

『炎王結晶』については溶岩溜まりという情報があるだけに、ここで手に入ることはまずないだろう。

また『炎の精霊石』についても精霊と接触する必要がある。

ルミナには精霊の気配を探らせてはいるが、まだその成果は上がっていなかった。

溶岩ということで、事前にあれこれと準備はしてきたのだが、果たしてどこまで上手くいくことやら。

「結局山頂を――火口を目指すなら、真龍たちとは接触しちゃうんじゃ?」

「遅かれ早かれの違いと言われればそれまでだがな……しかし、無駄に刺激する必要もないだろうさ」

ともあれ、やはり目標は火口の中にしかなさそうなので、さっさと足を進めることにする。

以前はそれなりに魔物とも戦っていたが、今はこちらのレベルが上がっていることもあり、知能の高い魔物はさっさと逃げていく状況だ。

残る魔物は適当に蹴散らせてしまえる程度のものであるし、戦いに関しては少々退屈であることは否めない。

とはいえ、暇だからと真龍と戦うつもりは毛頭ないのだが。

(最悪、赤龍王と接触するという案もあるにはあるが――)

特に血の気の多い赤龍王、しかも前回の戦いのリベンジに燃えているであろう彼と出会えば、戦いになる可能性は極めて高い。

こちとら、鎖された蟲の足爪と戦って完全解放を使ったばかりなのだ。

解放のための経験値はギリギリ足りそうではあるが、そう何度も使いたいものではない。

「……そろそろ火口に向かう洞窟か。この辺から手に入らんもんかね」

「流石に望み薄じゃないかしら?」

呆れたようなアリスの声には肩を竦めて返しつつ、セイランとシリウスを従魔結晶に戻す。

流石に、狭い場所でこの二体を出して移動することは難しい。

薄暗い洞窟の中は真龍たちが通る場所でもないため光源が用意されている筈もなく、ルミナの魔法で視界を確保しながら先へと進む。

以前は危険極まりないアスレチックに挑むことになったわけだが、今回はあの下まで降りずにアイテムを確保したいところだ。

というか、下まで行ったら赤龍王と顔を合わせることになるからな。

「中に入るとちょくちょく採取ポイントはあるみたいだけど……ここで手に入るかしら?」

「分からんが、可能性があるなら試してみてもいいんじゃないか?」

久しぶりにツルハシを取り出しつつ、洞窟内に合った採取ポイントで採掘を試みる。

もしかしたらごく低確率で手に入るのではないか、という淡い期待を抱いていたが――流石に、そうそう都合よくはいかないようだ。

見かけた採掘ポイントからは回収しつつ、案の定成果は上がらないまま先へと進み、やがて赤熱する火口へと辿り着く。

耐熱のポーションを使っておかなければダメージを受け続けてしまう、危険なエリア。

「また、あのアスレチックを飛び降りるのは勘弁してほしいところなんだが――」

そう呟こうとして、絶句する。

深く続く火口、その中央に、一体の巨大なドラゴンの姿があったがために。

あれほど膨大な魔力を持ちながら、何故今の今までその気配を感じ取ることができなかったのか。

そんな困惑を抱く俺に、現れたドラゴン――赤龍王は、上機嫌な様子で哄笑を上げる。

「クハハハハッ! 久しぶりだな、人間! よくここに来た!」

「赤龍王……気づいてたのか?」

「他ならぬお前らの気配を、この俺様が見逃すわけが無いだろう!」

その言葉と共に、赤龍王は頭上へと腕を掲げる。

それと共に広がった紅の魔法陣は、強大な魔力を持ちながらも攻撃的な気配は感じないものだった。

故にこそ対応の反応は遅れ――次の瞬間には、俺たちは溶岩のドームの内側、かつて赤龍王と戦ったフィールドへと転移させられていたのだった。