軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

708:不毀刃龍

「ブレイカーが二匹のパターンなんてのもあるんだな」

雑談をしている時間も惜しいと、ひたすら移動と狩りを続けること数時間。

俺たちは、これまでで最大の規模のワニの群れと激突していた。

通常サイズであるアサルトが十二匹、そして大型であるブレイカーが二匹。

どちらかというと二つの群れが一つに固まったようにも見えるが、とにかくこれまでと比べると油断のできない相手であった。

(まあ、戦法は変わってないんだがな)

相変わらず、とにかく噛みついて水の中に引きずり込もうとするワニたち。

単体であれば別に恐れるような相手ではないのだが、複数で来られると少し注意が必要だ。

数が多い分、回避する方向を間違えて緋真たちの方に向かわせてしまったり、或いはこちらの退路をなくしてしまったりするのは問題だ。

冷静に、周囲の状況を見極めながら回避、迎撃する。それをひたすらに繰り返すのである。

流石にブレイカーまでこちらに向かってきていたら厄介だったが、あれは二匹ともシリウスが対処してくれている状態である。

たとえ大型のワニが二匹でも、シリウスを引きずり込むことなどできるはずもない。あちらは任せておいて問題ないだろう。

「さて――」

見当違いの方向へと顎を閉じたワニの胴へと回り込み、刃を振るう。

何を考えているのか分からない――というか何も考えてなさそうなワニの面を見るのもそろそろ飽きてきたところだ。

相変わらず正面からの攻撃を殆ど受け付けないのは厄介だが、少し回り込めばすぐに刃を通すことができる。

俺の一刀を受けたワニは、血を流しながらも方向転換しようとし――踏ん張りがきかず、斜めに滑ってゆく。

そして俺は、そのワニを追うようにしながら半歩右へと移動しつつ前に出た。

(――まだ、この程度か)

瞬間、俺の体を掠める様に、もう一匹のワニの顎が通り過ぎる。

その刹那に抜き放った小太刀を眼球へと突き刺しつつ、俺は強く前へと地を蹴った。

歩法――烈震。

横滑りし、バランスを崩していたワニ、その横っ腹へと刃を叩き込む。

先ほど付けた傷を正確になぞるように振るった一閃は、ワニの胴を半ばまで断ち斬り、そのHPを削り切った。

次いで、反転。眼球に小太刀を突き刺され、のたうち回っているもう一匹のワニへと肉薄する。

(流石にワニの心臓がどこだかは分からんが――)

ワニの体の構造がどうなっているのかは分からないが、骨を持つ大抵の生物には共通した性質がある。

つまり、眼孔の奥には脳が存在しているということだ。

斬法――柔の型、射抜。

先ほど突き刺した小太刀、その柄尻を打ち据えて、刃を体の内側へと叩き込む。

眼球を、眼窩を貫き、その奥にある脳へ。動物の脳は思ったよりも小さかったりはするのだが、それでも目の奥にまで刃を突き込まれては無事では済まなかったようだ。

即死に値するダメージを受け、アサルトはその場に崩れ落ちる。

二匹が来るまでに倒していた個体を含め、これで三匹。残るは仲間たちによって対処されており、それほど時間はかからず終了することだろう。

「ほう、セイランもいい具合だな」

《剛嵐》という新たなスキルを手に入れたセイランは、早速それを使っての戦いを習熟しようとしている。

まだ細かな調整までは効かないようだが、とりあえず移動する時は纏うような嵐を、そして立ち止まている時は張り巡らせるような嵐を扱うようにしている。

速度上昇か、防御態勢か。本来であればもう少し細かく使い分けるべきなのだろうが、習得したばかりの今はその程度でいいだろう。

軽快に駆け回るセイランは、一度としてワニたちに追いつかれることなく、奴らを圧倒したようだ。

そして――

『レベルが上がりました。ステータスポイントを――――』

『――――テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《シリウス》がレベル上限に達しました。《ブレイドドラゴン》の種族進化が可能です』

「っよし!」

ついに届いたその知らせに、小さく快哉の声を上げる。

第五段階の真龍――誰も届いたことがないであろう、最上位クラスの真龍が生まれるのだ。

まあ、未だに真龍をテイムしているプレイヤーは俺とアルトリウス以外には見かけていないのだが。

「来ましたか、ついに進化ですね!」

「流石に、ドラゴンの進化となると毎度楽しみよね」

レベルの上昇を確認して、緋真やアリスもこちらへと駆け寄ってくる。

大きな目標の一つであり、そのためにこのエリアまでやってきたと言っても過言ではない。

早速メニューを呼び出し、テイムモンスターの情報から進化先のデータを確認した。

■ブレイドドラゴン・デュランダル

種別:真龍

属性:無

戦闘位置:地上・空中

女神の眷属たるドラゴンの一族、その歴戦個体。

《強化魔法》に秀でた魔力を有し、全身を鋭い刃に覆われている。

その肉体を覆う鱗や外殻は決して壊れることなく、肉体そのものの強度も高い。

最上位の真龍たる龍王直属の配下にして、次代の龍王を担う者。

「デュランダル……流石にその名前は俺でも知ってるな」

「フランスとかギリシャの叙事詩の魔剣だか聖剣ですね」

決して壊れることのない、不毀の聖剣。

種族の説明の中にすら『壊れることなく』などと書かれているということは、それを模した存在なのだろう。

しかし、壊れることのない鱗や外殻とは、また凄まじい能力だ。

恐らく、これまで以上に高い耐久度を誇ることとなるのだろう。

そしてそれに加え、もう一つ気になる点もあった。

「次代の龍王ってことは、このまま成長すれば龍王になれるってことか?」

「剣龍の龍王ってそもそもいたんですかね?」

「分からんが、他の龍王と同じ格まで育てば龍王になれるのかもしれんな」

現在のソードドラゴン系の龍王は、その存在を確認されていない。

もしも空位であるならば、進化した先で龍王になることも可能なのかもしれないな。

まあ、それはあまりにも遠い話であろうが。

「ともあれ、選択肢は一つだ。構わないな、シリウス?」

「グルルッ!」

どうやら、シリウスの方も異存はないらしい。

その反応に満足しつつ、俺たちはシリウスから距離を取り、待望の進化を開始させた。

瞬間、シリウスの巨体は、銀色の光に包まれる。

「さて、どう変わる?」

「龍王に準ずるんですから、また大きくなりそうですね」

以前に出会ったほかの龍王は、今のシリウスよりも二回り以上は大きかった。

それに準ずる個体になるということは、現在のシリウスよりは大きさも増すことになるだろう。

事実、光に包まれたシリウスは、ゆっくりとそのシルエットを巨大化させている。

そして、光はその身に張り付くように巨大なドラゴンの形だけを残し――やがて、役目を終えたとばかりに弾け飛んだ。

「グルァアアアアア――――ッ!」

大地を震わせるほどの、力強い咆哮。

光の中から現れたシリウスは、その存在感だけで周囲を圧倒するほどの威容を見せ付けていた。

「黒く……いや、艶消しの銀か」

以前のような、鏡のように光を反射する鱗ではない。

光の加減によって黒く見えているのは、艶消しによって反射が減ったからだろう。

それはまさに、使いこまれた刃のような色合いであった。

基本的に体の造形は変わっておらず、体の各所から飛び出た鋭い刃は巨大化と共に大きくなっている。

槍のような角も、大剣の如き尻尾も、全身が強大な武器であることに変化はない。

だが、その身が決して壊れることのない鱗に覆われているという点は、驚異的な強化であると言えるだろう。

■モンスター名:シリウス

■性別:オス

■種族:ブレイドドラゴン・デュランダル

■レベル:1

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:128

VIT:125

INT:65

MND:75

AGI:70

DEX:65

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《昇華魔法》

スキル:《断爪撃》UP

《絶鋭牙》UP

《吶喊》

《ブラストブレス》

《物理抵抗:極大》

《不毀》UP

《鋭斬鱗》

《鋭刃翼》

《斬尾撃》

《魔法抵抗:極大》UP

《覇気》

《移動要塞》

《研磨》

《変化》

《龍王気》UP

《バインドハウル》

《自己再生》

《鱗魔弾》

《 不毀の絶剣(デュランダル) 》UP

《ディフェンシング》

称号スキル:《真龍》

新たなスキルが無いことは、少々意外ではあった。

しかし、驚異的なレベルでステータスが向上している上に、使用頻度の高いスキルが成長している。

更には、己の種族名を表した、この《 不毀の絶剣(デュランダル) 》というスキル。

大きな成長を遂げていることは、まず間違いないだろう。

その成果を確認するためにも、詳細をチェックしつつ次なる獲物を探すこととしようか。